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アイスクリームが溶ける前に君に何をしてやれるだろう

この時期、読むのが楽しいハロウィン絵本。
その中である一冊の本にちょっとグッときてしまったので、この記事を書くことにしました。

アイスクリームが溶けてしまう前に(家族のハロウィーンのための連作)
/   小沢健二と日米恐怖学会

ハロウィーンと家族がテーマの絵童話でありながら、日本が輸入したハロウィーン文化の本場、アメリカでのハロウィーンの楽しまれ方が描かれた科学の本としても楽しむことができる1冊です。

出版社の紹介

対象年齢…小学生から大人まで


まず作者。えっ「小沢健二」ってあのオザケン?いつからかアメリカに住んでいたイメージはあったけど、彼の音楽のことはあまりよく知らないし(『今夜はブギー・バック』はイイ!)、こんな軽快で素敵な文章書く人なんだ!という衝撃がありました。

「日米恐怖学会」は実在する組織なのかは謎ですが、「ダイスケ・ホンゴリアン」という方がイラストを描かれているようです。挿し絵がポップでかわいい。カラーページはすべて、オレンジ・緑・青×モノトーン。

内容はアメリカのハロウィン文化を紹介したものです。
「だ・である調」のナレーションスタイルで、各家庭や仮装に興じる人たちが紹介されているのが面白い(私の脳内ではなぜかオザケンでは無く、テレビ版『きかんしゃトーマス』の森本レオで再生された)。


街中の人たちがハロウィンを全力で楽しみに行くスタイル。


本書は「絵本以上児童書未満」という感じでサラッと読めます。
挿し絵はほとんどのページにあります。

最後の数ページには、オザケンの奥様お手製の衣装を着たお子さん?のフルカラー写真集が添えられています。ウィリアム・テル、戦士、宇宙人、カップケーキなどどれも凝っててかわいい!


アメリカでは、手作り衣装にこだわる大人たち。


どれだけ忙しくても夜な夜な頑張るようです。日本に置き換えると、遠足のお弁当を手作りするようなもの、と説明されて納得。
(アメリカは広いので、既製品を買う人やそもそもハロウィンをやらない人もいるとは思いますが。)

手作り派の家庭では子供にせがまれて既製品の衣装を買ったとしても、周りにウケないし親もつまらないしで結局次年度は手作りに戻るとのこと。

そんな風に、衣装やお菓子や家の飾りつけなど大がかりな準備をして、ハロウィンは一年に一度の大イベントになっているそうです(たしかに海外のハロウィンネタのインスタをみるのは楽しい)。


アイスクリームは、必ず溶ける。


時には、親子でおそろいの仮装して、街の人と楽しむ。
この「特別な夜」は、実は期間限定のものであるということを子供は知らないんですよね。

小学校高学年くらいになると、悪友同士で、親が嫌がるような衣装を作ったりする。
・・・(中略)・・・

子どもたちは、、止まることなく大人になっていくのだ。
・・・

高校に入る頃、背の高くなった男の子たち・女の子たちに、最後のお菓子もらいの年がやってくる。
・・・
男の子・女の子たちはちっちゃかった頃の写真を見ながら、その時と同じ仮装をもう一度作ったりする。
親友と、泣いたりする。
そして、子ども時代の終わりが来る。

本文より


グッ(涙腺が緩む音)


これ、一読目は「アイスクリームが溶けてしまうこと」を実感するのは大人たちで、ハロウィーンの楽しさだけでなく「子どもが親離れしていく寂しさ」も教えてくれる本だと思っていました。

二読目で気づく。「自分が子供でなくなってしまうこと」を実感する「子供自身の寂しさ」も知らせてくれているのです。
成長したからこその「子供からの卒業」。喜ばしいことではあるけれど、切ない…。

子供時代は儚い。


近頃は断捨離思考で「イベントをどんどん削るのも楽でいいな」と思っていたけれど、削ってしまったら勿体無いこともあると気付かされました。 

日本に置き換えたらなんでしょう。子供のために頑張ってあげたいイベント。
わが家だったら、浴衣を着せてあげて夏祭りに参加することかな。
暑い日はプールを設置してお友達を呼んであげたり。家族の誕生日やクリスマスにはケーキを一緒に作って…。正直、疲れるし大変だけど、あっという間にできなくなってしまうのかぁ。

たぶん、どのご家庭にも子供のために労力をかけざるを得なくなっちゃったイベントってあると思うんですよね。

やる時は面倒なことでも、「アイスクリームが溶ける前」のように終わりがみえているタイミングだと「ああ、親はイベントに参加させてもらってたんだな」と一抹の寂しさが込み上げてくるのです。
この本で、それに気づかせてもらいました。

お子さんが巣立ってしまった方や、当事者である中高生の学生さんにもぜひお読みいただきたいです。

とっても素敵な本なので、オススメです!

それでは、ここまでお読み下さりありがとうございました!!

備考:アメリカのハロウィンの歴史

19世紀後半から20世紀初頭

アイルランドやスコットランドからの移民が持ち込んだイベント(ケルト文化)。
霊がこの世に戻ってくるので、悪霊から身を守るために仮装をする。
仮装をして家々を回り、歌や詩を披露して食べ物をもらう風習があった。

移民以外の人々には仮装&いたずらをするイベントとして広まる。

1930年代から1940年代にかけて

大恐慌時代に過剰ないたずらが社会問題化する。
若者のストレス発散に利用される。
例)窓ガラスを割る、車を傷つける、農場の家畜を逃す、など

1940年代から1950年代にかけて

子供達が建設的にハロウィンを楽しめるように策が講じられる。
お菓子や小銭を配っていたずらを防ぐ「トリック・オア・トリート」が広まる。

戦後は砂糖も流通しやすくなり、お菓子メーカーやキャンディ会社も積極的にハロウィンイベントを推進したこともあり、現在のハロウィンの形ができる。

だそうです!


すべての子どもたちに楽しいイベントを!


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