花火の記憶
蚊が苦手なので、夏よりも冬の花火のほうが落ち着いて眺められる。でも英国のそれは爆発地点が低すぎて、腰を抜かした幼い三男坊を支えながら見上げたので、腰が痛くなった。こんな自分が進んで花火大会に出向くことはまずないだけに、めずらしく出かけた多摩川の花火大会は、鮮明に記憶に残っている。それは教育実習で再会した同期に誘われてのプチ同窓会みたいなノリだった。同行者のひとりは鉄道オタクが高じてJRに就職し、中央線の線路の点検をしていると聞いた。後日、ぼんやり車窓から外を見ていると、汗だくになって働く彼の姿が目に入った。夜でも蒸し暑かったけれど、大会を観に行って良かったと思った。花火大会の醍醐味は、花火はもちろん一緒に観る人にもあるのだろう。
長い前置きはさておき、花火絵本のご紹介を。1冊目の主人公は、たぬきのぽんきち。オススメ対象は幼児〜 小学1年生。【以下ネタバレあり】
花火職人のおとうちゃんが忘れた夜食の握り飯を届けにぽんきちが出かけると、それを見た町のみんなも早々に仕事を切り上げて、ぽんきちについて行ってしまう。こうして町内のみんなが揃ったので、早めに花火大会を開催。ところが、ぽんきちの姿が見当たらない。表紙にあるように、ぽんきちはおとうちゃんと一緒に花火を打ち上げる側で見ているのだった。父を誇らしく思うぽんきちの嬉しさが伝わってくるようだ。
2冊目は大人気の幼児絵本。これを花火絵本とする位置づけるだけで既に【ネタバレ】だけど、お馴染みの方も多いはず。
新品のクレヨンたちが次々とステキな絵を描く中で、クレヨンのくろくんだけは仲間に入れてもらえない。
でも、やがてその「みんな」が描く絵は、それぞれの自己主張が強すぎて、めちゃくちゃになってしまう。くろくんをなぐさめてくれたシャープペンのお兄さんのアドバイスが秀逸。お兄さんの言うとおり、みんなが描いた絵の上をくろくんがまっくろに塗りつぶすと、つづいてシャープペンのお兄さんがそれを削り、めちゃくちゃだった絵を花火に変えてくれたのだった。
見開き一杯の花火の絵とくろくんの嬉しそうな笑顔で心が温まる秀作。
今年も多くの人々とって、花火が幸せな記憶となりますように。私は久々にライブで鑑賞しようかな。