戦後まもなく
戦争が終わって1年も経たない頃… 【以下ネタバレあり】
山間の小学校で運動会が開催されている。かけっこ、綱引き、二人三脚などお馴染みの競技が繰り広げられ、勝者には景品が渡される。景品の中身は、みかんとお餅と鉛筆だ。そこに米軍兵がふたりやって来る。子どもたちは赤い髪や黒い肌に驚くとともに恐怖を感じる。だが、人懐こく礼儀正しいふたりは帽子をとって挨拶を交わし、校長から自転車を借りて曲芸を披露するのだった。歓声に包まれた後、一番大きな景品を贈呈されたふたりは、「アリガトウ、アリガトウ」と言いながら、手を振り帰っていく。
つい最近まで戦っていた敵国同士の人の有り様が感動的に描かれている。舞台が小学校であるだけに、次世代を担う子どもたちが平和を希求する展望が感じられる。邦訳は1998年に水田まり訳で新世研から出された。和訳の絶版が惜しまれるが、原著は電子書籍含めて入手可能。
同じ作者のコルデコット賞受賞作がこちら。【以下ネタバレあり】
若き日の祖父が蒸気船で太平洋を渡って北米へと旅した後、移住したが、やがて日本を懐かしく思い帰国。しかしサンフランシスコで生まれ育った娘は村に馴染まず都市部に移り住み、そこで恋に落ちて結婚して著者が生まれる。祖父は再びカリフォルニアの地を踏みたいと願うが戦争に阻まれて叶わなかった。
16歳になった著者は自分の目でカリフォルニアを見るために旅立ち、やがてそこで自身の娘が生まれる。けれども、子どもの頃を過ごした日本が懐かしくなっては、時々、帰国するのだった。
二つの祖国の間で揺れた祖父を慕う著者の思いに心打たれる。反戦の意思はどこにも記されていないけれど、これほど美しく反戦が描かれた絵本は珍しいのではないだろうか。邦訳は『おじいさんの旅』としてほるぷ出版から出ていたが、品切れで重版未定とのこと。原著は電子書籍も含めて入手可能。超おすすめの1冊。
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