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『猫のヤーコプ』(トーマス・ヘルトナー/スヴェン・ハルトマン/犬養智子/エイプリル・ミュージック/1978)

©エイプリル・ミュージック

2024年9月の彩の国所沢古本まつりで見かけ、黒を基調にした装丁に惹かれて手に取ったところ、奥付に「発行:エイプリル・ミュージック」とあり、本文はキレイだが外見のコンディションが良くないせいか叩き売りのような価格だったので、思わず買った大人向け絵本です。

翻訳は当時のベストセラー作家の犬養智子、装丁は平野甲賀。
原書タイトルは「kleine katzengeschichten(小さな猫の物語)」、初版は1974年スイス。

内容はヤーコプ(JAKOB)というシニカルな猫の日常を描いたもので、10章の掌編と30個の4~8コマ漫画で構成。
カラーページはほぼなく、絵は小さめのカットのみ。

今の感覚からすれば、なんて大きな判型(A4変)なんだろうと感じてしまいます。
大きいと見栄えはいいんですが、この内容ならばA5のソフトカバーくらいの方が(今だと)読みやすいし、手に取りやすいです。

と、時代的な古さはめっちゃ感じます。
半世紀前の作品なので当然ではありますが。

発行所のエイプリル・ミュージックはCBS・ソニーの子会社で、同社はその後、出版部門はソニー・マガジンズ、タレントのマネジメント部門はソニー・ミュージックアーティスツ(SMA)へと分社化。
お笑い好きの方はSMAと言えば、錦鯉、ザコシ、バイきんぐ、や団のあのSMAかとピンと来るのではないでしょうか。

さらにその後、ソニマガはエムオン・エンタテインメントになり、今はもう存在しません。
商業出版の自由度は、バブル崩壊以降、ゆるやかに、でも力強く狭まっていくのでした。

その後の歴史を鑑みると、ソニーの子会社がこんなに自由な体裁の本を出せた時代があったんだなあと、感慨深いものがあります。

出版にすこぶる余裕があった時代だからこそ出せた本だとも言えます。

※画像は『猫のヤーコプ』とその2巻にあたる『猫のヤーコプのすてきな世界』(1978)の表1で、2巻のつくりはかなり絵本っぽくなっています。

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