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『五輪2連覇!王者の走り』エリウド・キプチョゲ
今回、東京五輪男子マラソンを現地札幌で応援することに決めた理由は、二つありました。
一つは、10年来応援して来た大迫傑選手の引退レースをこの目で見届けるため。そして、もう一つは、マラソン界の絶対王者、エリウド・キプチョゲ選手の走りを実際に見たかったからです。
キプチョゲ選手のレース結果は、皆さんもご承知の通り、圧倒的な力の差を見せつけた、まさに『王者の走り』で、五輪2連覇を達成しました。
キプチョゲ選手の強さは、心技体のそれぞれの面で卓越している点にあります。
まず、心の面ですが、彼は、自分がコントロール出来る部分にだけ、しっかりとフォーカスし、コントロール出来ない部分には、自然の流れに任すというか、逆らわない姿勢を取っている印象を持ちます。
それにより、彼の周辺の空気感は、ゆったりとした時間が流れている感じで、『揺るぎない』という言葉がぴったりな雰囲気を醸し出しています。
よって、彼の周りには自然と人が集まって来ますし、五輪のようなビッグレースでも、自分の力を十分に発揮出来る精神状態を作れるのだと思います。
次に、技術の部分ですが、とにかく、ランニングフォームが綺麗の一言です。ランニングという行為は、前方方向に進み続ける物理運動ですが、その為に不要な動きがほとんど無い、まさに『完璧な』ランニングフォームです。
具体的には、適度な前傾を伴う、効率的な動きを実現するランニング姿勢が、終始変わらない点が、一番の特長だと考えます。今回、現地で計3回、彼の走る姿を間近で見ましたが、同じ姿勢で、水面をすーと滑るように走る、そんな印象を持ちました。
あとは、身体全体のバランスが良いこと。それは、上半身の腕振りと下半身の脚の動きに無駄が無く、前に進む力を継続的に生み出していることにあります。
腕振りは、八の字を描くようなポジションで、力みの無い状態で、安定して振られ続け、脚の動きは、足裏全体で滑らかに接地して、次の瞬間、スッと後方に移動し、また次の瞬間、前に振り戻される、全体的に見ると楕円を描くような、半永久的な動きをしている様に見えます。
更に、キプチョゲ選手の凄さは、その滑らかな動きが、トラックレースのような速い動きの際にも変わらないこと。以下の動画を見て頂ければ、実感して頂けると思いますが、マラソンに転向する前に、しっかり、トラックレースでも実績を重ねて来たキプチョゲ選手の強さの所以の一つになっています。
最後に、体の部分ですが、トレーニングにおいて、かなりの時間をフィジカル的なトレーニングに費やしています。大迫選手もそうですが、補強というよりも、一つのトレーニングとして重視して、継続的に日々のトレーニングに組み込んでいる点が、彼の安定した走りにつながっています。
また、トレーニング環境の良さも挙げられます。彼の練習拠点であるケニア・イテンは、標高が2千メートル超で、日常的に高地トレーニングを行っている状況になっていること、レベルの高いチームメイトと切磋琢磨出来る環境にあることが、彼の超人的な強さを形作っていると言えます。
以上、キプチョゲ選手の『王者の走り』の所以について、私の考えを述べさせて頂きましたが、彼の完璧な走りを見ていると、神様が彼に『走りの伝道師』としての役割を与え、彼が、その役割を地道に全うしているように思えてなりません。
今後、キプチョゲ選手が、更に現役を続けるかどうかは分かりませんが、少しでも長く、彼の伝説的な走りを見たいと、切に思っています。