非鉄金属業界研究メモ


このnoteでは私が就活するにあたってまとめた業界研究と各企業の個人的な印象を載せています。化学メーカーについての記事は多く見かけますが、あまり見かけないように思う非鉄金属、土石セラミックの企業を書いています。ここ間違ってるよなど指摘があればtwitterのアカウントに送ってください。

今回は非鉄金属業界でも銅に関わるメーカーをまとめています。

1. 非鉄金属とは

まず、非鉄金属とは鉄以外のすべての金属のことであり、大まかに分けるとベースメタルとレアメタルに分かれています。ベースメタルは銅、亜鉛、鉛、アルミニウムなどを含み、レアメタルはニッケル、コバルト、チタンなどです。他にも色々あるのですが今回は割愛します。

基本的にメーカーは海外の鉱山から鉱石を輸入して、不純物を取り除いて金属を精錬し、それを加工することで市場に出る商品が完成します。 日本では例外はありますがほとんど鉱石がとれず、基本的には輸入して生産しています。 

海外の優良鉱山は資源メジャーが抑えているところが多いのですが、今後の鉱石の低品位化を見据えて、現在、いくつかのメーカーは海外鉱山の権益へ投資をしており、調べてみると非常に面白いです。

実際にお話を聞いたところ、その部門はどちらかというと商社に近い業務である印象を受けました。ここら辺の話はまた別に書こうと思います。

2.銅精錬メーカーについて

銅における精錬メーカーとは、鉄における高炉メーカーと同じ立ち位置だと考えられます。

国内で鉱石から精錬をおこなっているのは東邦亜鉛を除く非鉄大手7社と、そこから出資された受託製錬所です。

非鉄大手8社とは三菱マテリアル、住友金属鉱山、三井金属鉱業、DOWAホールディングス、JX金属、古河機械金属、日鉄鉱業、東邦亜鉛の8社のことです。どこも元々鉱山が発祥であり、昔鉱山があった所在地に事業所があることが多いと感じます。それゆえ技術系だと所謂僻地勤務は覚悟しないといけないかなと。

また銅製錬大手として、JX金属と三井金属鉱業の合弁によって設立されたパンパシフィック・カッパー(PPC)という会社があったのですが、2020年4月から製錬事業をJXと三井にそれぞれ上記のように移管するとのことですので除外しました。

銅地金の取引価格はLondon Metal Exchange(LME)で決定されます。( https://www.lme.com/ ) ここに利益に関する絡繰りがあります。決定された地金の国際価格から資源メジャーの取り分を引いた残りが国内非鉄メーカーの加工賃つまり利益となります。しかし近年は資源メジャーの寡占化などにより、鉱石価格の値上げが進み、加工賃は下落傾向にあります。また加工賃はドル建てですので円高になると利益が目減りします。円高や市場での地金価格など、非常に景気に左右されやすい業界ともいえます。

また、基本的に銅製錬メーカーは装置産業であり参入障壁が高い寡占事業の上に、上記のように銅の価格は市場によってのみ決定されるため、電気銅の生産数が多く、生産工程でのコストカットが進むほど利益が高くなります。そのため、各社は安定した操業に努め、それぞれ得意とするコア技術を活かした多角化を展開しようとしている印象を受けました。

次の章から各企業についてまとめていきます。

3.住友金属鉱山

住友金属鉱山は安土桃山時代の1590年に南蛮吹きで銅製錬を行ったことから歴史が始まり、新居浜の別子鉱山と共に発展してきた創業430年の大企業です。

IRを見ると、2018年度の売上高は9122億円、税引前利益は894億円と利益率が10%近くでありつつも、連結従業員数は7000人ほどと1人当たりの売上高が高いことが分かります。また自己資本比率は58%と安定しています。また、第3位の株主としてトヨタ自動車が入っており、今はHV車の電池材料を今後はEV社にも電池材料を供給していくのではないかと考えられます。

事業の柱として資源・製錬・材料を掲げており、1社で鉱石から電池・結晶材料までのサプライチェーンを構成できることが強みです。

特筆すべきこととしては高品位の金鉱石を産出する菱刈鉱山、フィリピンのパラワン島におけるコーラルベイ、ミンダナオ島のダガニートのそれぞれのHPALニッケル製錬所、パナソニックへ提供を行っているリチウムイオン電池の正極材となる水酸化ニッケル、ニッケル酸リチウムなどがあります。特にニッケルの生産量は世界7位と海外の資源メジャーと名を連ねるほど成長しているところです。

銅製錬に関する事柄では東予工場を拠点としており、技術系の金属事業部での採用となった場合は乾式の技術者が働くことになると思います。ここで製錬される銅鉱石は南米・北米からがほとんどであり、住友金属鉱山が投資を行っている鉱山もいくつかあります。

特に銅鉱山のプロジェクトとしては住友商事とタッグを組み一昨年権益を取得したケブラダ・ブランカ2、2016年の最終赤字の原因となった減損損失を出したシエラゴルダ、1986年から参入しているアメリカのモレンシー鉱山などがあります。

他にもカナダでのコテ金鉱山開発やフィリピン・インドネシアでのニッケル製錬の計画・実施など同業他社と比較すると、先駆けて川上へと投資を行ってきていることが分かります。ちなみにカナダの金鉱山開発について、コテ鉱山はトロントのあるオンタリオ州にあります。フィリピンは単身赴任に限定されているとのこと。

待遇についてですが、四季報によると総合職の平均年収は990万円と非鉄業界の中ではトップを争うほど高く、また新入社員の1年目研修において1~2か月間のカナダやイギリスへの海外留学を取り入れているなど社員の教育に力を入れていることが感じ取れます。そのためか毎年の採用人数は30~40人と同規模の他社と比べると少ないです。福利厚生も技術系の多くが勤務する新居浜・西条の磯浦、東予は独身寮があり、築年数は割と経つものの1月数千円ほどと格安であり、社宅も完備されてるそう。あと新居浜イオンが近かったです。

※新居浜の独身寮は数年以内に建て直される模様。設備投資費にも独身寮の費用が入っていましたね。ヰゲタハイムが施工するのでしょうか?

4. 三菱マテリアル

三菱マテリアルは社内カンパニー制でいくつかの部署に分かれてますが、私は加工事業と電子材料についてはほとんど知らないので書きません。加工事業だと機械系出身の方が多いのでしょうか。

さて、銅製錬を行っている事業所としては香川県の直島製錬所と福島の小名浜製錬があります。直島は香川県に位置する瀬戸内海の島です。冬の工場見学のスケジュールには岡山の玉野港から社有の船で行くと書かれており、寮に住むとなると遊びや買い物のために高速船で岡山か高松まで出るのが大変そうだと感じました。

セメント事業についてですが、先月宇部興産と三菱マテリアルが両社のセメント事業を統合することと発表したこともあり、何とも言えませんが国内での需要は今後少なくなる産業でもあり、合理化が進められるのではないでしょうか。北九州にある苅田のセメント工場は物凄く大きく夜景はインスタ映えしそうでした。

環境・リサイクル事業本部は、環境の方では地熱発電や原子力などエネルギー関係のことを、リサイクルでは家電や焼却灰の再利用などを行っているとのことです。原子力については三菱マテリアルは今は三菱重工の子会社となっている三菱原子燃料を合弁で設立したことと、鉱山が発祥ということもあり放射性廃棄物の地層処分や精錬技術を生かした再処理関連などに強みを持っている印象でした。実際に青森の六ケ所村にある日本原燃の再処理施設には深く関与しているそうです。まあ、再処理施設自体三菱重工、日立、東芝、IHIなど重工業メーカー、神戸製鋼、三菱マテリアルなどの素材メーカー、日揮やゼネコンなど参加した大型プロジェクトではありますが。

オフィスはであるエネルギー事業センターはさいたま新都心駅の近くと立地が良く、また借り上げ社宅もかなり家賃が安いとのことで魅力的でした。あと、福利厚生の一環でコクーン新都心の映画館で安く映画を見られるとのこと。

三菱マテリアルは三菱金属と三菱鉱業セメントが合併して成立したことによるのか非鉄業界の中では特に多角化している印象を受けます。この部分はJCOの事故後、多角化から選択と集中へと舵を切った住友金属鉱山と対比的です。利益の多くが安定した製錬事業とセメントですが、セメント業界は再編が避けられない状況であり、今後合理化が進められることが予想されます。また製錬メーカーどこにも共通ですが、利益率も地金価格が低迷すると一気に減少することを構造的に避けられません。その点、高機能材料や電子材料にもシェアを持ち、多角化のメリットを最大限に活かすことができるならば、非鉄業界の中でも特に安定した企業ではないでしょうか。

あと、操業側は違うかもしれませんが、管理部門は年間休日が127日プラス有給取得率がかなり高いです。

5. 三井金属鉱業

三井グループの非鉄金属企業。JX金属とPPCを合弁企業としていましたが、今後は岡山の日比製煉所が銅製錬の主力となるのでは。どちらかというと銅製錬よりも自動車用の排ガス触媒やドアロックなどの方が強い材料メーカーであると感じる。採用人数を見ても機能性材料の方が多いため、今後はそちらの方面を強めるのだろう。

待遇と福利厚生についてはよく知らないので書けません。

子会社の三井金属アクトと三井金属エンジニアリングはどちらも強みのある企業であると思います。三井金属アクトは自動車機器セクターに位置すると思いますが、ドアロックに関して強みを持っており、三井金属エンジニアリングはパイプ事業に強く、売り上げに占める割合を見ると親会社である三井金属以外からも受注を取れているのではないでしょうか。

化学、鉄鋼など素材メーカーだと顕著なのですが、製造部門の次に規模の大きい部署がエンジニアリング部門ということも多々あり、本体から分社化されたエンジニアリング事業部が子会社となっている例も多いです。特に鉄鋼系の日鉄エンジとJFEエンジは有名です。一方で神戸製鋼は多角化の一環としてエンジニアリング事業を行っています。建機、電力事業などもありますので一番手広くやってるのを感じます。

あと、ニュートリノの検出で有名なスーパーカミオカンデがある神岡鉱山を経営していたのは三井金属でした。鉱山跡地の再利用には色々と例がありますが、その中でも特に活用できている気がします。

6.JX金属

JXホールディングスの非鉄事業会社。JXTGホールディングスもとい新日鉱ホールディングスの源流である日本鉱業はもともと日立銅山の銅製錬により開業したためある意味本流である。

佐賀関製錬所は国内1位の銅地金生産能力をもつ。事業内容は銅、機能金属、鉱山開発となっており、他の非鉄大手と同じようにチリのいくつかの銅鉱山に権益投資を行っています。

また、リチウムイオン電池のリサイクルにも力を入れており、他社はニッケル・コバルトの回収のみが主であるが、現状回収が難しいリチウムの抽出技術開発も行っている。リチウムはレアメタルほど希少ではないものの偏在している鉱物であり、日系商社も鉱山開発に乗り出している。

JX金属も新人教育の過程で、2年目社員が2~3か月ほど海外留学するとのことであり英語力を重視している印象を受けた。また、職種別採用となっているがその中に職種としての分析が含まれているのが非鉄業界では珍しいのではないだろうか。JX金属だけではないが、非鉄金属各社は職種別採用をしているところが多いと感じる。そのため研究職がいいと言う人は受けてみるといいかもしれない。

年収は良さそうであるが、福利厚生は全く知らないので知っている方がいれば教えてください。

あと、2006年に閉山したものの、北海道で世界一位のインジウムの採掘量を誇った豊羽鉱山での採掘を行っていました。

7. DOWAホールディングス

持株会社制であり、銅製錬を行っているのはDOWAマインメタルである。前身となった同和鉱業の主要な鉱山が秋田の小坂鉱山と花岡鉱山であったことから、閉山後も製錬所など事業所は秋田県に多いです。

閉山後の雇用維持のため小規模な事業所での生産が可能な電子材料の子会社を設置する例はDOWAホールディングスに限らず他社でもあり、住友金属鉱山などでも過去鉱山のあった北海道に工場を置いていたりします。

他にも環境・リサイクル、電子材料、金属加工、熱処理などを行っており、特にリサイクルに力を入れている印象を受けました。

就職の面談をしていた際に、なぜか教授にオススメされた企業です。繋がりはないはずなのですが。

8. 古河機械金属

富士通、富士電機、ADEKAなどを擁する古河財閥の源流。

最近電車内で社名をパロディとした古河気合筋肉の広告を見ることが度々ある。特に羽田空港から浜松町までのモノレールではよく見ました。実際に公式webサイトを見てみるとよくわからないぐらい力が入っています。アップロードされている土木・産業機械のPVは見ごたえがあります。

非鉄大手8社には入っていますが、製錬事業はグループ会社の古河メタルリソースが行っており、金属事業は日比製煉と小名浜製錬へ委託しています。

金属ではないものの削岩機やユニックなどのシェアも高く、ユニックは国内では古河機械金属と香川県に本社を置くタダノが2大メーカー。四季報でも機械セクターです。あと、不動産事業で再開発なども行っているのが面白い。

かなり好きな会社です。

9. 日鉄鉱業

日本製鉄系。採用ホームページで歌が流れるので音量に注意。石灰石や銅などの鉱山に特化しています。特に国内にいくつかの石灰石鉱山を所有しているので国内勤務が多いのかなと。採用者もほとんどが資源系ではないでしょうか。よく分かりません。

10. まとめ

途中で力尽きました。まとめてみましたが、化学メーカーよりも各社の事業内容が思ってたより似てる印象です。ただメモを切り貼りしただけですので系統だった企業研究ではありませんが、参考になれば。

また、国内で商業的に採掘がおこなわれている金鉱山は住友金属鉱山の菱刈鉱山のみですが、戦時中に金鉱山整備例という法律が出されたことにより鉱脈を残したまま閉山となった鉱山も多々あります。

そのため、近年鉱業法改正をきっかけとしてカナダのJapan Goldというベンチャーが九州・北海道を中心とする金鉱山探索に乗り出しており、プロジェクトを読んでみると興味深いです。非鉄金属に興味のあるかたは是非読んでみてください。

追記

続編としてニッケル、亜鉛、リチウムについて国内メーカーの動向も含めてまとめてみました。興味のある方はどうぞ。

https://note.com/eiei_backito/n/nc17603ddfee4



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?