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農民工の基礎知識

SHEINやTEMUなど日本と関りも深く、中国経済を語るうえではかかせない、中国の生産や建設業の現場を支える農民工の解説です。初めての方にも分かるよう、基本から分かりやすいように解説しています。

農民工とは

一般的に農民工とは地方から都市へ出稼ぎにくる人たちのことを指します。

椅子替わりとなるバケツと、生活用品を入れる頑丈な袋が農民工のシンボル

中国は都市部と農村部の戸籍が分かれていて、それぞれにメリット・デメリットがあります。所得・生活水準としては都市部が圧倒的にメリットがあるため農村から出稼ぎに来る人が多く、そういう人たちのことを指して「農民工」と呼びます

中国の平均収入の分布、沿岸部の収入は内陸部に対して高い

中国の省は沿岸部の収入が高く内陸部の収入が低いので、農民工は同じ省内の農村から都市部だけではなく、省を跨いで沿岸部の省へ出稼ぎに行く人も多いです。かつては農業に従事する家族を養うために出稼ぎをする人が多かったのですが、今は農業とは縁がなく都市部で働く人も少なくはありません。

農民工の重要性

農民工はブルーカラー・ワーカーとして、中国の現場作業や肉体労働を支える存在となっています。2023年の統計では農民工は 2.86 億人で21-60歳の労働人口の約36%を占めています。

主要職業の統計

こういった農民工の代表的な仕事はインフラ整備などの土木工事、ライン工もしくは手作業などの工業となっています。中国の土木インフラや、SHEINやTEMUに代表される安価な衣服や工業品を作る現場は農民工によって支えられています。

2次産業を支える農民工

農民工に代表されるブルーカラーの地位

農民工は中国社会におけるブルーカラーの地位や権利を代表しています。例として給料未払い問題があります。一般的に農民工への給料支払いは月のほか、工期や年を基準とした一定期間の支払いとなることが多いです。しかし中国の企業間ビジネスは顧客からの資金回収の支払遅延が長く、中でも建設業の支払い遅れは特に長いです。また、業界全体の不振により倒産する企業も少なくありません。その結果、建設業に関わる農民工の給料未払い問題は付き物となっています。

農民工の未払い給料の要求(讨薪)

このように、農民工の仕事は日本と同じような3Kでいながら、地位や権利は更に低いと見なされています。このような背景があるので、大卒者等のホワイトカラー志望者のブルーカラー職への忌避感は強いです。

高齢化する農民工

いま農民工は高齢化しています。もともとは若い人たちが多かったのですが、その人たちが同じ仕事に就業したまま高齢化しています。2022年の時点で40歳以上の割合は50%以上となっています。

農民工の年齢と割合

農民工に代わって、増えているのがフードデリバリーや宅急便の宅配員です。若い人たちにとって、こういった職業は自分の好きなときに働けてライフワークバランスに優れている、空いた時間で自己研鑽ができ転職のチャンスが掴める、比較的に給料も良い等の理由から支持されています。

フードデリバリー大手、美団の宅配員数の推移

これまで急速に発展してきた中国の建設業を支え、いまのSHEINやTEMU等に代表される工業品の低価格競争を現場で支えているのは農民工です。一国内に二国あるような社会のもとで中国は発展してきましたが、足元では高齢化が進んでいます。今後はこういった人たちの体力不足による就職難や年金問題(中国の高齢者向け社会保障は日本ほど充実していません)、現場の人手不足、人手不足による人件費増加が社会問題化する可能性があります。

以上が農民工に代表される中国の独特な社会構造の説明でした。今後の中国経済を見通す一助となれば幸いです。お読みいただきありがとうございました。

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上海在住のえいちゃん
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