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素直になりたいけどなれない、そんな人に。|『ほんとはちがうよ』|を紹介します。
今日、ご紹介するのはこの絵本です。
『ほんとはちがうよ』かさいまり作・絵 岩崎書店
この絵本は本当の気持ちがなかなか素直に出せないねずみくんのお話。本当はこういいたいのに、言うと相手も困るかも、とか何だか意地になってしまって言えない・・そんなねずみくんにきっと共感し、そして何かそこにヒントももらえるかもしれません。
1・あらすじ
二匹のねずみくん、ハリーとマットが隣同士の家で住んでいました。二人はいつも一緒。朝ご飯から一緒に食べ、一緒に遊ぶ計画をたてます。
そんなある日、ハリーのもとにおじさんが訪ねてきました。おじさんは世界中を旅しています。その話を聞くとハリーも旅に出たくなりました。マットも行こうよ、と誘いましたが、マットは行きたくありません。ハリーは一人でおじさんと一緒に旅行に行こうとします。マットは寂しくてつい、つっけんどんな行動をとってしまいます。果たしてマットは気持ちを伝えられるのか、ハリーは一人でおじさんと旅に出ていってしまうのか・・というお話です。
2・マット(残る方のねずみくん)の気持ち
この話ではマットは素直にハリーに「旅に行ってほしくない、寂しいから」と言えません。なぜなら、ハリーは本当は行きたいけど、マットのことを気にして迷っているということを知ってしまったから。自分がそんなことを言ったら、ハリーは旅に出かけないかもしれないと思ったからです。だけど、本当は行ってほしくない、そんな揺れ動く気持ちの中で、ハリーに遊ぼうと声を掛けられても素直に応じられなくなります。
3・何が大切か
皆さんもこんなことってないでしょうか。素直に自分の気持ちを言いたいのだけど、相手を思うあまり、言えない。また何だか恥ずかしい、意地をはってしまう・・でもこのままではいけないことはわかっている・・マットはこんな気持ちでいます。
一方、ハリー(旅に出たいと思うねずみくん)の気持ちとしては、好奇心もあり、おじさんと一緒に広い世界を見てみたい。だけど、気の合う友達は一緒じゃない。その友達に寂しい思いをさせてしまう。新しい体験か、友達と一緒にいることか、どちらを選ぶのが自分にとって大切か。ハリーも選択をせまられます。
この選択がどうだったか、結末は絵本を最後まで読んでもらってからのお楽しみとしておきましょう。
ただ、ハリーはマットの気持ちを受け止めました。マットも行動でハリーへの友情を失いたくないという気持ちを表すことができたということはお伝えします。この絵本の裏表紙には二人で仲良く紙飛行機を作る様子が描かれています。それが結末のヒントです。
自分の気持ちに素直になること、本当に大切なものは何か、この絵本を読んでいると、そんなことを考えさせられます。二人それぞれの立場の気持ちを味わうことができます。
温かい絵がほのぼのとして、少し切なく、そして温かい気持ちになれる絵本です。おすすめです。