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ねずみくんの場合

サルカニ気分を味わったあとに、このねずみくんを読むと心穏やかになります☺️

なかえよしを作・上野紀子絵『りんごがたべたいねずみくん』
ねずみくんの小さな絵本2(ポプラ社、2004年)

りんごの木を見上げている ねずみくん。【以下ネタバレあり】

とりくん やって きて
りんごを ひとつ
とりました。

ぼくにも
つばさが
あったらなあ

『りんごがたべたいねずみくん』より引用

ねずみくんは、木を脅すどころか、鳥に実を1つ取ってほしいと頼むことすらしません。たぶんできないのでしょう。ただ地面の上で、鳥のように飛べないか両手をバタつかせているだけです。

さるくん、ぞうくん、きりんくん、カンガルーさん、さいくんがやって来ても、ねずみくんはそれぞれの真似事をしてみるだけで、りんごの実を取ることはできません。

そこへ、あしかくんがやってきました。あしかくんが他のみんなとちがうのは、「ねずみくん いったい どう したの?」と声をかけることです。すると、ねずみくんは堰を切ったように、あしかくんに質問をたたみかけます。

ねずみくんは たずねました
  きみは そらを とベるかい?
  きみは きのぼり できるかい?
  きみは はなが ながいかい?
  きみは くびが ながいかい?
  きみは たかく とベるかい?
  きみは ちからが つよいかい?

『りんごがたべたいねずみくん』より引用

あしかくんの答えが秀逸です。

    どれも ぼくには できないや ……
    でも ひとつ
    とくいな ことが ある

『りんごがたべたいねずみくん』より引用

そういうと、あしかくんはねずみくんを鼻先で突いて木の枝まで飛ばします。すると、ねずみくんは1つは自分に、もう1つはあしかくんのためにりんごを取ってあげるのです。

最後のページは、あしかくんの鼻先ジャグリングで、りんご2つとねずみくんが
あしかくんの頭上で輪を描いてまわっているところで終わります。

教訓めいたことを一切語らずに、本来あるべき姿をさりげない優しさとユーモアで包んで提示しているこの絵本。ミニサイズですが、大切なメッセージがちゃんと詰まってます♡


🍎追記🍎
bbさまエモスクラップ2に加えてくださいました。ありがとうございます🙏
さるかにを読み直すまで、私はこの絵本の良さに気づくことができませんでした。この秋、大切な1冊になりました📕