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ショートショート「トイレの花子さん」
タイトル:トイレの花子さん
作:絵本と砂の部屋(made with AI)
この小学校には、昔から「トイレの花子さん」が棲んでいると言われている。
いつからか、誰が言い出したのかは分からない。だが、その噂は代々受け継がれ、三階の女子トイレの奥から三番目の個室は、恐れられていた。
「日暮れにノックをすると、返事があるんだって」
子どもたちは怖がりながらも、興味本位で試す者が、後を絶たなかった。しかし、実際に花子さんを見たという者はいない。
だからこそ、ただの作り話なのだろうと、先生たち大人は笑っていた。
ある日、五年生の春香が亡くなった。
体育館のステージ裏で発見されたが、死因は心臓麻痺。事件性もなく、警察は早々に引き上げた。
「春香が、次の花子さんになるんじゃない?」
誰かが冗談めかして言ったその言葉に、教室が静まり返った。
都市伝説には、「小学校で亡くなった女子生徒が、次の花子さんになる」とある。
まさか——いや、そんなはずはない。
それでも、三階のトイレに近づく者は、いなくなった。
それから数週間後——。
「ねえ、聞いた?昨晩、誰かが2階のトイレをノックしたんだって」
「……で、どうなったの?」
「返事があったらしいよ。『……ここにいるよ』って」
一瞬、教室の空気が張り詰めた。
「嘘だ!誰かのいたずらだろ!」
「そうだよ!そんなのありえない!」
だが、ノックした子は震えながら言った。
「だって……声が……春香だったもん……」
誰もが背筋を凍らせた。
それから、学校で奇妙なことが起こり始めた。
誰もいないはずのトイレから水が流れる音が聞こえたり、夕方に個室の鍵が勝手にカチャリと閉まる音がしたり。
そして、半年後——。六年生の美咲が亡くなった。
学校の非常階段から落ちたのだ。誰も見ていないところで、まるで何かに引き込まれるように。そして、新しい噂が広がった。
「花子さんは、一人じゃない」
「むしろ……増えてるんだって」
そしてある晩、校長が1階のトイレの個室を覗いた。
中には、少女が佇んでいた。
「あなた……こんな時間にどうしたの?」
少女はゆっくりと顔を上げた。
「……ここにいるよ」
今日も、校舎のどこからか、微かにノックの音が響く。
——コン、コン、コン……と。
そして、またひとり…