自分は勇気を出せているのだろうか、勇気とは何かを教えてくれる絵本|『勇気 COURAGE』|を紹介します。
絵本紹介士のkokoroです。 “絵本紹介士”とはその字の通り、絵本を紹介する活動をしています。
幼い頃から読書が好きで、大学は児童文学科で学びました。またここに至るまで、挫折を経て心のことに関心を寄せ続けてきました。
ある時から絵本の楽しさに改めて気づき、多くの絵本を読んできました。
絵本は子どもが読むもの、と思われがちですが、大人の心にこそ響きます。
楽しくなり、癒され、深く心が動き、考えさせられる。
そんな風に心惹きつけられた絵本を1冊ずつ紹介しています。
実際にその絵本を手に取って頂き、思いを共有してもらえたら、こんな嬉しいことはありません。
今日ご紹介する絵本は、『勇気 COURAGE』バーナード・ウェーバー 作(文と絵)日比野重明 訳 U-LEAG(ユーリーグ)です。
この絵本は「勇気」を出すとはどういうことかを色んな場面を例にして教えてくれています。
「えっ?そんなことも勇気なの?」と思うこともあり、そんなことなら自分もできる、やっていると思うと、自分もまんざらじゃない、がんばっているとちょっと励まされます。
1・絵本のストーリー
ストーリーとタイトルに書いたが、この絵本にはストーリーはない。
ただただ『勇気』とはこういうものだ、という文章と絵があるだけ。
でもその内容が深く、広い範囲にわたっている。
人々が想像する『勇気』というもの、例えば
そこに やまが あるならば がんばって ちょうじょうまで のぼるのも ゆうき
Courage is if you knew where there were some mountains, you would definitely climb them.
『勇気 COURAGE』バーナード・ウェーバー 作(文と絵)日比野重明 訳 U-LEAG(ユーリーグ)より引用
というものがある一方で
すばらしい けしきの なかを ドライブするときも、
まんなかの せきで がまんするのも ゆうき。
Courage is a scenic car trip and being stuck in the middle during the best part.
『勇気 COURAGE』バーナード・ウェーバー 作(文と絵)日比野重明 訳 U-LEAG(ユーリーグ)より引用
という人のためにメンタル的に我慢するという情景を描いた文章もあります。
絵はとてもユーモアにあふれていて、かつ色使いも楽しく、文と絵が同じ人なのですごくまとまりのある素敵な世界観になっています。
作者のバーナード・ウェーバーさんは1924年米国に生まれました。1961年絵本作家としてデビュー。30冊以上の絵本を発表し、その多くがロングセラーに。2013年死去。
(『勇気 COURAGE』バーナード・ウェーバー 作(文と絵)日比野重明 訳 U-LEAG(ユーリーグ)を参考)
そして訳が医者であり多くの本を書いてきた日比野重明さん。2017年に105歳で亡くなられましたが、人の生き方を世に発信されてきた方だけあり、訳も子どもにもすっと読めて心に自然に入ってくるようなもので素晴らしいです。
巻末にこの方の「あとがき」があるので、それを読めるのも良い特典となっています。
2・この絵本が伝えるメッセージは「勇気はどこにでもある」ということ
この絵本が伝えるメッセージはどんなことでも“勇気”だよ、ということです。
自分は弱虫、何もなしえてない・・そんな風に思うことってないでしょうか。
多くは子供に向けてのメッセージだと思いますが、でも大人である私たちにでも刺さる文章もあります。
例えば、
しゃべらないと やくそくした とっておきの ひみつを もらさないのも ゆうき
Courage is the juicy secret you promised never to tell.
(『勇気 COURAGE』バーナード・ウェーバー 作(文と絵)日比野重明 訳 U-LEAG(ユーリーグ)より引用
とか
やきもちを かんじても そんな そぶりを みせないのも ゆうき
Courage is trying to cover up your mean,jealous side.
(『勇気 COURAGE』バーナード・ウェーバー 作(文と絵)日比野重明 訳 U-LEAG(ユーリーグ)より引用
(この場面は犬がいて、猫が飼い主に可愛がられている様子を歯ぎしりしてみているという絵です)
この部分は大人になってもあるある場面ではないでしょうか。
日々のちょっとしたことも勇気Courageがいるということ。
そして私たちは意外にその勇気Courageを日々出して生きているんだ、私たちってがんばっているんだ、という励ましのメッセージを感じます。
また、お気づきのように、この文章は英文も一緒に掲載されています。
簡単な英文なので、原文がどのように訳されているかを読んでみるのも楽しい。
3・この絵本から惹かれたことはユーモア
この絵本から惹かれたのは「勇気」という一見大きなテーマを扱いながら、絵も文章もユーモアにあふれていて、温かいところ。
たとえば
おたんじょうびパーティーに だれよりも うんと はやく いってみるのも ゆうき。
Courage is arriving much too early for a birthday party.
※家の人は今やっと起きたばかり。
(『勇気 COURAGE』バーナード・ウェーバー 作(文と絵)日比野重明 訳 U-LEAG(ユーリーグ)より引用
という場面ではプレゼントを持った男の子が玄関に立っているのですが、お父さんはランニング姿、お母さんはバスローブ姿と本当に起こされたという感じて、笑顔ではあるけど、ちょっと困ったなあ・・という感じが伝わります。
これは“勇気”というより“迷惑”じゃ・・
とツッコミたくなるのですが、パーティに早く行きたい男の子の気持ちもわかり、ほほえましく思います。こういうことを“勇気”としてとらえるところがユーモアがあって、いいなあ、色んな“勇気”の形があるんだなあ、
とこの作者のユーモア精神と温かさがすごくホッとさせられます。
他にもたくさんの“勇気”の場面があり、共感することもあって、日々知らず知らずわたしたちって“勇気”を出しているんだな、こういうことも“勇気”というのなら、意外と私ってがんばっているのかも?と思わされます。
子どもが読んでいてもそれこそ“勇気”づけられる絵本。
そしてこの絵本はちょっと元気のない時でも元気になり、ユーモア・温かさ・そして考えさせられます。ぜひ読んでみてください!