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月刊 俳句ゑひ 皐月号〈増刊号・言葉の解説〉

ゑひ[酔]のホームページ及びnoteで発表した、月刊俳句ゑひ 皐月号の俳句の言葉解説記事です。各作品に分けて順に説明していきます。

月刊俳句ゑひ 皐月(5月)号はこちらから


『形から』(作:上原ゑみ)の言葉

まる

読み方が難しいため取り上げています。ちなみにクロスワードが日本に入ってきた時、「め字」と呼ばれていたそうです。

なつうみ

俳句の世界では、「湖」一字で「みずうみ」と読むことがあります。明らかに字数が足りないなというときは、「うみ」と読むと語調が整うことがあります。「北のうみ」という横綱もいましたが、恐らく出身地近くの洞爺湖とうやこに由来していると思われます。

螢袋ほたるぶくろ 〈季語〉

植物の名前です。俳句では特にその花を指します。釣り鐘状の下向きの花の形が特徴です。Wikipediaには「子どもがこのような形状の花にホタルを入れて遊んだから」という由来が紹介されていますが、実際はどうなのでしょうか?

蛍袋

りん

ここでは鬼火おにび狐火きつねび、火の玉のこと。人間の霊や怨念の化けた姿だと言われています。ちなみに鬼火の一種とされる狐火は冬の季語です。元素記号P、原子番号14番の方のリンはこれにちなんで命名されたようです。

ただより 〈旧仮名遣い〉

上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「漂っている」と解釈します。

石楠花しゃくなげ 〈季語〉

シャクナゲ

植物の名前です。俳句では特にその花を指して季語とします。ツツジ科の植物で、つつじの花が集合したような形をしています。季語としては難読の部類に入りそうです。

バードウィーク 〈季語〉

「愛鳥週間」という季語と同じ意味を持っています。別コーナー「ゑひの歳時記」で取り上げます。詳しくご紹介しますので、是非そちらをお読みください。

おも 〈旧仮名遣い〉

上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「思う」と解釈します。

ち 〈旧仮名遣い〉

上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「あっち・あちら」と解釈します。

菖蒲田しょうぶだ 〈季語〉

菖蒲しょうぶの花がたくさん植えてある田んぼのことです。一般的に、田んぼと畑は生育に必要な水量で分けられていますが、菖蒲の場合は水の多い環境で育てられるため、「田」とされていると考えられます。菖蒲は、端午の節句に合わせて菖蒲湯に入る文化でよく知られていますね。薬草のような匂いが特徴的です。

菖蒲田(イメージ)

うに 〈旧仮名遣い〉

上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「~のように」と解釈します。

卯波うなみ 〈季語〉

卯の花が咲く頃に海に立つ波のこと。「卯の花」はウツギの花のことです。5月ごろに白い花が咲くので、これにちなんでおから料理が命名されているようです。波とウツギの花が一語になっているのは少し不思議な気がしますが、「なみはな」という季語があることを考えると、しらじらとした波の印象を思い浮かべられるフレーズとして納得できます。

(疲れて)しま 〈旧仮名遣い〉

上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「(疲れて)しまって」と解釈します。

閉づとずる 〈旧仮名遣い〉

上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「閉じる」と解釈します。

こい

恋の熱が冷めること。造語かと思いきや、平安時代からある言葉のようです。「さめる」には「冷」「覚」「醒」の字がありますが、この字を使うと、恋をしていて夢うつつだったところから、はっきりした意識に戻ってきた、という印象がありますね。現在は「恋冷め」が一般的かもしれませんが、これだととても悲しい……

上蔟じょうぞく〈季語〉

別コーナー「ゑひの歳時記」で取り上げます。詳しくご紹介しますので、是非そちらをお読みください。

のぼう〈旧仮名遣い〉

上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「登ろう」と解釈します。

登ろうとしているカイコ

猫絵ねこえ蛇絵へびえ

そのまま猫の絵と蛇の絵のこと。「猫絵」と「蛇絵」という二単語が連続していますがそれぞれ別です。ただし項目としては合わせて取り上げました。別コーナー「ゑひの歳時記」で「上蔟」を取り上げます。この中で詳しくご紹介しますので、是非そちらをお読みください。

生繭なままゆ〈季語〉

さなぎの中が生きている繭のこと。「夏の蚕五句」に出てくる特徴的な言葉については、今週発表の「ゑひの歳時記」をご参照ください。

『無題2』(作:若洲至)の言葉

くれはる 〈季語〉

春の終わりのことで、晩春と近い意味を持ちます。紛らわしいですが、春の夕暮れのことを指す「春の暮」とは異なります。「晩春」と比べると、身体感覚的に春の終わりを捉えているような印象があります。夕暮れのことでは必ずしもありませんが、この季語を使うと、なぜか空が少し赤い夕暮れのような情景が思い浮かびます。

月蝕げっしょく

月・地球・太陽がほぼ一直線上に並び、月が地球の陰に隠れる天文現象のこと。常用漢字で「月食」と書くことが一般的ですが、「むしばむ」という字を使うと、じわじわと月が小さくなっていくような感じがします。

山葵田わさびだ 〈季語〉

わさびの育つ田んぼのこと。菖蒲田と同様、水を豊かに使っているのが特徴です。日本最大級の山葵田がある安曇野の大王わさび農場が有名かもしれません。恐らく山葵田の規模はさまざまで、下のように大規模なところもあれば、小さな沢を工夫して使っているようなところもあります。こちらの句からはどちらが思い浮かびますか? あるいはどちらも思い浮かびますか?

大王わさび農場(長野県安曇野市)

鳳蝶あげはちょう 〈季語〉

大きな蝶の代表格ですね。季語としては、アゲハのような大きな蝶をまとめて、夏蝶なつちょうということもあります。「蝶」だけだと春の季語です。「秋の蝶」「冬の蝶」という季語もあります。

持つもって 〈旧仮名遣い〉

上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「持って」と解釈します。

やぶがさ 〈季語〉

破れた傘そのものではなく、「ヤブレガサ」という植物の名前です。山菜として若い芽が食用にされていますが、穴の空いた和傘に似ていることが名前の由来です。えぐ味も少なく、どちらかといえば食べやすい味だった記憶があります。俳句では、この季語の面白い語感を活かして作ることが多いです。

て 《旧仮名遣い》

上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「いて」と解釈します。

ボルボ

スウェーデン発祥の自動車ブランド。句の中では、その車のことを指しています。ボルボ・カーには角ばっていてがっしりした作りのイメージがあるでしょうか? ボルボといえば私はこのコントが思い浮かびます。

エン

「エンジン」のこと。「ヂ」は今では「ジ」で表されるためほぼ使われませんが、「ディ」の音を表わすのにも使われていました。「ビルヂング」が有名ですね。

傘雨さんう 〈季語〉

久保田万太郎くぼたまんたろうという俳人の忌日(亡くなった日)を意味する季語です。万太郎が「傘雨」という言葉を雅号(良い意味を持った二つ名)として使っていたことにちなみます。単に「万太郎忌」という季語もあります。

四十雀しじゅうから 〈季語〉

街でよく見かける鳥の一つ。スズメくらいの大きさで、頬が白く、胸に黒いラインと淡い緑色が入っているのが特徴です。鳴き声は「ツーツーピー」などと表現されることが多いですが、複数パターンの鳴き声を組み合わせた「文」や「文法」を理解できる鳥ではないか、と近年注目されています。

(参考:https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2017-07-28

愛鳥週間あいちょうしゅうかん 〈季語〉

別コーナー「ゑひの歳時記」で取り上げます。詳しくご紹介しますので、是非そちらをお読みください。

土鳩どばと

街で見かけるもっとも一般的な鳩。人の近くに生息することから昔から「塔鳩」「堂鳩」などと呼ばれてきました。鳥好きとしては特段の感情を持っていなかったのですが、極めて苦手という人もいることを最近知りました。

アンダンテ〔伊:andante〕

演奏する速度を指定する音楽記号の一つ。イタリア語ですが、日本語では「歩くような速さで」と訳すことが多いようです。英語の "walking" に相当する単語です。

ひら

意味は「開く」などと同じですが、閉じてあるものを広げるという印象があります。「展示」「出展」などのイメージが近いですが、蝶を飾るときに行う「展翅てんし」のようにゆっくりと広げていくような印象も重なります。

更衣ころもがえ 〈季語〉

更衣室の「更衣」で「ころもがえ」と読みます。季語としては、冬→夏に替えることのみを示します。なお、夏→冬の衣替えを示すには「のちの更衣」という季語を使います。ところで、高校などの古文の授業で、源氏物語の登場人物として出てくる「桐壺きりつぼ更衣こうい」などの「更衣」は、女官の位を示し、天皇の着替えなどを手伝っていたことに由来します。

実桜みざくら 〈季語〉

桜の木が、花を咲かせた後につける実のこと。桜の品種としてはソメイヨシノが多いため、通常はこの実を示していると考えて良いでしょう。ソメイヨシノはまれに実を付けますが、小さく食用にはなりません。「さくらんぼ」とは異なります(さくらんぼという季語もあります)。

花腐はなくたし 〈季語〉

「卯の花」はウツギの花のこと(このページの「卯波」も参照)。その白い花を腐らせてしまうかのような、5月頃の長雨のことを指します。「腐」という字を使っていますが、マイナスな印象の弱い美しい季語だと思います。

聖五月せいごがつ 〈季語〉

キリスト教カトリックの文化で、5月を聖母マリアを敬う月としていることに由来する季語です。戦前に生まれた季語ですが、積極的に使われるようになったのは戦後のこと。もちろんカトリックの文化を踏まえて詠むことが多いでしょうが、語感の美しさ、五月の爽やかな印象もまた思い浮かぶ季語ですね。

と 〈旧仮名遣い〉

上原・若洲とも旧仮名遣いを使って俳句を作っています。この表記でふりがなの通り読み、「ふっと」と解釈します。

関連リンク

月刊俳句ゑひ 皐月(5月)号

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