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【施術日誌#2】SMARD1(呼吸窮迫を伴う脊髄性筋萎縮症)さくらちゃんのマッサージ施術



ご家族と

1、さくらちゃんとの出会い

今年3歳(この記事投稿時)になった、さくらちゃん。さくらちゃんは、SMARD1(呼吸窮迫を伴う脊髄性筋萎縮症)という難病を抱えています。
さくらちゃんが1歳のとき、ママがホームページで当院を見つけていただき、ご連絡をもらい初回訪問する運びとなりました。
今でこそ、幼くして気管切開や人工呼吸器での呼吸管理が必要なお子さんを何名も担当していますが、当時、SMARD1という診断名のお子さんを触ることは初めてでしたし、まだ1歳という幼さで24時間人工呼吸器が必要なお子さんを施術するのも、さくらちゃんが初めてでした。

初回の訪問時は、正直に、そういった私の事情についてお話させていただき、マッサージで何ができるのか?については、考えながら取り組んでいくことになることを了承してもらい、訪問施術をスタートしました。

最初は、何をどこまで聞いて良いのかもわかりませんでした。でも、たとえお話しにくいことであっても、今後のために必要なことはどんどん質問させてもらいました。

病気はいつわかったのですか?
遺伝子検査したのですか?
呼吸器の、この部品は何ですか?
どういう仕組みですか?
加湿器はなぜ必要ですか?
結露はどうしてますか?

さくらちゃんのことを知りたくて、いろいろと質問しました。ママとパパは、嫌な顔ひとつせず、SMARD1という診断名がつくまでの経緯、人工呼吸器や付属品の説明や扱い方まで、すごく丁寧に教えてくださり、おかげ様で呼吸器の仕組みについても随分詳しくなりました。

今では、役所とのやり取りの経緯や、福祉制度の仕組みなど、勉強熱心なママとパパが、実際の体験をもとに教えてくださるので、たとえ私が今すぐ相談員に転職しても即戦力になるのではないかと思えるぐらい、学ばせてもらっています。

そんなさくらちゃんと、ママ、パパとも、早いものでもうすぐ2年のお付き合いになります。

現在、さくらちゃんのご家族は、Instagramでの発信や、引きこもりがちな、同じようなケアを必要とするお子さんやご家族が気軽にお出かけできるような場を提供するため、「関西会」という会を立ち上げたり、精力的に活動されています。

さくらちゃんのInstagramアカウント
@harusakinosakura
https://www.instagram.com/harusakinosakura

2、SMARD1(呼吸窮迫を伴う脊髄性筋萎縮症)について

SMARD1は、いわゆるSMA(脊髄性筋萎縮症)のⅠ〜Ⅳ型とは原因遺伝子が異なり、欠損するタンパク質が異なるため、SMAの原因とされるSMNタンパク質の働きを調節する、スピンラザ、ゾルゲンスマ、エブリスディといった治療薬が使えません。

痰吸引などのケアも欠かせません

早期に体幹筋や横隔膜の機能が低下し、呼吸窮迫症状が発症するため、1歳になる前から、24時間の人工呼吸器による呼吸管理が必要となります。

SMARD1とSMAは、原因となる遺伝子とそれによってコードされるタンパク質が異なるものの、共通点は、「運動ニューロン障害」であるということです。

脊髄を通る運動ニューロンの障害であるということは、脳そのものや、脊髄を通らない脳神経系(顔や目の動きに関する神経)には、構造的な障害はない可能性が高いということです。

笑顔のさくらちゃん

実際、さくらちゃんも呼吸器の空気を利用して上手に声を出したり、笑ったり泣いたり、怒ったり、表情豊かに表現してくれますし、視力、聴力も、中枢神経的には正常である可能性が高いと思われます。

3、マッサージでできること

施術の様子

まずはママやパパが求めることは何か?

・願わくば、進行性とされるSMARD1の症状の進行を少しでも遅らせたい
・寝たきりによる、関節の変形や拘縮(股関節脱臼や側弯を含めた2次的障害)を予防したい
・整形外科的というより、女の子としてできるだけ綺麗な見た目を保ってあげたい
・SMARD1そのものは脳機能の構造的な障害はないとされているので、最適なコミュニケーションツールを見つけ、その能力を最大限伸ばしてあげたい

といったものです。

※ここからは私個人の解釈と持論ですので、ご了承ください。

SMARD1とSMAはどちらも「運動ニューロン障害」であると述べました。

人間には大きく分けて、脳から各部位へ運動命令を送る「運動ニューロン」と、体の各部位から脳へ情報を送る「感覚ニューロン」の2種類、というと雑な分類ですが、道路や電車で言うところの上り線と下り線があります。

SMARD1とSMAは、脳からの命令を伝達する神経が、脊髄のところで障害されているため、その先の体を動かすこと難しくなります。

脳から発信された信号が、神経軸索を通って脊髄まで到達し、そこで別の神経線維に乗り換える(シナプス)のですが、この乗り換えがうまくいかないことによって様々な障害が起こります。

例えるなら、脳から脊髄まで高速道路に乗ってきた車が、目的地に近いインターチェンジで一般道路に降りようとしたとき、料金所のゲートの一部または全部が故障して目的地に着けないというイメージです。

脊髄のシナプス(料金所)を通らない脳神経系(顔、眼、口)の運動機能が比較的残存しているのも、この理屈です。

一方で、逆方向の道路は別にあります。

つまり、運動ニューロン障害であるということは、別ルートである感覚ニューロンは障害されていない可能性があるということです。

身体を動かすことは難しくても、身体を触ってあげれば「感じること」はできるはずだということです。

感じることができるのであれば、皮膚を通した脳へのアプローチが可能です。

5、具体的なアプローチ

現時点での、私が考えるさくらちゃんへのアプローチは、

心地良い刺激を入れていく

① 心地良い皮膚刺激によって成長ホルモンやオキシトシンの分泌を促し、精神的な安定と脳の発育を促す。

② 筋肉や関節へマッサージ刺激によって、固有覚を刺激して脳内の身体図式の構築を促す。

③ ①と②によって、構造上の障害を受けていない脳の発達を促すことで、知的発達を阻害しないようにしていく。

④ 他動的に関節を動かすことで、寝たきりによる変形や拘縮を予防していく

⑤ 股関節脱臼や側弯を軽減することで、胸郭の変形を防止し、人工呼吸器による肺への負荷を長期視点で軽減し、将来にわたってQOLを下げないことを目指す。

背骨のアライメントを触診

以上です。

そのために、GLITTER式マッサージの要素に、さくらちゃんの成長に合わせてリハビリマッサージの要素も加えながら、オイルを使った快刺激を入れていくなど、複合的にアプローチしています。

お子さんは、良くも悪くも、どんどん成長していきます。さくらちゃんも、成長にもとないそれぞれの年齢やステージで、課題も変わってくると思います。
小児への訪問マッサージは、長期的な視点に立って、子どもたちに向き合っていく必要があります。

写真撮影 つきあかりだんちのリサさん
@kei03.24
https://www.instagram.com/kei03.24

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