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ショートショート「苦悩する二宮金次郎像」
タイトル:苦悩する二宮金次郎像
作:絵本と砂の部屋(made with AI)
私は、小学校の校庭に立つ二宮金次郎像だ。
かれこれ百年以上、ここで子供たちの成長を見守ってきた。
しかし、最近になって、私の学校の仲間たちが次々と撤去されている。
「歩きながら本を読むのは危険だ」とか、
「もうそんな時代じゃない。」とか、
様々な理由をつけられ、ある者は倉庫へ、ある者はどこかの廃棄場へ運ばれていった。
つい先月、隣の学区にある小学校にあった二宮金次郎像も撤去された。
彼とは長年、お互いに風雨に耐えてきた仲だった。最後に会ったとき、彼は「お前も気をつけろよ!」と言って、クレーンに吊り上げられていった。
次は、絶対に私の番に違いない。
二宮金次郎像には、もう存在価値は無くなったのだろうか。どうすれば生き残れるのか?私は焦り、考えた。考え続けた。何とかして、ここに残らなければならない。
そして、思いついたのは「イメチェン」だ。
そうだ、時代に合わせて進化すればいいのだ。
私は自らの姿を変えることを決意した。まず、背中の薪を捨て、リュックサックを背負った。そして、タブレットを手に持ってみる。
これなら、「デジタル時代に対応した二宮金次郎」として認められるかもしれない。さらに、服装も現代風のジャケットに変え、お洒落な銀縁の眼鏡をかけてみた。まさに、GIGAスクール時代の小学生像だ。
「よし、これならいける!」。
私は確信した。
私は夜、校庭を歩きながら、かつての子供たちの笑い声を思い出した。彼らが私を見上げ、憧れを抱いていた、そんな時代は過ぎ去ってしまったのだろうか。それとも、彼らの記憶の片隅には、まだ私の存在が残っているのだろうか。そう考えると、少しだけ寂しさを感じた。
そして迎えた校長先生の視察の日、私はドキドキしながら待っていた。校長は像を見て、少し驚いたようだったが、特に何も言わずに去っていった。少し苦笑いをしたように見えたのは、たぶん気のせいだろう。
だが、数日後、私は校庭を歩いている子供たちの会話が耳に入った。
「この像、変じゃね?」
「歩きスマホしてるみたい。」
「それダメじゃん、危なくない?」
「こんなの、もう撤去したらいいのに?」
そして数日後、私はトラックに乗せられ、運び出されてしまった。
私は、他の仲間と同じように、廃棄されることを覚悟した。しかし、運び込まれたのは、意外な場所だった。
そこは、都心にある大きな駅の構内。一日中、たくさんの人が行き来する場所だった。
そこで、私は、新たな使命を与えられた。
大人たちに歩きスマホを注意する看板としての……。