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(26)〝デジ力〟の前に〝読書の筋力〟―「よく読む子」に育つ5歳頃からの本好き大作戦 ~図書館&書店編~

  つづきです―が、まとめに入ります。
 
 何気なく手にした本によって心が救われる・・・本好きにとっては珍しいことではありませんよね。
 
 最近じつは新聞で「図書館を気軽に利用して」という記事を読んでいたところ、「おや?」と思うことが書いてありました。
 それは、「図書館が本を無料で貸し出すために、本を買う人が減っている・・・」という声が書店側からあがっている…という内容でした。
 
 ああ・・・ちょっとまって! と意味もなく焦った私です。

〈子どもが本好きに育つうえで図書館・新刊書店・古本屋は全部必要!〉

 
 はい、確かにそういう面もあるのかもしれません。
 予約をしたり、借りに行ったり・・・という手間があったとしても、無料で読めるものを「あえて買う」という人は、そもそも本に重きをおいている人で、どちらかと言えば少数派なのでしょう。
 
 けれど私は、図書館と書店の役割は、明確に違うと思っています

 いえ、もっと言えば「子どもが本好きになるために」という角度から見るならば、「図書館」「新刊書店」「古本屋」の役割は、これはもうはっきりと違います。
 
 ぜんぶ必要です。むしろこの3つを上手に使いこなしてこそ、子どもの読書の筋力はムキムキに鍛えられると思います。
 
 

〈図書館はトライ&エラーを繰り返して〝好き〟を見つける本の遊び場〉

 
 これまでお話してきたことの、まとめのような感じになりますが・・・。
 
 図書館は、特に「読書の筋力を鍛え中」の子どもが「自分の好き」を見つけるためのトライ&エラーを思う存分繰り返すことができる場です。

 (3)(4)(5)でも書きましたが、「これはどうかな・・・」という本を10冊借りて2週間本と生活する、返却前にランキングを決めて「上位」になった本と似た傾向の本を次の図書館でたくさん借りる、そしてまた「上位」を決めていく・・・という方法を通して、好きの純度を高めていきます。
 
 これは書店ではできないことですよね。いくら一冊の単価が安くても、古本屋でこれを繰り返すのもなかなか難しいでしょう。
  
 そしてまた、図書館は滞在時間の問題もクリアしてくれます
 ちょっと想像してみてください。
 親が「本屋さんで本を買おうね」と子どもを連れていった場合、書店での滞在時間はどの位を想定しているでしょうか?
 30分? どんなに頑張っても1時間が限界でしょう。なかなか決まらないと親も子も疲れてきますよね。
 
 買う前提である以上、「失敗したくない」という意識も働きますから、よけいに「これ」という本が決められないとイライラします。
 
 けれど図書館なら、初めから2時間くらいいるつもりでゆっくり本を選ぶことも可能です。座って読む場所もあります(当たり前…)
 
 書店は「買う場所」、図書館は「滞在できる場所」。
 そしてこれを繰り返すうちに、子どもは自分の好きな本がだんだんわかる  
 ようになり、書店での選書もじょうずになっていくと思います。
  

〈書店は本を手に入れる場…〝家に本があること〟の凄い効用〉

 
 書店は、好きなジャンル・傾向の本がわかった場合、また明確に「この本」「この作家」「このシリーズ」という「好き」がわかった場合、その本を購入できる場所です(当たり前…)。
 
 私はママ友さんから読書について相談を受けた場合、「子どもがはっきりと『この本好き』と意思表示をしたら、ぜひ買ってあげて」と言っています。もちろん予算との相談もあるでしょう。けれど、「家に本があることの想像以上の効用」が、私はあると思うからです。
 
 小学1年の子が今好きな本は、来年も、さ来年も読むかもしれません。いえ、読むでしょう。
 図書館からでも友達からでも、借りたなかに「この本好き!」が見つかったら、それもぜひ買ってほしいと思います。
 成長度合いによって一冊の本が違ったメッセージを与えてくれるかもしれませんし、子ども自身がそれを感じ取ることができるからです。
 
 そして、数あるなかから「お気に入り」となったその本は、紛れもなくその子だけの成長記録になります
 友達同士で好きな本を10冊ずつ持ち寄ったら、「すべて同じ」2人がいる可能性はかなり低いでしょう。
 
 好きな本は、その子の個性そのものです。
 
 また、「大好き!」とまでいかなくても、興味がありそう・・・と思ったジャンルの本を何冊か買って家の本棚に並べておくことも「本好き」を育てる土壌になります。
 それは、「読む可能性のある(高い)本」を、あらかじめ本棚に並べておくと、1年後、2年後に手に取ることがあるからです。
 「これ読む? あ~別にいい? じゃあ買わないよ」となった場合、1年も経てば、その本に興味があったことすらたぶん忘れてしまいます(親子共に)。
 
 もったいないです。
 
 少し前のことですが、長女と同じ高学年の子どもを持つママ友さんがこんな話をしていました。
 「子どもが友達から勧められた本を読んでいて、内容は興味があるんだけど、文章が今のあの子にはちょっと難しいみたいで10ページくらいで止まっちゃって・・・。だから、『読めなかったね』と言って返すことにしたんだ」
 
 私は咄嗟に、「あの・・・もしかしたらその本、買ってあげたらいいかも」と言ってしまいました。

 ーはい、おせっかいですみません。
 
 でも、つまらなかったのではなく、文章が多くて読み進められなかっただけなのなら、来年、さ来年には読めるかもしません。
 今、親子で『読めなかった』という結論を出してしまえば、その子とその本の縁は切れてしまう。でも家の本棚にさりげなく並んでいればいずれ手にして、『最初は難しく感じたけど、今ならおもしろく読める』という感想を抱くかも知れません。
 
 長い人生のうちで、その本を小6で読んだか中1で読んだかはあまり関係ありません。どちらも「読んだ」ということ。でも手放してしまえば、「読めなかった本」と「読めなかった記憶」が増えていくだけなんです
 
 私は、子どもが本好きになるうえで「家に本棚がある」ことが不可欠だと思っていますし、その本棚には子どもが「明確に好き」な本はもちろん、「読む可能性のある本」をできるだけたくさん並べておくことが功を奏する、と考えています。
 
 だから、本を買うということは、それだけ子どもと読書の縁を結んでいくことになると思うのです。
 
 図書館は素晴らしい場所です。でも「いずれ返す本」は、宝物にはなりづらい
 
  

〈安価でお宝の山・・・古本屋は家の本棚を充実させる救世主〉

 
 古本屋があれほど豊富な品揃えを誇り、チェーン展開して街のあちこちにあるという光景は、私が子どもの頃には想像できませんでした。だから私は今の子ども達が羨ましいです。
 古本屋の魅力は、予算が乏しい時でも「とにかく何冊か本を揃えたい!」という思いに確実に応えてくれるところです。
 
 (7)あたりでもお話しましたが、子どもの心に湧きあがっている本への興味を切らさないために「とにかく読むもの」が欲しい時や、本棚に子どもが好きそうな本をあらかじめ並べておきたい時には大活躍してくれます。
 
 子どもの好みがはっきりした後なら選書の狙いもかなり定めることができますから、「安物買いの銭失い」にもなりません。
 仮に「結果としてあまり読まなかった本」があったとしても、仕方ないと割り切ることもできるでしょう。そういう意味で、図書館と新刊書店の中間に位置する存在だと私は思います。

 「必ずこの本が欲しい」という時や、子どもの心をウキウキさせたい時にはちょっと物足りないかもしれませんが、図書館や新刊書店がどうしても賄いきれない「かゆいところ」に手が届くという、この存在感は「子どもを本好きにさせたい」親(私)の強い味方です。
 
 つづきます。
 
 

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