プリンセス絵本の変遷と現代の女の子が求めるお姫様[コトラー理論で分類]
ドレスや可愛いお姫様が好き、お姫様のような暮らしがしてみたい…
今回は、そんなお姫様に憧れる女の子が夢中になること間違いなしの「お姫様絵本」について解説します。
さらに「お姫様絵本」をひとつのジャンルととらえて、コトラーのマーケティング戦略を交えながらご紹介したいと思います。
お子さんにお姫様絵本をお探しの方、今どきはどのようなお姫様絵本が主流なのかご興味のある方などのご参考になれば幸いです!
年齢別:子どもにとっての「お姫様」
いつごろから子どもはお姫様に憧れるのでしょうか?詳しくは前回の記事がありますので、よろしければそちらもあわせてご覧ください。
ここではざっと分けておきます。
・0歳から1歳ごろ…そもそも「お姫様」という概念は存在しない(まだ早い)
・2〜3歳ごろ…簡単なお話や絵本に登場する「お姫様」を認識しはじめる(興味が芽生え始める)
・3〜4歳ごろ…「お姫様」が特別な存在であることを認識する。このあたりから「お姫様」絵本が多くなる(ピークです!)
・5歳以上…より多様な「お姫様」が登場するお話を楽しめる(コンテンツの多様化)
コトラーのマーケティング理論とは
フィリップ・コトラーは、マーケティングの父と称され、4P(製品、価格、場所、プロモーション)モデルを提唱した方です。
マクドナルドやコカコーラなど名だたる企業がこのコトラーのマーケティング理論を利用してブランディングを成功させています。
また、顧客中心のアプローチを強調し、マーケティングの目的は顧客のニーズを満たすことにあるとしているそうです。
今回は木下斉さんのジブン株式会社スクールの課題でコトラーが紹介されていたので、コトラーのマーケティング戦略をもとに「お姫様絵本」の変遷を当てはめて記事を作成しました。
•マーケティング1.0: 製品中心→古典物語が中心の時代
初期は、おとぎ話や民話のお姫様をもとに絵本が作られていました。つまり、お姫様絵本は元ネタありきだったのですね。もちろん、古典をその時代の芸術として昇華するということは、特段おかしいことではありません。
有名な古典作品の例:
シャルル・ペロー(17世紀から18世紀初頭)『シンデレラ』
アンデルセン童話(19世紀)『人魚姫』『おやゆび姫』
グリム童話(19世紀)『白雪姫』『ラプンツェル』
シンデレラ / バーバラ・マクリントック 再話・絵 福本友美子 訳
対象年齢…4歳くらいから
表紙の集中線にびっくりして思わずジャケ買いしてしまったシンデレラ絵本です。マクリントックの絵本全般がそうなのですが、装丁のフォントがどれも素敵。
クラシカルで緻密な絵が魅力です!ストーリーはハッピーエンド版シンデレラで、小さなお子様にも安心して読み聞かせができます。
おどる12人のおひめさま / エロール・ル・カイン 再話・絵 矢川澄子 訳
対象年齢…4、5歳から
お姫様絵本といえば、エロール・ル・カイン!その精緻に描かれた絵にうっとりします。オリエンタルな雰囲気も素敵。
ストーリーの軸に、毎晩どこかに出かける12人のお姫様の秘密を探る、という謎解きや冒険要素があって、他のいわゆるお姫様絵本と違った雰囲気なのがおもしろい。元ネタはグリム童話です。
• マーケティング2.0: 顧客中心→オリジナルの物語が登場
お姫様絵本やアニメなどでプリンセスに憧れた女の子には「私もお姫様になってみたい」という欲求が芽生えます。王族・貴族でない自分もお姫様になれるのなら、1日でも体験してみたいですよね。
そこで描かれ始めたのが、「リアル世界に登場するお姫様」絵本です。現代の主流として、このカテゴリのお姫様絵本はボリュームがあります。
また、絵本だけでなく、子供向けドレスなども消費者のニーズに応えた商品と言えると思います。
のはらひめ おひめさま城のひみつ / なかがわ ちひろ 作
対象年齢…4歳くらいから
初版は1995年。
「なりきりお姫様絵本」の先駆け的存在です。お姫様修行がわりと大変そうでクスッとなります。
ドレス選びのシーンでは珍しくアジア系のものも多数並んでいて、国際色豊かなラインナップで楽しめます。
まりちゃんがさっぱりした性格なので、ラストが痛快!
10かいだてのおひめさまのおしろ / のはな はるか 作
対象年齢…4歳くらいから
「お姫様なりきり選びっこ絵本」です。シリーズ累計36万部売れている大ヒットシリーズです!ご存知の方も多いのでは。小学生でもまだまだ楽しめますよ。
この本がキッカケとなって「ページごとにアイテムを選んで行く」という型ができました。ブームになったので、類似本が多数出ています。
わが家では子どもがこの本からヘアスタイルを選ぶ時期もありました。
続編の「10かいだてのまほうつかいのおしろ」もバリーションが豊富でかわいいのでおすすめです!
ゆめみるお姫様図鑑 / たけい みき作
対象年齢…4、5歳から
ファンシーグッズで人気のイラストレーターたけいみきさんが手がけたお姫様本です。
控えめにいって「めちゃかわ」です。
いろいろなテーマのお姫様を女の子(読者をモチーフにしている?)が尋ねていきます。もちろん可愛くておしゃれなアイテム選びもできますよ。
ゆめかわ好きなお子さんには一冊常備しておきましょう!
• マーケティング3.0: 価値中心→お姫様の役割の変化
アニメで言うと「アナ雪」で描かれる姉妹愛や「ありのままの自分らしく」など、かつての「守られる存在だったプリンセス」像からの脱却がこれに当たると思います。
現代の価値観に沿うように、女性像をアップデートしたお姫様が求められています。ディズニーアニメの歴代プリンセスの変化は分かりやすいですね。
おひめさまのけっこん / バーナデット 絵 ラッセル・ジョンソン 文 ささきたづこ 訳
対象年齢…4歳くらいから
政略結婚が当たり前のお姫様が、自分の価値観で選んだひとと結婚するお話です。
そのお姫様が結婚相手に求めるものが面白かったので引用します。
目がキラキラと輝いている人…なかなか奥が深いことばです。自分を持っていて、仕事に誇りを持っている人でしょうか。それなら王子にもいるでしょう。
ポイントは「富よりも自己実現」ということかもしれません。
大工の仕事や森での牧歌的な暮らしもお姫様の好みだったようです。
初版は1992年、この年はアメリカでは「Year of the woman」と呼ばれ、過去最多の女性議員が選出されました。日本でも育児休業制度が法制化されました。
女性の新しい生き方が少しずつ動き始めた時期に生まれた絵本といえます。
廃版ですので、ご興味があれば図書館でお借りください。
それとは別に、社会問題や環境問題に取り組むプリンセス絵本に関しては見つけられなかったので、少し強引ですが出身地に井戸をつくる活動をされているプリンセス(スーパーモデル)の本をご紹介します。
みずをくむプリンセス / スーザン・ヴァーテ 作 ピーター・H・レイノルズ 絵 さくまゆみこ 訳
対象年齢…5、6歳くらいから
2021年の読書感想文の課題図書です。
アフリカ出身のスーパーモデル、ジョージー・バディエルさんの子供時代の体験をもとに作られたお話です。
家から片道だけで何時間もかけて水を汲みに行っていたのですね…。
お子さんと水のありがたさについて話し合う良いきっかけになる本です!
ジョージー・バディエルさん
• マーケティング4.0: デジタル時代→読者が参加する時代へ
これを絵本に当てはめて考えるとメディアミックスでしょうか。
お姫様絵本のアニメ化、という道はありだと思います。
アプリ化、はどうでしょうね。お子さんにスマホやタブレットを触らせたくない保護者だったら「絵本だけで完結すればいいのに」と思うかも。
「お姫様絵本展」があったとしたら、絵本の原画展示やなりきりコーナーなどいろいろ企画できて盛り上がりそうです。
また、Kindle本など自作絵本が以前より気軽に作れる時代です。自身の思う理想のプリンセスが主人公の絵本を作る人もおられるでしょう。
そう、お姫様絵本はオーダーメイドの時代に突入したのです。
それでは、最後にお姫様の遊びブック(児童書)を紹介して終わりにします。
ふたごのプリンセスとゆめみる宝石ドレス / 赤尾でこ 作 まちなみなもこ 絵
シリーズものです。迷路や着せ替えシールなど盛りだくさん。かわいいもの好きさんへのプレゼントにおすすめです!
終わりに
いかがだったでしょうか?
記事をまとめてみて「お姫様」はファンタジー要素が強い分、いかようにもアレンジできるという利点もあり、まだまだ進化を遂げている最中だと感じました。
日本のお姫様についてはまた違った文脈で語り継がれているため、それに関してはいつか別で記事にしたいと思います。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました!