今日、聴きたいジャズ(♯2)
今日ご紹介するのは、トランペット奏者フレディ・ハバードのアルバムからタイトル曲「Bolivia」です。いつも通り、よろしければまず下の動画の再生ボタンをクリックした上で、文章を読んでみてください。
「Bolivia」という曲の魅力
一言でいうと「怪しくてカッコいい。」これに尽きます。
ジャズは「大人の音楽」とか言われることがありますが、そんなお洒落な話ではなく、少し悪そうで、カッコ良いんです。俺たちがカッコ良いと思う音楽はこれだけど、文句ある?って感じ。この動画のサムネがアルバムのジャケットですが、曲の雰囲気はまさにこれですね。ともすればカッコ悪くも見えますが・・笑。でも、演奏を聴けば分かります。
まず、イントロから非常に特徴的ですよね。ピアノとベースがユニゾンで刻むラテンのリズム。妖しくて、でもカッコ良くて、何が始まるんだろう、とドキドキします。ジャズファンであれば、このイントロを聴いただけで、ボリビアだ!と膝を打って喜ぶ、非常に印象的なフレーズです。
今回3管で演奏されているというのも大きなポイント。ちなみに3管というのは、管楽器奏者が3人いるということです。この演奏ではトランペット、テナーサックス、アルトサックスの3つの管楽器が参加しています。
ジャズのコンボ形態では、管楽器奏者が一人もしくは二人が一般的であり、大好きな奏者の歌い方や音色をじっくり味わうのにはそっちの方が良いのですが、3管編成では3人でまったく動きをするのではなく、どの楽器が主旋律を吹き、どの楽器でどうハモるのか、ある程度の編曲が必要となります。この曲はそういった意味で非常に「料理しがいのある」曲であり、3管編成がハマる曲だと思います。
また、各奏者のソロ中にリズムが変わるのにも気づいたでしょうか?
最初のトランペットソロだと、1:30-頃から、それまでラテンだったリズムがスウィングに変わります。一気に推進力が出て、曲が前に進んでいく感じがしますよね。なお、1:48には再びラテンに戻り、2サックスによるバッキングが始まります。人数が多いと、曲自体も長くなるため、このように変化を付けて、曲に刺激を与えています。
フレディ・ハバードのトランペット
私はサックス奏者なので、詳しいテクニックまで分かっているわけではありませんが、この人はめちゃくちゃ楽器が上手いです。淡々と超絶技巧を繰り出しているために、なんだか簡単そうに聴こえるんですが、すごく難しいことをいともたやすくやってのけています。
また、私はフレディ・ハバードは特に「マイナーキー」(短調の曲。メジャーキーの曲と比べて、少し暗めの響きを持つ)を演奏する際に、その真価を発揮すると考えており、このボリビアは彼が本領発揮する格好の選曲だと思います。大人っぽさ、激しさ、そして暗さを含んだフレージング。マイナーキーに対して、アドリブソロをとらせたら彼の右に出る者はいないのではないでしょうか。
「3管編成」では、少し短くソロをとるのが一般的で、その中で印象的でカッコ良いアドリブを求められますが、この演奏ではトランペットのフレディから始まった演奏の熱が、途切れることなく、テナーサックス、アルトサックスへと引き継がれていきます。
ジャズはチーム戦であるとともに、個人戦でもあります。
演奏者同士が、お互い競い合って、クオリティを高めていく様子を存分にお楽しみください!