
#85【ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー】ep.1「元ネタをどのように織り交ぜるか」
※この記事はPodcast番組「映画にみみったけ」内のエピソード#85にあたる内容を再編集したものです。
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【ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービーについて】
2023年公開
監督:アーロン・ホーバス、マイケル・イェレニック
音楽:ブライアン・タイラー、近藤浩治
サウンドトラック
作曲家紹介
ブライアン・タイラーさんは、アメリカの優れた作曲家および映画音楽家です。
彼は1972年5月8日にロサンゼルスで生まれ、カリフォルニア大学では学士号、ハーバード大学では修士号を取得しています。
多様な映画ジャンルで活躍していて、彼の作品には『アベンジャーズ: エイジ・オブ・ウルトロン』、『ファースト・アベンジャー』、『ファスト&フュリアス』シリーズ、『アイアンマン3』、『エクスペンダブルズ』などヒーロー作品を手がけたものが多くあります。
音楽は力強く感動的であり、彼の独自のスタイルが数多くの映画作品に深い印象を与えています。
映画音楽にクラシックはもとい、ロック、電子音楽、EDM、ジャズなどにも明るく、多彩な音楽の可能性を提示し、今でも世界的に人気の音楽家です。
作曲家作品
タイムライン
コンスタンティン(クラウス・バデルトと共同)
BUG/バグ
ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT、 MAX、 MEGA MAX、 SKY MISSION、 ICE BREAK、 ジェットブレイク、 ファイヤーブースト
ローグアサシン
AVP2 エイリアンズVS.プレデター
ランボー/最後の戦場、 ラスト・ブラッド
DRAGONBALL EVOLUTION
エクスペンダブルズ1、 2、 3
ファイナル・デッドブリッジ
グランド・イリュージョン、 見破られたトリック
マイティ・ソー/ダーク・ワールド
ミュータント・タートルズ
アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン(ダニー・エルフマンと共同)
パワーレンジャー
ザ・マミー/呪われた砂漠の王女
エスケープ・ルーム1、 2
チャーリーズ・エンジェル(2019)
スクリーム(5作目)、 6
チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ
ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー
登場人物
マリオ:
配管工の青年。ルイージの兄。
ルイージ:
配管工の青年。マリオの弟。
ピーチ姫:
キノコ王国の姫。
キノピオ:
キノコ王国の住人。
クランキーコング:
ジャングル王国の王。
ドンキーコング:
クランキーの息子。
クッパ:
ダークランドの支配者。ピーチ姫を狙う。
あらすじ
ブルックリンに住む配管工の兄弟マリオとルイージは、なかなか仕事に恵まれませんでした。
元上司からは嫌味を言われ、父親からも理解されません。
そんなある日のこと、ブルックリンの地下の配管が壊れて街中水浸しになってしまいます。
これを見たマリオたちは自分たちの名を売り込むチャンスだと考え、すぐに修理に向かいます。
そのまま地下の下水道に入り込んだ二人ですが、誤って足場から落ちてしまいました。
そして落ちた先には謎の土管があり、二人はそこに吸い込まれてしまいます。
どこかへ飛ばされていくマリオですが、困ったことにワープの途中ルイージとはぐれてしまいました。
マリオが目を覚ましたのは、巨大なキノコが群生する見たこともない場所でした。
彼の前に現れたキノピオによると、ここはキノコ王国という場所で、邪悪なクッパ軍団によって侵略を受けているのだそうです。
そしてルイージのワープ先がクッパの支配するダークランドであることを知ったマリオは、キノコ王国のピーチ姫に助力をあおぎにいきます。
お城では、ピーチ姫がクッパとの戦いに備えている最中でした。
協力を申し出るマリオに対し、ピーチ姫は訓練コースを用意して彼を鍛えます。
スーパーキノコの力を借りて何度もめげずにチャレンジするマリオ。
そんな彼を認めたピーチ姫は、クランキーコングとの同盟を結ぶためマリオとともにジャングル王国へと向かいます。
一方その頃ルイージをとらえたクッパは、ピーチ姫がマリオと行動をともにしていることを知ります。
そしてピーチ姫との結婚をもくろむクッパは、嫉妬からマリオに狙いを定めるのでした。
【はじめに】
1993年にスーパーマリオブラザーズの実写映画があったんですよね。
スーパーマリオ 魔界帝国の女神というタイトルですが、どれくらいの知名度があるんでしょう。
僕は結構好きな映画だったのですが、興行成績はいまいち伸び悩んだようですね。
音楽はこのポッドキャストでも取り上げたBTTFやレディプレイヤーワン、アベンジャーズ作品を手がけたアラン・シルベストリさんですね。
ピーチ姫が登場せずにデイジーというダイノハッタンという恐竜帝国の王女がヒロインとして登場して、ルイージと惹かれあっていく話だったと思います。
今思えばなぜ?といったチョイスですが、当時の実写映画化はその違和感こそが魅力の一つですよね。
そもそもクッパはダイノハッタンの大統領という立ち位置ですし、デイジーの父である王はきのこにされちゃうし、そして映画全体にそこはかとなくサイバーパンク感漂う感じも最高でした。
と、今回はある意味オフィシャルなザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービーですね。
先ほどの音楽家紹介の時に近藤浩治さんの名前が上がりましたが、マリオシリーズの音楽を手がけた音楽家です。
ゲーム音楽のレジェンドの一人ですよね。
正直誰もが知ってるといってもいいほど認知度の高いマリオの楽曲は、スーパーマリオ64というタイトルまでは、ほぼ一人で書かれていたそうです。
そして今回の作品はスーパーマリオの映画ということで、クレジットされています。
【マリオシリーズの楽曲がどのように使われていたか】
ということで、今回は原作ファンも嬉しい「マリオシリーズの楽曲がどのように使われていたか」を観ていこうと思います。
もちろん全てがオリジナル(テレビゲーム)を使った楽曲だと、面白みもなく映画音楽としては破綻してしまいます。
しかし全く使わないと面白みにかけてしまいます。
このバランスが今作では絶妙ですばらしい(マンマミーア)ですね。
というのもオリジナルの楽曲を、楽曲全体に風呂敷を広げるのではなく、フレーズを端的に使うことでシーンを盛り上げています。
全体の楽曲は非常にアカデミックな作曲で、映画音楽としてやるべきことをこなし、シーンに必要な効果音のようにオリジナルの楽曲を散りばめています。
スーパーマリオブラザーズ 地下ステージ
例えば
15:14
下水道で地下の大迷路を見つけるシーンです。
ここでは、ホラー音楽と神秘的な音楽が用意されています。
その中で、スーパーマリオブラザーズの地下ステージの音楽が起用されています。
このような楽曲ですね。
(演奏)
この楽曲は地下ステージの音がなくても、ホラー音楽もしくは神秘的で超自然的な音楽として解決しています。
しかし、そこにマリオシリーズを知っている視聴者なら一度は聞いたことのあるフレーズを入れることで、痛烈にマリオシリーズを意識させます。
それが地下で使われているのでオリジナルを知っていると楽しい作りになっていますね。
このような仕掛けがこの作品にはわんさかあります。
これはブライアンタイラーさん自らゲームを遊んだとしか思えないですね。
スーパーマリオブラザーズ 地上ステージ
次のシーンはアレンジを大きく変更して使っています。
17:23
土管を通ってワープした先がキノコだらけの不思議な世界だったシーンです。
この時はスーパーマリオブラザーズの通常ステージ(地上)の音楽が非常に神秘的なアレンジで使われています。
この楽曲ですね。
(演奏)
この楽曲をストリングスで大きく、コーラスも交えて神秘的に表現しています。
これはブルックリンに住むマリオには異世界も異世界ですよね。
ゲームをやったことある人には、すでにマリオは異世界にいましたが、この作品ではマリオは普通に配管工としての仕事をブルックリンでやっていることが丁寧に描かれていたので、神秘的な表現で書いているわけですね。
スーパーマリオ64 イン・サイド・キャスル・ウォール
次もゲームをやったことがある人からすると嬉しい楽曲が登場します。
19:07
ピーチ城を遠巻きから眺めるシーンです。
この時に使われているのは、スーパーマリオ64のイン・サイド・キャスル・ウォールという楽曲が断片的に登場します。
この理由は、ピーチ城というのはアクションゲームでのマリオシリーズにおいて、その全貌が明らかになったのはスーパーマリオ64というタイトルからです。
ということで、ピーチ城といったらスーパーマリオ64ということになるので、ここではスーパーマリオ64のイン・サイド・キャスル・ウォールという楽曲が使われることになります。
ちなみに楽曲のこの部分が使われていました。
(演奏)
テレビゲームでもこの楽曲が演奏されるのは、ピーチ城内やその周りで演奏されています。
どこか格式が高く、軽やかな楽曲なのが非常にイメージ通りですよね。
スーパーマリオブラザーズ3 クッパ城
次は、恐ろしいシーンでクッパのお膝元であるからこそ演奏される楽曲を聴くことができます。
19:20
ルイージが一人クッパの住むダークランドという場所で逃げ回るシーンです。
薄暗く、木々が枯れて、溶岩の川があるダークランドはとても恐ろしい場所ですね。
ですので、ここではホラー音楽が演奏されています。
さらに、ルイージはそこで骨のノコノコ(カロン)に追い回されます。
ここではアクション音楽に切り替わり、非常に緊張感が増します。
そこでこの音が使われます。
(演奏)
これはスーパーマリオブラザーズ3のクッパ城の楽曲です。
オリジナルも非常に恐ろしい楽曲ですよね。
これがルイージが木に引っかかって吹き飛ばされた先にカロンがいて倒す、というアクションに合わせて演奏されます。
これは少しミッキーマウジングという手法に近いですね。
ミッキーマウジングは1930年代に作曲家のマックス・シュタイナーさんによって開拓され、初期のウォルト・ディズニー映画と関連していることから、ミッキー・マウジングと呼ばれるようになった手法のことで、映像のアクションエネルギーに合わせて演奏が施されることを指します。
今回は木にルイージが引っ掛かることで、木の弾力で跳ね返るアクションに先ほどの演奏が合わせられたということですね。
これはミッキーマウジングとは実際は違うのですが、近い演出として使われていました。
そんなミッキーマウジングの話を、シーズン1#10映画アトランティスの回で話しているので、ご興味のある方は聞いてみてください。
スーパーマリオブラザーズ ステージクリア
次はゲームの音を効果的に楽曲に用いたシーンです。
28:48
ピーチ姫が訓練場のお手本をみせるシーンです。
このシーンでは特訓場のラストにスーパーマリオブラザーズではお馴染みのクリアした時の旗が登場します。
この時に、ゲームではクリアを意味する楽曲が演奏されます。
このような音ですね。
(演奏)
この音はSE(効果音)とBGMの中間くらいの立ち位置ですが、この時は楽曲に組み込まれています。
SE(効果音)は劇中にもたくさん登場します。
ブロックを叩くときや、キノコを食べてパワーアップするとき、ダメージを受けてパワーダウンする時など、ゲームと同じ使われ方がされているのは嬉しい仕掛けですよね。
複数の楽曲が使われるシーン
そして次はやり放題な感じでオリジナルの楽曲の断片がたくさん登場します。
21:43
城下町からピーチ城に向かう道中のシーンです。
ここではスーパーマリオブラザーズ3のボーナスステージ、スーパーマリオブラザーズの地上のテーマ、スーパーマリオ64、スーパーマリオワールドがコメディ調でアレンジされています。
ここはとても楽しいですね。
ゲームのような画角で土管を通るシーンやコインやプクプクという魚が登場したりと、とても楽しいシーンです。
この他にもアクションゲームのマリオシリーズの楽曲がたくさん使われています。
全部紹介すると、とてつもない数になるので、ぜひ観た時に探してみると面白いと思います。
多分ですけどエンドクレジットも合わせて、21回以上演奏されていると思います。
スーパードンキーコング
さらに、アクションマリオシリーズ以外の音楽も登場していたので、一部紹介しようと思います。
43:06
マリオ一行がジャングル王国に到着したシーンです。
ここではテレビゲームスーパードンキーコングの楽曲が使われています。
このフレーズがアレンジされて演奏されています。
(演奏)
ひっそりわかるかわからないかくらいでアレンジされています。
ジャングル王国と言っているので、ドンキーコングが出てくるんだろうなとなんとなくわかりますよね。
今作ではクッパ軍団を相手に、共に戦う仲間として登場します。
もともとは任天堂のアーケードゲームで、敵として登場していますが、イギリスのレア社から発売されたスーパードンキーコングの楽曲がここでは使われています。
ということはデビットワイズさんが音楽を担当されていたはずです。
このスーパードンキーコングの楽曲はとても人気が高く、OSTにはプレミア価格がつくほどです。
このゲームの音楽が使われているのは嬉しいですね。
マリオカートシリーズ レインボーロード
そしてもう一つは、
56:40
みんなでカートに乗って、クッパの先回りをしようとするシーンです。
ここでは虹の上を走るシーンが登場します。
この虹の上を走るのはテレビゲームマリオカートシリーズではお馴染みのコースとして登場します。
マリオカートシリーズの中で楽曲が違うのですが、よく使われるフレーズが登場します。
このようなフレーズですね。
(演奏)
一部ですが、これも嬉しい演出です。
やはりゲームを少しでもやったことがあるとわかるネタが豊富に使われています。
音楽でもこのように様々なネタが登場していたので、また観る際は注目してみると面白いと思います。
【エンディング】
今回はゲームから登場した楽曲が映画内でどのように使われていたかをみてきました。
ゲームにまつわるものが登場した時に、しっかりその音が使われていたのは嬉しい演出ですよね。
スーパーマリオ64の使われ方は特に感動しました。
まだまだ紹介しきれていない楽曲がたくさんあるので、ぜひ見つけてみてください。
個人的にはエンディングでスーパーマリオワールドのエンディングが演奏されると嬉しかったですが、違いましたね。
まあこれは個人的に好きな楽曲なだけなのですが。
次回はスーパーマリオブラザーズ ザムービーの続きとサブスクリプションで「ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT」から1曲やろうと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
映画にみみったけ、放送時のパーソナリティはヨシダがお送りいたしました。
podcastのエピソードは毎週日曜日に配信中ですので、そちらでもまたお会いいたしましょう。
ではまた!