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こわいパンプキン

ハッピーハロウィン🎃 今日はオバケたちがゾロゾロ出てくるので、仮装してオバケの仲間のふりをしないといたずらされるとか。そこで私は魔女スタイルで出歩くことにしました。メイクですか? そんなものは要りません。このままで十分通用します🧙‍♀️ふだんは怖がりな私でも、今日だけはオバケをこわいとは思いません。だって仲間なんですから。ところが、どうしたことでしょう。今度はパンプキンが怖くなってしまったのでした…。

ひとりごと🧙‍♀️
令丈ヒロ子 作・宮尾和孝 絵『パンプキン!模擬原爆の夏』
(講談社青い鳥文庫、2019年) ※初版2011年

【以下、ネタバレあり】
1945年8月9日、長崎に投下された原子爆弾は「ファットマン」だったが、それとほぼ同型の「パンプキン」爆弾を使って、7月20日から「ファットマン」を正確に目的地に落とす練習がなされた。パイロットは素早く150度旋回して衝撃波を回避する必要があったという。

この模擬原爆に核物質は積まれていないため、投下しても核爆発は起きないが、火薬が詰まった重さ約4.5トンの巨大爆弾による被害は、全国で死者400名以上、負傷者1300名以上に及んだ。落とされたのは、新潟、福島、富山、茨城、東京、静岡、愛知、岐阜、三重、福井、滋賀、京都、和歌山、兵庫、大阪、徳島、愛媛、山口の計49発。

文化祭の「模擬店」や入試の「模擬試験」なら聞いたことがあるが、「模擬原爆」なんてものがあったとは驚いた。それもそのはず、1991年に愛知の「春日井の戦争を記録する会」が米軍の文書を調べて明らかにするまで、公にされていなかった。

これを小学生の中級から理解できるように書き上げた令丈ヒロ子さんの筆力の凄さといったら、さすが若おかみシリーズの作者。原爆にも戦争責任にもさまざまな意見があることを踏まえた上で、ほぼ中立な立場を貫いている。主人公は5年生だが、模擬原爆パンプキンについてまとめた自由研究はわかりやすくて傑作。

ところで、模擬原爆を一番多く落とされたのは愛知県で計8発。極秘作戦だったパンプキン爆弾の存在を突き止めたのは30余年前。当時、中学校の社会の先生だった金子力かねこつとむさんが、春日井空襲の資料がB29の作戦記録に残っていないことに気づいて、26万枚のマイクロフィルムから読み解いたというから恐れ入る。本当にこわいのは、こうした事実を知らないでいることだ。隠された真実に気づかなければ、またいずれ同じ過ちを繰り返すだろう。

ご関心がありましたら、どうぞこちらの動画と資料もご覧ください⬇️

動画URL: https://youtu.be/IQ2oRMxrSqg?si=aUZ6FNPcSNwDHKwm
   2020年8月14日 CBCニュース「チャント!」より
「戦後75年~終戦前日に愛知県に落とされた“パンプキン爆弾”実は原爆投下の“練習”のため…その知られざる真実」

参考資料: 「模擬原爆パンプキンが名古屋、春日井、豊田に」(ピースあいちメールマガジンVol.43)

※後日見つけた以下の資料も追加させていただきます※
「模擬原爆「パンプキン」の着弾地点を79年ぶり特定なるか 不明だった神戸市の1発 神戸大学院生が調査」(東京新聞WEB 2024年3月16日)

パンプキン爆弾を調査する会 による武蔵大学の卒業制作の紹介記事⬇️
金子力さん、令丈ヒロ子さんほか、実際に模擬原爆を目の当たりにされた方々へのインタビュー等を含む、優れた卒業制作


ヘッダー画像に今回もアトリエぽーぽーさんのポストカードとハロウィングッズを使わせていただきました。また、ハロウィン賑やかし帯も使用させていただいております。どうもありがとうございました🎃