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長崎原爆忌に

絵・文 葉祥明 / 英訳 長崎市  『On That Summer Day あの夏の日』(自由国民社、2000年)

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葉祥明氏が地雷や原爆をテーマに絵本制作を手がけておられたことを、無知な私は長い間、知らなかった。だからこの絵本に出会った時「メルヘンの画風で原爆をどう表現するのだろう?」と思った。ところが本を開くと、葉氏のタッチだからこそ悲惨さが殊更に伝わってくることに驚かされる。

主人公は「長崎市」…

わたしはナガサキ わたしは、すべてを受け入れてきました ながい歴史をそのようにして 生きてきました ......それがわたしの愛です
I am the town of Nagasaki.  I have always opened my arms to newcomers.  Century after century, this has been my expression of love.

資料編として原子爆弾の説明や長崎市民平和憲章も添えられている。英文対訳でゆっくりと味わい心に落としたい1冊だ。葉祥明氏のあとがきを一部引用させていただく。

今、生きている私たちは、美しい自然と、平和な地球を次の世代に、手渡す責任があります。荒れ果てた世界に住む未来の子どもたちから、「どうして? あの時、どうにかできなかったの?」と言われないように......
It is our responsibility to pass along to future generations a world blessed with the beauty of nature and with peace among all people.  If we fail, the children of some ravaged, desolate future world will think of us and ask, "Why didn't they do something when they had the opportunity?"

放射線被害は広島と長崎で終わらずに、福島はじめ東北地方にも及んでしまった。その上、世界的なパンデミックに加えて、地球温暖化による自然災害が後を絶たない。未来の子どもたちが「どうして? あの時、どうにかできなかったの?」と問うであろう「あの時」は、紛れもなく「いま」だと思う。