迷走?進化?変化する『おしりたんてい』と、スピンオフが描く新たな可能性
絵本や児童書で大人気の『おしりたんてい』。シリーズは累計で1000万部を越えています。
しかし、2024年春に出された新刊が物議を呼んでいたのはご存知ですか?
なぜかというと、書影を見ていただければ明らかです。
『おしりたんてい あらたなるかいとう』
対象年齢…小学校高学年から
読み聞かせ…不向き
おしりたんていが上半身裸でボロボロになってる!今まではビシッと探偵服を着こなした優雅なスタイルでしたよね⁈
これでも表紙はまだマシな方で、中はもっとエグめです。
内容自体はいつもの絵さがしなどのゲームをしながら進む感じなのですが、いかんせん敵集団「かいとうアカデミー」の世界観が、子供向けとは思えないほど悪趣味です。
作者さんはどういった意図でこの作品を作ったのか往年の読者は混乱したことでしょう。私もそうでしたので、もちろん、子供には見せていません。
本編は「あぁ、こういうテイストかぁ」といったダークな雰囲気で、内容そのものを否定したいわけではありません。作中、一時的におしりたんていと共に行動した「かいとうN」と「かいとうG」も違う作品だったら人気が出そうな見た目をしています。
青少年向けアニメや少年漫画とかだったら大丈夫だったわけです。
問題は対象読者の年齢
問題点はふたつあります。
ひとつは、子供向けにはまったくふさわしくない世界観
敵に捕まったおしりたんていは口に猿轡?をかまされ、テカテカの黒のボディースーツの上にギッチギチにベルトで全身縛られた装いにさせられました(このショッキングな見た目によって、レイザーラモンHGが思い出されました)。
そんなおしりたんていを見て子どもたちはどう感じるのでしょうか。そもそも、親も見せたくないでしょう。
もうひとつは、今までの読者を裏切ったことです。
完全に路線変更したことで、既存ファンを切り捨てています。
『おしりたんてい』はアニメ化や映画化もされるほど、キッズに大人気。
毎回謎解きや絵探しをして遊びながら楽しめる、子ども向けエンタメコンテンツです。
新刊を目にして、待ち侘びていた子どもやその保護者がいかにがっかりしたか。
作者さんの作品は作者さんのものなので、どうしようもありませんが、「どうしてこうなっちゃったの?」と考えてしまいました。
作者さんだけでなく、出版社にも責任を感じます。
「作者さん自身がこのコンテンツに飽きているのに、人気がありすぎて出版社から次回作を急かされていたのかなぁ」とか、「本当は暗い話がかきたくて、好きなようにしたかったのかな」、などと想像してしまいます。
そんなふうにモヤモヤしていたら、約半年後にさらに新刊が出ました。
『おしりたんてい かいとうUのおとしもの』
対象年齢…小学校中学年から
読み聞かせ…不向き
あれ?表紙がキレイになってる!と期待してページをめくりました。序盤のお着替え選びのくだりなどはいつもの雰囲気で楽しめました。
しかし、前回からのテイストはマイルドになっているとはいえ、続編のように話が続いているので前作を読んでいない子供からしたら「この敵グループはなに?」状態でしょうね。
しかも、敵グループが登場した途端おしりたんていは前作でのトラウマがフラッシュバックしたような描写があるのです。つらい。往年のライバル「かいとうU」からも雑に、特徴的な身体を利用され、おしりたんていが不憫でなりません…。
結論
作者さんにはとやかく言って申し訳ないのですが、「おしりたんてい」の屋号を使わずまったくの新作なら問題なかったと思います。
大多数のファンは、多少ハラハラしながらも基本的にはほのぼのしている従来の世界で「いつもの」謎解きを楽しみたいと思っているはずなので、今回のミスマッチが起こってしまいました。
次回作でも敵グループとの戦いは続きそうなので、今までのようなおしりたんていの物語はなかなか望めなさそうです。
作者さん、今の路線に満足されたら戻ってきて欲しいです。気長にお待ちしてます!
ちなみに、スピンオフは二種あり、なかなかに楽しめます。
『おしりダンディ ザ ヤング』シリーズ
対象年齢…5、6歳から
読み聞かせ…漫画なので不向き
ハードカバーでオールフルカラーのコミックです。作画は他の方がされていて、漫画として読みやすく安定感があります。
イラストは作者さんに寄せて下さっているので違和感なく楽しめます。さすがプロ!
「おしりたんてい」本編のようにクイズや迷路など謎解きをしながら読み進めます。
主人公は「おしりたんてい」の父「おしりダンディ」で、彼の若かりしころの話です。下品な下ネタ満載で「コロコロコミック」が好きそうな子に受けると思います。2025年1月現在で9冊も出ているので人気なのでしょう。
豪快だけど、女性には弱いおしりダンディ…インディジョーンズみたいな冒険譚が好きな方におすすめです(下品だけど笑)。
『すずのまたたびデイズ 』シリーズ
対象年齢…小学校高学年から
読み聞かせ…教室では不向き。ご家庭では、長いので少しずつ
こちらは横書きの児童書です。作者さんは原案のみで、絵も文章もそれぞれ他の作家さんがかいています。
主人公はおしりたんていが通っていた喫茶店「ラッキーキャット」の看板娘、「すず」さんです。
すずは、やりたいことが決まらず仲良しの友達2人とルームシェアをしながらバイトをして自分探しをします。
ガールズトークも楽しめる青春群像劇のようなもので、ティーンネイジャーが共感できそうな内容となっています。長女も「面白かった!」と言って、既存の本はすべて読んでいました。
この『パティシエしゅぎょうちゅう』でおしりたんていがチラッと出てきたのですが、探偵業はしてなさそうでした。意味深…。
終わりに
ちょっと今回は作者さんに厳しいことを書いてしまったけれど、それも今までの作品が素晴らしかったから!
「今まで子どもたちを楽しませてくれてありがとうございました!」という感謝の気持ちと共にこれからの新章の展開を見守っていく所存です。
それでは、ここまでお読みいただきありがとうございましたー!