『杉森くんを殺すには』(長谷川まりる/2023/くもん出版)

©くもん出版

高一のGW頃、結愛は杉森くんを殺すことに決めた。
結愛はまず、このことをステップブラザーのミトさんに相談したところ、ミトさんは「そうするしかないんだろうな」と、結愛の決意を止めなかった…。

結愛と杉森くんの関係は前半でほぼわかる。
物語は途中までミステリ風に進み、不思議なことに、皆、結愛が杉森くんを殺そうとする動機についてはスルーするのに、その手段については確認する。
私も同じ思いだった。

その後物語は複数のテーマが並走し、ラストを迎えても、これで一件落着と楽観できるものではなかった。
ただ、結愛と、結愛に関わった人々は、次のフェーズへと一歩進む終わり方だと思う。

一般向けの小説だと、行けるところまでギスギスにしようとか、底なしにドロドロにしようとか、作家はアクセルもブレーキも限界まで踏むことができるように思う。
本書は形式的に児童文学であり、図書館ではヤングアダルトやティーンズ向けに配架される類のものだ。
作家はその中で、このヘビーなテーマをブレーキを踏まずにアクセルとエンジンブレーキだけで巧く運転し、ギリギリの線で着地させた感じがした。

また、本作をファンタジーだと言う人が居ても、私は否定しない。
逆に、そちらへ踏み切った『カラフル』(森絵都/理論社)を、読んでいて思い出した。

今年の6月頃、忙しくて現実逃避気味に読み、読んで本当によかったと思った一冊。
野間文芸賞受賞おめでとうございます。

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