【お笑い好きなあなたへ】芸人版「桐島、部活やめるってよ」 ニューヨークのYouTube発映画「エレパレ」を考える
最近はお笑いライブの配信を楽しみつつ、そろそろ本格的に生のライブで思いっきり笑える環境が恋しくなってきました。
ここでは、お笑いというより、むしろお笑いに真摯に向き合っている芸人さんが好きな編集部員の佐藤レモナが、彼らの携わった映画を通して、芸人で見せる顔とは違う新たな一面をご紹介します。
今回取り上げるのは、“映画”と“お笑い”が好きな私にとっては最高だったとある作品。「M-1グランプリ2020」のファイナリストであり、テレビ番組でどんどん活躍の場を広げているお笑いコンビ・ニューヨークさんのYouTubeで無料公開されている(再生回数125万回※4月2日時点)映画「ザ・エレクトリカルパレーズ」こと「エレパレ」です。
ただのYouTube動画と呼ぶ人もいると思いますが、あえてはっきり言いたいです。これはれっきとした映画です。昨年11月に公開後、お笑い芸人さん、お笑いファンを中心に話題になり、note内でも「エレパレ」について解説している方がたくさん現れました。私も昨年鑑賞したところ、1時間を過ぎたあたりからぐっと引き込まれ、映画「桐島、部活辞めるってよ」を見終わった後の感情を思い出しました。
まずは以下で簡単に説明します。
■「ザ・エレクトリカルパレーズ」(128分)
https://www.youtube.com/watch?v=rS_-ILiycds
養成所・NSC東京校17期生内で結成された集団「ザ・エレクトリカルパレーズ」(通称:エレパレ)について、当時のメンバーやクラスメイトたちの証言・思い出をまとめた“ドキュメンタリー”。自主的にTシャツやテーマソング(意外といい曲で頭から離れない)を作り、NSCという狭い世界で幅を利かせていたカースト上位集団の「エレパレ」。ニューヨークさんが聞き役となり、「エレパレ」の同期、メンバーたちに当時の思いを語ってもらい、「エレパレ」の真実に迫っていきます。監督は構成作家の奥田泰さん。
■なぜ話題に? ハマったことを公言する人が続出
YouTubeチャンネルで公開後、TBS系「水曜日のダウンタウン」を手がけるテレビディレクターの藤井健太郎さんがTwitterで触れ、テレビ東京系「ゴッドタン」などを手掛ける佐久間宣行さんもパーソナリティーを務めるラジオで「ニューヨークの悪意と共感のバランスがすごいいい」と話していました。
そのほかにも、レイザーラモンさん(RGさんはラジオで涙ながらに魅力を語っていました)、マヂカルラブリーの野田クリスタルさんは、監督の奥田さん、出演している芸人さんに会えたときに本気で喜び、大阪では劇場番長・見取り図の盛山晋太郎さんが広報となり、東京以外にも「エレパレ」ブームが広がっていきました(※以下のYouTubeでの発言より)。
YouTubeでは芸人さんたちによる「エレパレ」関連動画も続き、映画でいうスピンオフ、前日譚のような楽しみ方もブームを盛り上げてきました。
■実際に見てみたら、ぞっとする瞬間があった
私が「エレパレ」を初めて見たのは、YouTubeで公開後すぐでした。昔行った無限大ホールでのライブで、「エレパレ」の存在をふんわり聞いたことがありました。空気階段の鈴木もぐらさん、オズワルドさんらによる「授業でこんなことがあった」「こういうことが嫌いだった」「●ッ●●サークル」などの証言で、「エレパレ」についてイメージが浮かびやすくなってきた1時間を過ぎた頃、“裏リーダー”の話題になると、証言者たちの表情と空気が変わります。
「芸人さんはやっぱり話がうまくて面白いな」と完全に緩んでいた私は、この瞬間少しぞっとしました。もぐらさんの神妙な話し方と水の飲み方、ガーリィレコードチャンネルさんの反応、そして編集のうまさ。本当の「エレパレ」に近づいたとき、ラストに裏リーダーのターンが待っています。
■自分にとっての「エレパレ」とは
学生時代に「エレパレ」のように過ごしてきた人、社会人の今も「エレパレ」のように過ごしている人、外から「エレパレ」のような集団を見てきた人。多くの人が「エレパレ」で思い出すストーリーを持っていることから、芸人さんに詳しくなくても共感を呼び、鑑賞時に泣いた人もいたそうです。
私は、鑑賞後に高校時代を思い出しました。仲のいいグループに名前を付けるノリがあったな、でも本当は嫌だったな……。今考えれば恥ずかしいような“イタい”こともやっていて、外から見たら私も「エレパレ」に見えていたのかもしれないことに気付き、恥ずかしさと切なさがこみ上げました。
そんな時代を思い返した後、結局「エレパレ」ってなんなんだとも思いました。「桐島、部活やめるってよ」を見たとき、結局登場しない「桐島」ってなんなんだって思ったし、あの青春群像劇に登場する誰に感情移入できるかを何度も考えました。そのときと同じ感情になったのが「エレパレ」でした。
「エレパレ」には、「あなたにとってエレパレとはなんですか?」という質問を証言者たちにぶつけるシーンがあります。私にとっての「エレパレ」は、いまだに良い夢としても悪い夢としても見る高校時代の部活なのかと考えていますが、去年からいまだにはっきりした答えが見つからず。アラサーにして学生時代をやり直したい気持ちと、最初は嫌悪感を持っていた「エレパレ」に憧れも芽生えています。
ニューヨークさんのYouTubeチャンネルでは、今年5月3~5日に大阪で開催される第19回中之島映画祭に「エレパレ」を出品したことを報告しています。同映画祭では、過去に「カメラを止めるな!」の上田慎一郎監督の作品「Last Wedding Dress」がグランプリを受賞しており、「エレパレ」がグランプリを受賞したら、今後さらなる広がりをみせそうです。
▼本編はこちらから
「エレパレ」を見終わったら、“裏リーダー”への見方が変わる前日譚もぜひ。