ディミーアからエスパーへ~晴れ名古屋プレミアム予選抜け~
はじめに
2024年2月24日に晴れる屋名古屋店で行われた、アジアチャンピオンズカッププレミアム予選。
私ei-ooは僭越ながら、ファイナルの権利を得ることができました。
私自身はSEASON2サイクル1にてファイナルに初出場するも4-3で初日抜けかなわず悔し涙を飲んだ。
リベンジをと意気込んだモダンでのサイクル2エリア予選に挑むも5回挑戦して権利獲得叶わず、
今回のスタンダードシーズンこそはという思いで調整していた。
また、プレイヤーズコンベンションにて行われたスタンダードオープンでは7-3の賞金圏外である34位という惜しい結果に終わった。
今回、望外の成績を残すに至り、調整過程や大会で得た知見を残すことで、自分自身の考えを整理し上達することを目的として今回記事を書かせていただきました。この記事の中で、皆さんの気付きになる部分があれば幸いです。
1 環境初期に握ったディミーアミッドレンジ
プレイヤーズコンベンションの二日前に発売されたカルロフ邸殺人事件、そこに採録された綺羅星のごときパワーカード達。
《世慣れた見張り、デルニー》、《稲妻のらせん》、《喝破》。
私がその中で一際目を引かれたのが《謎めいた外套》であった。
3マナ3/2ブロックされない護法2に何度でも繰り返し場に降臨し続けるこのカードは青系のビートダウンにかなりの強化をもたらすと考えた。そこで考え付いたデッキが、先述の横浜スタンダードオープンで使用したディミーアミッドレンジである。
このデッキは2マナ域にある強力なクリーチャー、《大洞窟のコウモリ》と《フェアリーの黒幕》、2種8枚の飛行クリーチャーを擁する。
この2枚は回避能力を持ちつつ相手を妨害し自身のドローを向上させる。
所謂《地底のスクーナー船》のプランに《謎めいた外套》のクロック補強。そして《ヨーグモスの法務官、ギックス》によるドロー加速。
大会ではそれなりの勢力になっていたデッキである。
既存のリストに比べて《遠眼鏡のセイレーン》を不採用にしているため、1ターン目から果敢に攻めることができなくなっていたが、その分単体のカードパワーが高く、回していてそれなりに感触も良かった。
ランプやコントロールには特に強く、ラクドスやゴルガリといった黒系のデッキにもキーカードである《黙示録、シェオルドレッド》を守れアクセスがしやすい点で当たり負けにくい。
だが、このデッキには欠陥があった。
現在、環境トップであるエスパーミッドレンジ、ボロス召集。そのどちらにも相性が悪かったのである。
エスパーミッドレンジは白を採用している点でデッキのパワーが上がっており、《婚礼の発表》や《忠義の徳目》によりサイズアップされると手が付けられない。
ボロス召集に大しては多くのカードがタフネス1であり、パワーアップしていないトークンにすら相打ちという有様であった。
もちろん友好2色による安定感から、相手のマナトラブルに乗じ勝ちを拾う場面もあるものの、この2種類のデッキには構造的に不利でありこれ以上使っていても大きな勝ちは見込めないと判断した。
《遠眼鏡のセイレーン》入りを試したものの、ボロス召集相手に真っ向からライフレースを挑むことになる点が気にかかった。
横浜翌週に参加した店舗予選の参加者の半数がボロス召集及びナヤ召集だったこともあり、このデッキはひとまず断念することになった。
2 ディミーアからエスパーに転向、そして疑問
エスパーミッドレンジを組み、店舗予選やアリーナのランクマッチをこなしていくものの、使用していくにつれてある疑念を持った。
(……これ、先手ゲーじゃね?)
エスパーミッドレンジの核となるカードは、《策謀の予見者、ラフィーン》である。
このカードの能力が攻撃時の誘発である関係で、先に攻撃できる先手側が圧倒的に優位。
言ってみれば誰でも分かることであり、同時に仕方ないことでもある。
MTG、というかカードゲームは基本的に先手側が有利であり、だからこそ後手時にワンドローができるというアドバンテージが決められているのだから。
またラフィーン以外の3マナ域である《婚礼の発表》や《分派の説教者》、《ヨーグモスの法務官、ギックス》についても基本的には先手側にバリューのあるカードである。
そこで、私が所属するディスコードサーバーで構築の相談をした所、アドバイスを頂いたのが、のざらし氏である。
彼は先述の横浜オープンでエスパーミッドレンジを駆りベスト8に名を連ねた、言わばエスパーのプロである。そんな彼に教えて貰ったのが《婚礼の発表》を抜くことであった。
ラフィーンや《分派の説教者》についてはタフネス4と護法や接死により場持ちもよく後手でも強いが、後手番の《婚礼の発表》は3ターン目に1/1 がでるだけでボロスや同型相手に致命的である。
《婚礼の発表》4枚を固定化して考えていた自分には青天の霹靂であった。自分一人ではとても考え付かなかっただろう。
さらに世界選手権で上位入賞した実績を持つ@sgk_mtg氏とのざらし氏が頻繁にサーバー内で意見を交わしてくれて、議論を聴いているだけで勉強になった。
また、大会で@sgk_mtgと当たりエスパー同型でボコボコにされるうちに、エスパー同型で自分が先手番の時に後手側に負けるパターンが見えてきた。3ターン目の動きを2マナでキレイに返されたときである。
先手のラフィーンや《分派の説教者》を打ち消される。あるいはコウモリで抜かれる。このパターンが起きると盤面の膠着やドロー不全が起き、後手の1ドローのアドバンテージが活かせる。
言ってみればマジックの基礎的な部分であるが、とても大事なことだと痛感した。
3 完成したリスト
そうやってできたのが下記のリストである。
このリストは婚礼の非採用の他に意識した部分がある。
それが1~2マナアクションの増加である。
エスパー同型での負けパターンが先ほど言ったラフィーンの定着であるから、後手番で返すことのできる打ち消しや除去は多い。最低でもコウモリを着地させハンデス出来るように20枚(《忠義の徳目》の出来事面を含む)。
しかし、同型とはいえ相手がいかなる時も3マナキープが出来ているとは限らない。
相手側が3ターン目に動けない時にこちらがクロックを置きラフィーンの謀議を誘発できれば形成を逆転できるチャンスである。
そこで相手の動向を見ながらクロックを設置できる《忠義の徳目》が4枚採用してある。
コントロールやドメインランプを見るのであれば《フェアリーの黒幕》でも可だが、赤系アグロの増加を見込んでタフネス2であることを優先した。
4 プレミアム予選結果
スイスラウンド6回戦。のちに上位8名によるSE2回戦。
R1 アゾリウスアーティファクト
《大洞窟のコウモリ》から相手の手札を見る。
見慣れない英語のアーティファクトがある。白ダブルシンボルの5マナ。
(ああ、何だっけ? 2体追放するアーティファクトだっけ? 展開しまくれば勝てるかな?)
盤面を更地にされすばやく2ゲーム目へ向かう。
サイド2本取って勝ち。
反省点として、ちゃんとテキストを確認すること、分からなかったら対戦相手やジャッジに聞くこと、あまり大会前日に調整して寝不足でいかないこと、初戦でも緊張しすぎないことなどが挙げられる。猛省。
R2 ゴルガリミッドレンジ
G3ハンドに《ギックスの命令》があるのに5枚目の土地をタップインせずに《蜘蛛網の頭、アイゾーニ》がでて死にかける。
ライフ3の状態で相手の場にシェオル出てきて、こちらの場にラフィーンが出てて(これ殴れなくね?)ってなるも除去トップで勝ち。猛省。
2マッチ連続の勝敗に関わるプレイミスに相当落ち込むも、会場の友人(まるさん)に話しまくってメンタルリセットする。
R3 リアニメイト
コウモリからのラフィーンを出してカウンターで蓋するを2回して勝ち。
クロックパーミこそ最強。
このマッチはデニックの存在もあり、相性はかなり良く感じた。
R4 ボロス人間
なんかデルニーから《粗暴な聖戦士》2回誘発とか無茶苦茶やられて負け。
サイド後はサリアゲーされて負け。完敗。
R5 アゾリウスコントロール
前日の店舗大会で完敗を喫している。
私は彼を東海随一のプレイヤーだと思っているが、相手のこれまでの当たりがファイナル進出者やプロツアー参加者ばかりで気の毒になった。
このマッチは除去と《黙示録、シェオルドレッド》計8枚を抜いてハンデスと《軽蔑的な一撃》《邪悪を打ち砕く》を全て入れる。
記憶の氾濫をフラッシュバックされようが、謎めいた外套を出し入れしてたら勝った。やはりこのカードのパワーは高く、一枚でゲームを決することができると再確認した。
R6 ボロス召集
以前ドラフトをご一緒させていただき色々教えていただいた方。
ドラフトが上手い人は構築もうまいことが多い。
勝ち点12点が多すぎてIDできず。しぶしぶの対戦。
メインは相手のブン回りからの全体強化で死亡するも、それは想定済み。
サイドはシェオルドレッドやアーテイなどの重めのパーツ、《謎めいた外套》計6枚を減らし、《切り崩し》、《強迫》1枚、《悪意ある覆い隠し》、《ギックスの命令》を投入。相手の序盤の猛攻を凌ぎ切り返すプラン。
サイド1本目、相手の事故に乗じデニックをラフィーンで強化。
相手はデニックを除去し、ライフゲインを許さない。
さらに土地を引きこみ《ウラブラスクの溶鉱炉》をキャスト。
徳目の騎士トークンとダメージレースになるものの、忠義の徳目が着地した後は流石にこちらの速度に軍配が上がった。
慌てて自分は第三の道のロランを2枚追加した。
サイド2本目
《悪意ある追放》で一度流した後、《ウラブラスクの溶鉱炉》をロランで返し、除去の応酬になるも、《忠義の徳目》により強化された騎士トークンが着実に相手の盤面を削り、最後は《ギックスの命令》が決着をつけた。
2位抜け。
SE1 エスパーミッドレンジ
メイン先手押し付けで勝ち。
サイド後は《分派の説教者》を《喉首狙い》して、ラフィーンポン置きからハンド回して勝ち。
SE2 エスパーミッドレンジ
メイン先手押し付け。
サイド後は相手も《大洞窟のコウモリ》でこちらの《喉首狙い》を追放、《漆月魁渡》、《分派の説教者》をブロッカーに追加してマウントを取りに来る。
しかしこちらも白徳目から、ラフィーン。《喉首狙い》で《分派の説教者》を除去すると理想の動きをする。
その後はこちらはラフィーンが《ティシャーナの潮縛り》で能力を失うも、すでに3/6に成長しており、《放浪皇》の先制攻撃付与で相手のブロック計算を崩す。返しに相手は《大洞窟のコウモリ》を2体展開、虎の子の《黙示録、シェオルドレッド》《ギックスの命令》を追放する。
それでもラフィーンが謀議を繰り返して除去を引きこみ、《ギックスの命令》を追放しているコウモリを破壊、パワー2以下破壊のモードを撃ち込むと相手の盤面は空になり、こちらの手札に《喉首狙い》と《黙示録、シェオルドレッド》が戻るのを見た相手は投了を宣言した。
5 反省とこれから
R1R2で凄絶なプレミ酷すぎる。 これでも権利獲得できるんだぜ?
今後はしっかりとした環境把握と、セットランド一つも気を遣う姿勢を身に着けたい。
後半はメタを貼っていた青白コン、ボロス召集、同型と立て続けに勝ち、悪くない。
同型の後手でまくるために下手にカウンターを減らさなかったのも良かったと思う。結果同型の後手番で2回とも勝ち、狙い通りの結果になった。
全体的に全てが噛み合っただけの日でした。たくさんプレイミスをしたものの、デッキ構築が納得いく仕上がりだったので、なんとか勝ちを拾えた。
自分の中で打ち出したメタゲームに対する考えが、今回は上手くハマったことで良いデッキ選択につながったことと、意識した対戦相手に対するゲームプランを構築段階から明確にしたレシピにすることで、土壇場でのプレイやサイドボーディングに活きた。
今後はファイナルに向けての調整になるが、リミテッド東海王・パイオニア東海王・スタンダード東海王と立て続けにあるので、王を目指して頑張ります。
今後はデッキ構築だけでなく、プレイングをしっかりと磨いていきます。
そして親愛なるメンバーへフィードバックできるよう精進していきます。
お読みいただきありがとうございました。本選でお会いしましょう!
6 補足
https://twitter.com/MTGdecks/status/1762195553406919152?t=Wv5CvqMGAoRT0EUyoSSrOA&s=33
この記事を書いて、自分が所属するディスコードサーバーメンバーに共有したところ、@sgk_mtg氏から上のマトリクスを共有してもらった。
プロツアーシカゴのサイドイベントであるスタンダードオープンなどのデータであるが、Dimir Midrangeの欄を見て欲しい。
見ると、なんとディミーアミッドレンジがエスパーミッドレンジにもボロス召集にも勝ち越しているではないか!?
「ディミーアミッドレンジはボロス召集とエスパーミッドレンジに勝てない」というのは私の勘違いで、ディミーアミッドレンジをそのまま調整してても勝てたかもしれない。
勿論試行回数の少なさや構築によっても違うのでここで結論付けるのは早計かもしれない。
自分でもまたディミーアミッドレンジを回してみて、判断しようと思う。
とにかく自分一人で調整していると、間違いを間違いのまま世間に発表してしまっていたかもしれない。持つべきものは友達である。