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つい人と自分を比べてしまう時におすすめの絵本 | 『わたし、ぜんぜんかわいくない』を紹介します。
絵本紹介士のkokoroです。幼い頃から読書が好きで、大学は児童文学科で学びました。同時に、心のこと、スピリチュアルなことにも、とても関心を持っています。このnoteでは、そういう観点から心惹かれる絵本を選び、お話の中の気付きやメッセージを読み解いています。
紹介した絵本を読んでもらって心がラクになり、元気や勇気を出してもらえることを目指しています。
『わたし、ぜんぜんかわいくない』作・絵 クロード・K・デュボア 訳 小川 糸 ポプラ社
この絵本の主人公は、幼い女の子「ステファニー」。彼女は自分の容姿に自信が持てず、人と比べて落ち込み、殻に閉じこもってしまいます。そんな中、お父さんのある言葉がきっかけで、気持ちを変えていくというお話。
そしてつい人と比べてしまって落ち込んでしまう人が、どうしたら気持ちを切り替えていけるかのヒントがここにあります。
1・絵本のストーリー
<はじめに・ステファニーの思い>
この絵本の主人公は「ステファニー」という女の子。ステファニーは自分の容姿が可愛くないと思いはじめます。お父さんが「可愛いよ」といってくれても「それはお父さんだから」と感じます。
自分より可愛い子がたくさんいる。お父さんは「心が大事」というけど、「見た目が大事」だと感じてしまう。例えば、クラスメートのヴァネッサはとてもきれい。そしてそんなきれいなヴァネッサの周りには人がいっぱいいる。先生だって、ヴァネッサをひいきしている。それはヴァネッサが美しいから。自分と比べてしまいます。
<外に出たくない>
ステファニーは自分はかわいくない、だから好かれないと思います。そして自分自身も好きじゃない。こんな自分は人前に出たくない。ずっと部屋の中にいたい。いっそ透明人間になりたいとまで考える。
もしかして、もうなりかけているのかも。だって、学校で誰かと二人組になる時でも、選ばれず、ひとりぼっちになるから。
<写真>
だけど、ある時こんなことに気付きます。二つぬいぐるみがあるけど、ぶさいくな方と可愛い方、どっちが好きかと言われたら、可愛い方じゃない。ぶさいくな方が好きかも。あれ?きれいな方じゃないなと。
パパにもっと可愛かったらよかった?と聞くと、じゃあパパも、もっとハンサムだったらよかったのか、と聞かれます。
そしてある素敵な夕焼けの写真を見せてくれました。
それはパッと見、きれいだけど、ずっと見ていたいかと言われたら、見ていたくない。飽きてしまう。
<本当の美しさとは>
そのことから、ステファニーは知るのです。本当に美しいものは飽きない。そして人の顔には心の美しさや優しさが、隠されている。しかし、それに気が付くのは自分。そしてこれからもっとそれを見つけ出し、もっと可愛くなっていける。
最後にステファニーは可愛い笑顔になる
2・この本が伝えたいメッセージ
この絵本の主人公、ステファニーは人から何かを言われた訳ではないけれど、可愛い子と自分を比較して自分はかわいくない、だから好かれない、と思いこんでしまいました。
容姿さえ可愛いければ、人にも好かれるし、何もかもうまくいくんだ、という考えです。
その思いが高じて、人前に出たくなくなってしまいました。
ずっとこのままでいたいと。落ち込んでいきます。
そんな時、気付いたこと。お気に入りのぬいぐるみ、ぶさいくな方とかわいい方、好きなのどっち?と言われると「ぶさいくな方」かなあ、と。愛着があるのですね。そこで、きれいなものがイコール好きなものではないと気付く。
そして、パパから見せられた夕陽の写真。パッと見は美しいけれど、ずっとは見ていられない。それが、例えば、前に行った家族写真の時に撮ったものだったら、色んな思い出と共にずっと見ていられるでしょう。だけど、ただの夕陽の写真は、一見きれいだけど、何も思い入れがない。「美しい」「きれい」というのはそういうもの。
だから、外側の美はすべてではない、中身こそ、価値がある。そのことを伝えたいのではないでしょうか。
3・この絵本をおすすめする理由
この絵本の主人公、ステファニーは人と比べて自分はかわいくない、と悩んでいます。
だんだんと、外にも出たくなくなってしまいます。
私自身も10代のときに、容姿のことで悩んだことがありました。
あることがきっかけで、自分に自信がなくなった。落ち込みました。
人がみんな、自分の外見について笑っているような気がしてくる。
人と話すのが怖くなり、そうなると外に出るのがおっくうになってくる。
そのことを思い出し、このお話の主人公、ステファニーにすごく共感しました。
とても細やかに心の動きが描かれているので、何か自分のことを言われているような気がしてきました。この「共感できる」というところがおすすめする理由です。
自分のこととしてこの絵本を読むことができます。
そして共感できたからこそ、そこからステファニーがどう気付いて、気持ちを変えていくのかに引き込まれました。
まずはぬいぐるみのこと。かわいい方とぶさいくな方。どちらが好きかと言われれば・・・可愛い方ではないことに気づきます。どうしてだろう・・外見が美しいと人に好かれると思っていたのに。なぜだろう。そこに気づきがはじまります。
それから、パパがもっとハンサムだったらよかったか?それも違う気がする・・
パパは外見をひっくるめてパパだ。外見が変わってしまったらパパじゃない。
また次の気づきがあります。
そして最後にパパに見せてもらった夕陽の写真。一見、美しいけど、じっと見ていると飽きてしまう。
なぜか。そこには何も感じるものはない。
外側が美しいなら人を惹きつけ、何もかもうまくいくと思っていた。
・・・違うみたい。
本当の「美しさ」とは何だろう。とそこで考えがガラッと変わる。
本当の美しさとは飽きない。そこに色んな思い出があると、「楽しい」「心温まる」など、それが外に滲み出てくる。
とってもハンサムな知らない男の人がいても、パパにはかなわない。
可愛い人形があってもいつも遊ぶ思い出のある人形にはかなわない。
美しい景色の写真を見ても、飽きる。でも、いつも遊ぶ公園の写真なら、色んな思い出を思いおこさせて、じーっと見てしまうかもしれない。
そして、自分の顔。絶世の美人ではないけれど、人に優しくしていたり、一生懸命何かをがんばっていると、きっとそれが外にあらわれる。
自分と仲良くしてくれる友達もきっとできる。その友達は自分の中身を好きになってくれた人。
ヴァネッサは美しい。そのことを羨んでいたけれど、自分にもまた別の美しさがきっとある。
そんなことがわかってきて、ステファニーは笑顔になる。
私も10代で悩んだ末(ずいぶん前ですが)、だんだんと、中身が大切なことがわかってきました。
もちろん、外見がどうでもいい、ということではありません。身ぎれいにしておくことや、服装もTPOに気をつける、とか基本的なマナーは必要だと思います。
そして、何事も健康からなので、身体にいい食事をすることや適度な運動をする、といった健康に気をつけることも大切です。
でもやはり、まず自分を大切にすること、そして周りの人も大切にする、どう生きていくかの思い、そして行動・・そういうものが外側に現れます。
私もまだまだ未熟ですが、努力している最中です。
4・このお話で惹かれたポイント
このお話で一番惹かれたポイントは、ずばり、「パパ」の存在です。
この絵本のパパは終始主人公のステファニーに寄り添い、肯定的な言葉を掛けてくれます。
身内だから、可愛いと思うんでしょ、心が大切ってよく言うけど、やっぱり人は外見なの!という娘の気持ちもわかる。
でも、夕陽の写真を見せて、美しいけど、それだけでは飽きると、だから内面が大事なんだ、という具体例を出して教えてくれる。
素晴らしい「パパ」だと思います。こんな素敵なパパがいるなら、このステファニーは自分に自信がなくても、人前に出たくなくなっても、心の底にはパパからもらった言葉があるから、きっと自分で前向きにやっていけると思います。
こういうお父さん、いいなあと思います。
でも、誰でも誰か一人はこういう人が周りにはいるのではないでしょうか。自分を肯定的に見てくれる人、自分の良さをわかってくれる人。
私は誰もいないとその頃は思っていましたが、
今、思い返せば、自信を失っていたとき、励ましてくれる友達がいました。だけど、落ち込んでいた私の耳にその言葉があまり入ってこなかった。
後から「ああ、あの人がこういう言葉を掛けてくれた」と思い出しました。
それだけでも、自分には温かい言葉を掛けてくれた人がいたことにほっとする。
だから、誰もいないと思っている人でもよくよく見渡せば、自分に肯定的な言葉を掛けてくれる人はいるはずです。
その言葉を素直に受け取るところから、前向きになる一歩がはじまる。
もし、本当に誰もいないならー自分で自分に声を掛ける、それも難しいなら、何か好きなこと、得意なことをして気持ちを一旦ラクにしましょう。それならできるはずです。
「あ、これをしていると楽しいんだ、これをするのは得意かも?」と自分の良い面が自分でわかってきます。そのようにして、本当の自信を少しずつ積み上げていきましょう。
そうすると、その自信が外側も輝かせる光となる。
笑顔になる。笑顔の人は美しい。
いつのまにか、外見も可愛い、美しい人になっていく。
5・まとめ
人と自分を比べてしまって、ついついマイナスに傾いていってしまう心の動きがよくわかるお話。
そんな時は、どういう心の状態か、そしてどうしたらその気持ちから前向きになっていけるのか、そんなヒントがこの絵本にはあります。
ぜひ読んでみてください、
きっとステファニーのように笑顔になれるはず。
<作者・訳者について>
この素敵な絵本の著者、クロード・K・デュボアさんは、1960年ベルギー生まれ。美術学校に学び、絵本作家・イラストレーターとして活躍されています。
訳の文章もとても素敵で心に迫ります。
訳は小川糸さん。小川糸さんは『食堂かたつむり』という映画にもなった原作の小説をはじめ、多くの小説を書かれています。その小説が世界各国の言葉で出版されています。また作詞・翻訳・音楽活動もされている多彩な小説家さんです。
また同じ作者&訳者で出された絵本を以前にも紹介しています。
良かったら読んでみてください。↓