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ジャズの花形。テナーサックスの音色に酔いしれる。

前回から約1ヶ月ぶりの更新です。12月に書いた4本の記事について、たくさんの方に読んでいただき、大変嬉しく思っています。いただいた「スキ」やコメントを執筆の活力として、これからもジャズの魅力を中心にお伝えしていきます!

さて、今回は私自身も演奏している「テナーサックス」の魅力と、個性的で魅力あふれる5人の奏者をご紹介いたします。

なぜテナーサックスは花形なのか?

本題に入る前に、テナーサックスが「花形」である理由について、少しお話します。もちろん自分が吹いている楽器だからといって、特別扱いしているわけではありません。テナーサックスがジャズにおいて「花形」である理由とは?

まず、「サックス」という楽器が木管楽器であることが挙げられます。例外はありますが、一般的なジャズで使用される吹奏楽器はトランペット、トロンボーン、サックスの3つ。このうち、サックスだけが木からできたリードの振動によって音を発生させる「木管楽器」です。木管楽器は金管楽器と比べると、コントロールが容易だと言われており、セッティングや奏者の吹き方によって様々な音色を出すことができます。ビックバンド編成においても、主旋律のメロディやソロパートをサックスが担当することが多く、そもそも「サックス」という楽器がジャズにおいての花形であることは誰しも認めるところでしょう。

そして、このサックスの中でも、テナーサックスは中音域を担う楽器であり、低い音から高い音まで、かなり幅広い音域を出すことができます。ソロパートを担うのが一番多いのは間違いなくテナーサックスですし、他のどの楽器と一緒に吹いても音が混ざりやすく、バランスが良いのです。

また、この楽器の奏者に「ジャズジャイアント(ジャズの巨人たち)」がたくさん居ることも花形たる所以だと思います。名前を聞いたことありませんか?ジョン・コルトレーン、ソニー・ロリンズ、スタン・ゲッツ、レスター・ヤング、マイケル・ブレッカー・・・。各時代のトップランナーと呼ばれるミュージシャンには必ずテナーサックス奏者が含まれています。

余談ですが、私が大学のジャズ研でどの楽器を吹こうか迷っていた時に、決め手になったのは「テナーサックスが一番モテるよ」という言葉でした。その時はてっきり「女の子からモテる」という意味だと理解して、二つ返事でテナーサックスを選びましたが、今考えるとあれは「曲でも良いとこ吹かせてもらえるし、他の楽器奏者からも誘ってもらえるよ」という意味でしたね。(でもテナーを選んだことはまったく後悔していません笑)


個性的で、魅力あふれるサックス奏者5名

1.That Old Feeling / Zoot Sims

他のミュージシャンから”スウィング様式による最強のサックス奏者”と評されたズート・シムズ。彼の最大の特徴はその温かい音色にあり、サックスが本来持っている木管的な響きを引き出すことで、聴く者を魅了します。

「都会的で洗練された演奏」も良いのですが、ズートの演奏には、なんだか実家に帰ってきたような安心感を抱きます。他の奏者に浮気しても、やっぱりまたこの音色を聴きに帰ってきちゃうんですよね。
こういう音になりたいと、演奏者しての具体的なイメージを持つきっかけとなった、私にとっても思い入れのある奏者です。


2.Say It (over and over again) / John Coltrane

あまりジャズに詳しくなくても、「ジョン・コルトレーン」という名前を知っている方は多いと思います。言わずと知れたジャズの黄金時代を引っ張ったジャズジャイアントであり、「シーツオブサウンド(音の洪水)」と評される音数の多い演奏スタイルで、聴くものを圧倒します。特に後期の演奏は、フリージャズに傾倒している影響もあり、なかなか難解で、その評価は分かれます。正直、私はちょっと苦手かなと思っていました。

紹介する「Say It」はコルトレーンとしては異色、バラード曲ばかりを集めた「Ballads」というアルバムの1曲目に収録されています。

アルバム作成の裏話として、当時コルトレーンが愛用していたマウスピースの改造に失敗してしまい、早吹きができなくなったため、仕方なくスローテンポのバラードだけを演奏することとなったという噂があります。(真偽は定かでないのですが。)
しかしまあ、このアルバムが最高に素晴らしい。繊細な音色で、丁寧に吹かれるバラードの名曲達はあまりに美しく、本当にこれがコルトレーン?と抱いていたイメージが180度変わると思います。私は高校生の時に、たまたま友達のお父さんからこのCDを借り、よく分からないまま1曲目の「Say It」を聴いた時に、ガツンとやられてしまいました。とにかく、最初の1音を聴いてみてください。ガツンとやられます。


3.Cheese Cake / Dexter Gordon

重厚で迫力ある音色が持ち味のデクスター・ゴードン。彼の魅力はワンホーンで、「俺について来い!」と自由奔放に吹いた時に一番発揮されると考えています。この曲は、ミディアムファストなテンポ、マイナーキーでの少し暗めの響き、ワンホーンと、彼にとって整いまくった舞台で、ホームランをかっ飛ばす4番打者と言ったイメージでしょうか。

テナーサックス奏者は基本的に皆この曲が大好きであり、演奏される機会も多いですが、オリジナルであるデクスターの演奏はこれからも誰も超えることはできないでしょう。


4.Recorda Me / Joe Henderson

ジョー・ヘンダーソンは少しのクセのあるプレーヤーです。なかなか1回聴いただけではその良さが分かりにくいのですが、聴けば聴くほど味が出てくるというか、やみつきになってしまう魅力があります。

先ほどのデクスターのような勢いはありませんが、練られた音、印象に残るフレージング、そして緩急。コルトレーンっぽい、デクスターっぽい演奏者はけっこう居るのですが、なかなかジョーヘンみたいな奏者に巡り合うことはありません。それだけ唯一無二の演奏スタイルなんでしょうね。一般の人はもちろん、特に演奏者からの人気が高いプレーヤーです。


5.East Of The Sun  / Max Ionata

マックス・イオナータはイタリア人の現役サックスプレーヤーです。実は私もほんの1年前くらいに知りました。動画を見て一目惚れをして以来、あらゆる動画をチェックしています。

この動画はサックスメーカーの王者であるセルマーの製品「Axos」の宣伝のために撮影されました。ピアノとのデュオ形式のため、サックスの音色が聴きやすく、本当に美しい音色。めちゃくちゃカッコ良いですよね!

基本的にコンボ形式では、必ず曲の初めと終わりに「テーマ」のメロディを吹きますが、昨今ではアレンジがきつすぎて、元の曲が持つ良さが消されてしまうパターンも多いところ、この人はどの演奏を聴いても、原曲の美しさをストレートに表現しています。また、すごいことをやっているのに、常にリラックスして聴こえるのは、一流の証拠です。
今、私が一番注目しているプレーヤーです。

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