落ち込んだ時に読んでほしい絵本|『しょんぼりしないで、ねずみくん!』を紹介します。
絵本紹介士のkokoroです。 “絵本紹介士”とはその字の通り、絵本を紹介する活動をしています。
幼い頃から読書が好きで、大学は児童文学科で学びました。またここに至るまで、挫折を経て心のことに関心を寄せ続けてきました。
ある時から絵本の楽しさに改めて気づき、多くの絵本を読んできました。
絵本は子どもが読むもの、と思われがちですが、大人の心にこそ響きます。
楽しくなり、癒され、深く心が動き、考えさせられる。
そんな風に心惹きつけられた絵本を1冊ずつ紹介しています。
実際にその絵本を手に取って頂き、思いを共有してもらえたら、こんな嬉しいことはありません。
今日紹介する絵本は『しょんぼりしないで、ねずみくん!』(ジェド・ヘンリー 作 なかがわちひろ 訳 小学館)
です。
このタイトルの通り、しょんぼりしているねずみくんを他の動物のみんなが励ます、というお話です。
①この絵本を読んでほしい人は落ち込んでいる人、落ち込みがちな人。
誰でも、落ち込むときはあるでしょう。中にはいつもポジティブ思考で落ち込まないよ!という人もいるかもしれませんが、これまで生きてきて、一回くらいはそういうことがあるでしょう。(と仮定します)
少なくとも、私自身はしょっちゅう、落ち込みます。色んなことに対して。いわば、もう性格の一部となっています。前はそのことにも悩んでいましたが、今は裏返せば“謙虚”ということで(笑)これはこれで大きな危険を避け、準備ができ、傲慢にならないという長所とも思っています。
さて、このように落ち込みがちな人、時々落ち込む人、たま~に落ち込む人、色々おられるかもしれませんが、そんなとき、この絵本を読むと心が温かくなり、落ち込んでいた心が和らぎます。
②絵本のストーリー
このお話はまず、しょんぼりしているねずみくんが出てきます。
その姿を見て、みんなが元気を出させようとします。
鳥たちが花びらをねずみくんの上に撒いたり、ウサギは楽器を弾いて音楽を奏でますが、ねずみくんは元気になりません。
みんなは相談します。
鳥がねずみを空に連れていって広い空を見せます。
でもだめ。またしょんぼり。
カエルは泣いていいんだよ、と水の中へ。
いやいや
飛び跳ねたら元気になるよ、とうさぎさん。
だめだめ、一人で暗いところに行こうと穴の中へ おちつくよともぐらさん。
歌をうたったり、転がったり・・
と元気づけようとあの手この手でみんなが励まします。
それでも、しょんぼりなねずみくん。
そんな中、
ふと見るとねずみくんがいない。
一人、離れたところでしょんぼり。
そこへそれまで何も言わず、じっとその様子を見ていた、りすさんがねずみくんのそばに近寄ってそっとハグしました。
ねずみくんは思わずにっこり。
みんなもそれを見てほっとする、
そしてまたもや駆け寄って元気出して、というお話です。
③このお話の中で一番惹かれたところはただ寄り添うことの大切さ。
このお話の中で一番惹かれたところ、共感したところはここ。
そらは ひろいぞ、おおきいぞ。
ちっぽけなことで くよくよしないで、
げんきを だそう!
『しょんぼりしないで、ねずみくん!』ジェド・ヘンリー 作 なかがわちひろ 訳 小学館より引用
この言葉はカラスさんが言った言葉。すごくわかります。
先程も言った通り、言う方も、悪気はない、善意で励まそうとしているだけとわかる。
そもそも、悩んでいる方も時間がたったら「何だっけ?」と思うこともあり、何であんなに悩んでいたんだろ?と思うこともある。
それこそあとになって「ちっぽけなことだったな」と思う時もあります。
でも、でも。
落ち込んでいる渦中はそのことで頭いっぱい。その人はそのことで存在しているといえます。
そこへ、上のような言葉をかけられたらどうでしょう。
「え?悩んでいる私がだめなの?こんなことで悩むことが悪いの?でも私はこのことで頭がいっぱい。ということは、私自体の存在もだめなのね」
・・・と、極端かもしれないけど、こうなってしまう人もいるかもしれない。少なくとも私はなったことがありました。
そんなとき、どうしてもらったらいいのでしょう。
それは・・
何も言わずに話を聞く。あるいは「そうなんだ、そう思うんだ」と肯定する。
そう言ってもらうだけで、ホッとします。
リスさんのように、そっとハグ。まあ、これは関係性にもよるかもしれませんが。
普段、そこまでの関係性(男性でも女性でも)でもなかったら、かえってびっくりするかもしれない。そのハグのかわりにオウム返しの言葉、それをいうだけでいいと思います。
そしてそばにいる。
あ、落ち込んでいる自分もこれでいいんだ、と自分を肯定してもらえた感じがして、そこでニュートラルになっているのです。
元気になれるのはその段階を経てからです。
④この絵本をおすすめする理由は“優しさ”に触れられること
・・・と先程の章では言いましたが、
とはいえ、みんなの“優しさ”も健気でほほえましいのです。
みんなが一生懸命考えて、よかれと思ってネズミくんをはげましています。
(ねずみくんがちょっと振り回されている感はありますが・・(笑))
元気づけよう、励まそう、というねずみくんのことを思いやっている気持ちがストレートに伝わってきます。
リスさんがハグをしよう、と思ったのもみんながそれぞれの励ましをしている様子を見ていたからこそ、わかったこと。
リスさんはずっと何も言わずにねずみさんの様子を見ていました。
みんなが励ます様子を。そしてネズミくんの反応を。
そしてわかったのです。何が一番ネズミくんをほっとさせるのか。
元気づけられるのか。
で・・そっとハグしたのです。
ここにもう一つの“優しさ”を感じることができます。
人の様子をずっと見るって、時間もかかるし、手間もかかる。
いわば人のために時間を割くということ。
だれでも、そんな風にしてもらったらこんなにうれしいことはない。
私も今でも覚えている光景があります。
遠い昔、中学生のころ、あることが原因で、落ち込んでいて学校の隅で体育座りをしていたことがあります。(相当落ち込んでいたんですね・・)
すると、友達二人がそっとそばにきて同じように横に座っていてくれました。
何も聞かずに。
どれだけ、心が安らいだか。友達の温かい気持ちが伝わり、ホッとしました。
寄り添ってくれる人がいると感じ、元気になりました。
今でも思い出すと温かい気持ちになります。
だから、人に寄り添える人って素晴らしいと思います。
私もできる限りしようって思ってます。
何度も言いますが(笑)他の動物たちの一生懸命仲間のことを心配している気持ちもいいなあと思えます。
みんなの気持ちと、そしてリスくんの気持ちが一緒に伝わり、温かい気持ちになることができます。
落ち込んでいた心がほっと温まる、そんな絵本です。
ぜひ読んでみてください、おすすめです。
※絵本にしては高価な価格ですが、これは新品の価格のようです。中古書では¥2,000代から販売しているようです。ご確認ください。