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外資インハウスが転職を決意する際の思考過程

11年間の街弁期間を経て、外資企業のインハウス(企業内弁護士)に転職して丸2年が経過した令和6年4月、私は別の外資企業のインハウスに転職した。
このときどういった思考過程なり出来事があって転職という事象が発生するのか、ご参考までに整理してみる。

丸2年間1つの企業で過ごすと、
・日常的に必要となる分野の法的知識が完全に定着する
・目新しいことがなくなってくる
という状況になる。
何か新規案件が発生しても、「これはあの本のあのあたりの記述で解決できるな」、「これは以前のあの案件の書面を少しいじれば解決するな」といった具合である。

インハウスも本質は弁護士なので、自分がどういう分野の知識を身につけられるか、ということには敏感である。

そうしたタイミングで転職エージェントから様々な企業のJD(職務記述書。Job Descriptionの略。)が送られてくると、つい読み込んでしまう。
「おや、全く異業種だけど、現状の知識でも結構応用が効くな。」
といった具合に興味を持つようになる。

加えて、丸2年もいると、その企業の文化というか構成に対して違和感を覚えることも増えてくる。
前職でいうと、法曹資格を持つCounselと法曹資格がないAnalystの役割分担がその最たる例だ。
前職では、Counselには法的判断に専念してもらうため、社内調整やビジネスサイドの窓口はAnalystが担当する、という役割分担であったため、反面Counselが直接ビジネスサイドとやり取りをすることは厳しく制限されていた。私としてはもっとビジネスサイドと密接にやりとりをしたいという所感だったため、こういったAnalystというような特異な存在がいない企業(おそらくそちらのほうが一般的だろう。)でも働いてみたいという思いがくすぶっていた。

そうしたところ、令和6年2月中旬、直属の上司と次のようなやり取りがあった。
上司:今クオーターの賞与は5万円ということになったから。
私:5万円?昨年もおととしも大体40万円を年4回支給されていましたが、今回はどういった経緯で5万円になったんでしょうか?
上司:賞与の算定方式が業績連動性になったのと、今期の人事評価を下げた結果です。
私:(人事評価を確認しつつ)そうですか。それでしたら残りの有給休暇を消化する期間を込みで、3月末で退職します。
上司:本当に?
私:はい。

この面談の直後、人事課にも同様に3月末で退職する旨上司もCCに加えてメールした。

この時点では何ら次の転職先を確保していたわけではなかったが、次のような観点からこれ以上前職にとどまる意味はないと判断した。

・上司の人事評価には全く賛同することができない点が多く、上司の期待に応える意欲がわいてこない→次回以降の人事評価も低い状況がつづく→結果賞与も同水準が続きそう。
・業績連動ということで不利な算定結果となるようであれば自分にはどうしようもなく、これは今後も継続するのでやはり同水準が続きそう。
・すると、年収ベースで従来よりも140万円下がると見た方がよい。
・転職する際は源泉徴収ベースで現状の年収がいくらかを提示して転職先での給与の交渉材料となる。
・そうすると、昨年度の源泉徴収票が最新のものとして使える今転職してしまうのが有利。

・また2年間の職務経験が非常に充実したものとなっており、十分自己アピールできる状況にあった。

以上のようなそろばん勘定が働き、前勤務先をいわば「損切」する判断をしたのであった。

その後、有給を消化しつつ転職活動を進め、令和6年3月18日時点で前職の年収を約200万円アップする内容のオファーを得た上、肩書(Title)も
Corporate CounselからSenior Legal Counselということで昇格させることもできた。

職場ないし上司から低い評価をされた場合にそれを真に受けてしまうことも多いと思うが、実際には評価軸は多元的なものである。

自己評価と上司からの評価が食い違う場合、私は自己評価が正しいと判断する(つまり、「上司に見る目がない」という解釈をする)ことが多い。
企業内弁護士の場合、職務経歴書を定期的に更新してみるのがよいと思う。そうして自分が積み重ねてきた実績を客観視すると、上司なり職場の自分に対する評価が適正なものか、過大評価なのか、過小評価なのかが可視化できる。

その結果、職場の上司が自分を過小評価していると判断できるのであれば、転職を躊躇する意味はない。

職務経歴書の定期的な更新と転職エージェントからの情報収集は年収を守るうえでとても効果的だということをお伝えしたい。

雑文をここまでお読みいただきまして誠にありがとうございました。

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