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ゑひ[酔]では、毎週日曜日に、上原ゑみの新作の俳句を発表します。毎週5句発表です。

惑星や公魚釣を止めないで
公魚の天にぽかりと人の顔
公魚の天ぷら南十字星
足音の止んでみんなと居る干潟
鳩舎さへなければふつう春の夢

 「公魚」は、わかさぎ、と読み、湖の妖精と呼ばれる淡水魚のワカサギのことである。江戸時代の将軍家へ年貢として献上され、「公儀御用魚」(将軍家御用達の魚)であったことからこの漢字を当てた(当て字)という説がある。

今では全国的にも「公魚」という字が当てられていますが,由来は霞ヶ浦北浦にあると言われています。
 江戸時代,麻生藩の藩主新庄直好が,時の将軍徳川家光に焼きわかさぎを献上したところ大変喜び,以来献上が続けられ,将軍家御用達の魚,御公儀の魚,ということから「公魚」と書くようになったと言われています。わかさぎ漁は藩が深く関わって行われ,この地域では重要な経済的価値を持っていました。
 なお,「茨城県の淡水の魚」にも選定され,大正時代以降移植のため他の湖や中国などに卵を出荷していました。
(麻生町史編さん委員会「麻生町史通史編」,麻生町郷土文化研究会「麻生の文化」など)

霞ヶ浦北浦水産振興協議会HPより

 私がワカサギ釣りを体験したのはそんな茨城県ではなく、北海道の網走湖。「水温、塩分の適応範囲が広く濁りにも強いため、北海道各地の湖や川に生息しており、もともとワカサギがいなかった阿寒湖、洞爺湖などにも、網走湖や涛沸湖から卵が移殖され新しい漁業資源となりました。」(北海道HP)
 道内一の漁獲量を誇る網走湖では、氷結した湖面に穴を開け、氷の下で網を引く「氷下ひき網漁業」が冬の風物詩になっている。ワカサギ釣りはまず、アイスドリルと呼ばれる道具を使って氷上に穴をあけるところから始まる。

アイスドリル

 上写真右寄りの、湾曲したバーに見えるこれが穴をあける道具。片手でバーの上部を握りながら、もう一方の手で湾曲した部分のグリップを握って先端をクルクルと回していく。

アイスドリル

 コツはドリルを氷に対してまっすぐに、垂直をキープすること。軸がブレると下へ向かって掘り進まないので、ブレないことを意識する。非力であってもなんとかなるが、ずらさないようまっすぐに、が、けっこう難しい。

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 でも大丈夫。観光客には係の人が掘った完璧な穴が用意されている。そして滞りなく穴釣りがスタート。風が無ければ露天で釣ることもできるし、そうでなければテントを設営する。

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 中はこんな感じ。

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 始める前に釣り方のコツを伝授された。釣り糸には複数本の毛バリが枝状に付いており、その針先に餌を刺して穴に垂らす。氷上穴釣りシーズンのワカサギは、湖の底近くを回遊する傾向があり、なのでまず釣り糸の先のオモリが水底に当たるのを確かめる。次に、仕掛けを小刻みに上下動させてワカサギの興味を引き、先端部がわずかに揺れる変化を見逃さずに、食いついたところを釣り上げる。

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 毛バリにつける餌は、通称「ラビット」と呼ばれ、文字通りウサギの糞で養殖される、うーまぁ、蛆虫ですわ。私はこれがかなり得意ではない。しかし穴釣り場まで来て今さら触れないなど言っても通らない。よって係のお兄さんが見回りにくるたびに「なんか釣り糸の調子が悪くて」だの、「やり方が下手で」だの、理由を変えては声をかけ、いかにもそのついでのように餌を付けてもらっていたことは、自分だけが知る恥である。

待つ。  

 ワカサギに限らず釣りに誘われる機会はこれまでに何度かあった。なので真似事レベルではあるが、その面白さはわかる気がする。魚の動きを察知する鋭敏な神経、そのパターンを分析する思考、集中を保つ持久力等々、総力をあげて取り組まないと魚は釣り糸にかからない。頭を使うから、座る見た目に反して釣人は忙しい。私が釣りを趣味としないのは、察知ならできるし、ずっと座っているのも苦ではないのだが、魚の行動パターンを分析する能力が低くて釣れないからである。理由がわかっているのだから改善の見込みはあるのかもしれないが、脳の体力のようなものが低くてすぐに集中を欠き、要は向いていない。その特徴はゑひというこのユニットの役割分担にも反映されており、上原の分担は十七文字以内でよいということになっている。

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 私の楽しみはもっぱら、私以外の人がたくさん釣ってくれたワカサギを、現場で揚げる終盤だ。塩を振っただけのワカサギの天ぷら。最高である。

氷上で揚げるワカサギの天ぷら(イメージ)


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