無言の情景を紡ぐことば
『ゆきがやんだら』 は雪の日の母と息子のお話だったが、Owl Moon (邦訳『月夜のみみずく』工藤直子訳、偕成社) は父と娘がみみずくを探しに雪の森の中へと分け入っていくお話。光村図書の小学5年の国語教科書にも採用されていたので、ご存じの方も多いと思う。
娘の視点で語られる詩的なことばは、読者をともに森の奥へと誘う。
凍てつく寒さの中、ひたすら父に続いて歩く娘の息遣いまでも伝わってくるような臨場感。
この絵本を読むと、幼い頃に父の背中につかまってバイクで飛行場まで走った記憶が蘇る。バイクから振り落とされないように手に力を込めた緊張感。ことば少なな父の深い愛情を感じた瞬間。自分に詩心がなくて表現できないのが残念だが、それだけに無言の情景を美しいことばで紡いだ Jane Yolen の並ならぬ才に感嘆する。John Schoenherr が描くみみずくの迫力も圧巻。1988年コールデコット賞受賞。