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「不安」感と付き合う方法を教えてくれる絵本 |『あんしんゲット!の絵本 ふあんくんのきもち』を紹介します。

絵本紹介士のkokoroです。幼い頃から読書が好きで、大学は児童文学科で学びました。同時に、心のこと、スピリチュアルなことにも、とても関心を持っています。このnoteでは、そういう観点から心惹かれる絵本を選び、お話の中の気付きやメッセージを読み解いています。

私は“絵本紹介士”として色んな絵本を紹介しています。
その絵本を紹介することで、どういうところが心がラクになるのかなどを伝え、そして実際に読んでもらって、落ち込んでいる人や辛い気持ちにいる人が、心がラクになったり、元気や勇気を出してもらえることを目指しています。

それでは、今回の絵本を紹介していきましょう。

この絵本は子どもの認知行動療法を主題に描かれています。
また、タイトルにも「子どものための」とあります。
でも、大人にも響きます!そう思ってこの絵本を選びました。

☆「認知行動療法」について

「認知行動療法」とは「認知」=ものの考え方・受け取り方や行動を客観的に見直し、変えていくことで気持ちをラクにして生きやすくする療法です。

自分の考えていることって、長年自分の生育環境や経験から得た思考で身についてしまっている。頭の中のことは自分だけのことだから、当たり前になってしまっています。それが自分を追い詰めているかも、なんてことはわからない。何をどう変えたらいいのかもわからない。

例えば、ラインで友達に連絡するとします。すると、既読は付きましたが、一日経っても返事が来ない。
その時に感じる考え方は人それぞれ。①ある人は「既読スルー?なんで返事来ないの?」とちょっと怒る。②ある人は「あ、読んでくれた。また返事くれるだろう。忙しいもんね」と考えて返事を待ってみる。③ある人は「返事したくないから返事しないんだ。私、嫌われてるのかな」と考える。すると悲しくなってしまう。

と今考えただけでも3パターンあります。他にも色んな受け取り方があるでしょう。

結局はこういう時は連絡をもらった人はとりあえず内容を見て、後で返事しようと思っているだけ、ということが多い。バタバタしているとうっかり忘れてしまっていることも。
次の日に思い出して「あ、そうそう、〇〇ちゃんからライン来てたんだった、返事しなくちゃね」と考えて返事する、ということが本当のことかなと思ったりします。

人には色々事情がある。他のことができないほど忙しい日だってある。うっかりすることだってある。そもそも連絡を取るくらいの関係の人を簡単に嫌ったりしない。
そういうことがわかると②寄りの考え方になっていく。

そして、①や③で怒ったり、落ち込んでいて何も手につかなかったところを、気持ちを切り替えて、自分のやるべきことをする、とか自分の好きなことをする、という行動を取っていく。というのが「認知行動療法」だと私は解釈しています。

そういうことを下敷きにして、主人公の女の子が「不安」感をどうやって行動して小さくしていったか

を描いています。

この絵本のテーマについて・・

あなたは何か「不安」なことがありますか?「全くないです!」と言う方もおられるかもしれませんが、大抵の人が「あります」と答えるのではないでしょうか?

私もあります。いつも「不安」な気持ちが多かれ少なかれあります。
その「不安」がはっきりしている時はそのことについて対処します。でも、できないこともあります。そんな時はそのままにしたり、ちょっと遠くへ追いやったりしてしまいます。

だけど、その「不安感」はなくなりません。

このちょっとやっかいな「不安感」と上手く付き合えたら・・もっとラクになるのではないでしょうか。

このお話はまさにその「不安」な気持ちに対してどう向き合っていくか、ということが描かれた絵本です。
「こどものための認知行動療法プレジェクト」に沿って作られたもので、以前にも、同じシリーズのものを取り上げたことがあります。

こちら→


この絵本を読むと、得体が知れないと思っていたその「不安感」の正体を掴むことができ、どう対処すればいいか、わかってくるので、不安に対してむやみに怖がらなくなります。
毎日感じる気持ちが少しラクになる、そんな絵本です。

では、紹介していきましょう。

ふあんくんのきもち2

(東京大学下山晴彦研究室 子どものための認知行動療法プロジェクト 原案・解説 松丸未来 絵 北原明日香 ほるぷ出版)


1・絵本のあらすじ

今回のお話は、心配症のともちゃんが心配ばかりしていて、「ふあんくん」が頭の上に乗っているというお話。ふあんくんのことなんか、無視しようと見ないふりをしますが、ついには部屋いっぱいになってしまい、ともちゃんもふあんくんも泣き出します。

でも、そのふあんくんはともちゃんの一部だとわかり、ともちゃんは不安に向き合うことにしました。

その「不安」とは音楽発表会に向けて、鍵盤ハーモニカが上手く吹けるか不安だったので、自分でも練習し、友達にも付き合ってもらって練習を重ねました。
音楽発表会当日、とてもうまく吹けました。

というお話です。

2・「不安」感と付き合うとは

①「不安」を持っていることを認める

「不安感」から逃げていると、いつまで経っても根本は解決せず、ふとした時に出てきます。
これが絵本でもともちゃんの頭の上に「ふあんくん」が乗っている状態です。

ともちゃんはそれでも「不安感」を無視していますが、受け入れ、向き合うようになってから、気持ちが前向きになり、物事が好転していっています。

このように、まず自分が「不安」をもっていることを認める、ということが大切。

私自身も「不安」をよく感じると書きましたが、そもそもそういう「不安」という感情を感じないようにしていた時期が長かったです。
感じてはいけない、感じるべきではない、となぜか思い込んでいたのです。
だけど、感情は正直で、気分も悪いし、やることも上手くいかなくなる、これからも希望が持てなくなる、、と悪循環に陥っていました。

そんな「不安」を感じない人にならないと!と思っていた。
まあ、言ってみれば「自分」をそのまま受け入れていなかったんですね。受け入れられなかった。

でも、時を経て心理学の勉強をしたり、カウンセリングを受けたりして、今は自分の感情をそのまま感じることが大切とわかったので、まずは認めることにしています。

「嫌だったんだね」「心配なんだね」と。
すると気持ちがちょっとほっとします。感じてもいいんだと。そういう自分でいい。
それから、「不安」に向き合い、それを考え続けて解決することなのか、ほっておいて忘れる方が良いことなのか、選択します。


②行動する

「不安」を認めたら、どうしたらそれが少しでも小さくなるか、ラクになるか、行動します。わからなくて不安だったら「調べてみる」「聞いてみる」ことでもいいでしょう。

本当に何でもいいので一つやってみることだけで、その不安が少しラクになります。

この絵本のともちゃんの場合は、上手くいくかな・・と不安に思った鍵盤バーモニカをとにかく、練習しました。

これが大切。

私も、小さい「不安」が色々ある、と書きました。

仕事のことや、家のことなど。
そんな時は調べたり、人に聞いたり、準備したりします。

自分がその時出来る限りのことをしていると、少し「不安」が小さくなっていく気がします。


③人からの励まし

そんな、どうやるの?一人でできるかな・・そう思う方もいるかもしれません。

そんな時は、家族や友達、仲間、信頼できる親しい人に助けてもらったり、一緒なんだと思えることもとても効果的です。

たとえば、この絵本の中では

まちがえて ドキドキしたときも ありました。
「まだ、ほんばんまで じかんあるから れんしゅうしよう」
と、なぎちゃんが はげましてくれたときは、ほっとしました。


『あんしんゲット!の絵本 ふあんくんのきもち』(東京大学下山晴彦研究室 子どものための認知行動療法プロジェクト 原案・解説 松丸未来 絵 北原明日香 ほるぷ出版)


友達からの励ましでほっとする場面があります。

また、他には友達と遊んで気分がすっきりする場面も。


「不安と向き合う」と言っても一人ぼっちで立ち向かうのではないと思うと少し気持ちがラクになりませんか。

会社の仕事のことなら、上司、同僚などに相談する。

プライベートなことなら、家族や友人に聞いてみる。

その他には、息抜きとして、外に出かけたり(それは日常の買い物とかより、ちょっと非日常な方がおすすめ、例えば洋服を買いに行くとか、季節の花が咲いているお寺へ行くとか→自分のことですが)人と(今は少人数でないと行けませんが)食事に行くなど。

皆さんも、ちょっと見渡せば一緒に励まし合える人、声を掛けてくれる人など、いるのではないでしょうか。

3・ここが惹かれたポイント

「不安」感を受け入れる

この絵本で一番惹かれたところは、2①でも取り上げていますが、敢えてもう一度取り上げたい。


「ふあんくん」が泣いた時に、

ともちゃんが言ったこと

『……あのね、ふあんくん。なかよくできるかは わからない。でも……もう むしは しないよ』


『あんしんゲット!の絵本 ふあんくんのきもち』(東京大学下山晴彦研究室 子どものための認知行動療法プロジェクト 原案・解説 松丸未来 絵 北原明日香 ほるぷ出版)

と言ったこと。

まずは自分は「不安」になっている。「不安」に思っていることがある。
そのことを認めること。受け入れること。
そんなの分かってる、当たり前、と思う人もいるかもしれません。

だけど、自分の感情を抑えてきた人にとっては当たり前じゃない。むしろ、一番難しいこと。「すべき」ことはわかる。だけど、ありのままの自分の感情がわからない。

そういう人は意外とおられるのではないでしょうか。

何回も言っていますが、私もそうでした。「不安」を感じている自分はだめだ、こんな弱い自分はだめだ、もっと強くならなくては、何事にも動じない心にならなければ・・

何故かそう思ってきました。でも、長年自分の心と付き合ってきた結果、それは「無理」だということがわかりました。

私はすぐ不安になるし、ちょっとしたことで動揺する。すぐ絶望的になる。
私の気質なんだ。と思います。
でも、それは良い、悪いとか、直すべきことではない。というか、直せない(笑)

それが私。でもいままで、不安になり、動揺して、絶望的になるといっても、大抵はそれほど物事は悪くならない、なんとかなることも沢山あった。
それがやっとわかってきました。

だから不安になり、動揺し、絶望的になっても、少し落ち着いたら、行動します。

そうしたら、何となく、好転していきます。よくならない場合でも、それがどうした、という感じで、そのままにしておいても問題はない、ということも多いです。

とにかく、とっさにテンパる、落ち込むということだけで、それが落ち着けば、何とかなるのです。

それは長い年月かけて、色んなことを経験してわかってきたことです。

この絵本のともちゃんという子供や若い時はなかなかわからないかもしれません。

そんな時はこの絵本。とくに「不安」という漠然としたものが、「ふあんくん」という形で絵になっているので、視覚化できる。

形が見えないものは余計こわい。とてつもなく巨大なものに感じる。

だけど、絵として見ることができれば、その形を捉えられてそういうものとして認識できる。安心につながります。

だから、こういう絵本を読んで、分からないなりにも、ストーリーから心の動きや理論を知って少しでも希望を持ち、ラクになってもらいたいのです。


4・まとめ

いかがだったでしょうか。

この絵本の巻末には解説も載っており、より詳しく「不安」への対処方法を知ることができます。

敢えて誰でも読みやすい「絵本」になっていることで、心に届きやすい。

この絵本を読んで、自分のことに置き換えて、感じてもらったら、きっとあなたの不安を小さくする方法が見つかり、気持ちがラクになるはずです。

不安を感じやすい人にはとてもおすすめの絵本。

ぜひ、読んでみてください!



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