ユーモラスで奥深い絵本
ハグの絵本に一目惚れした後、同じイラストレーターによるペンギン絵本も入手。
このやんちゃそうな男の子の名前はベン。ベンがプレゼントの箱を開けると中からペンギンが顔を出すところから、お話は始まる。【以下、一部ネタバレあり】
ベンはちゃんと挨拶のできる子だとわかる。
その上、「なにして遊ぶ?」と積極的に働きかけることのできる子でもある。
ベンは物言わぬペンギンをくすぐってみたり、逆立ちをしてみせたりして、なんとかしゃべらせようとするのだが、一向にしゃべらない。
そろそろ読者がペンギンはぬいぐるみかと思う頃
無視ならちゃんとできるんかい!とわかる。(笑)
それだけに、ベンはだんだん腹を立て始める。
(ベンは必死なんだけどユーモラスに描かれているので、この辺り笑いのツボ。)
ペンギンをロケットで飛ばしてみたり、ライオンに食べさせようとしたり。
でも、ライオンは物言わぬペンギンではなく、うるさいベンを食べてしまう。
その後、ペンギンがいかなる行動に出るかがクライマックス。
世の中には、おしゃべりな人もいれば、無口な人もいる。
それゆえ意思疎通がうまくいかないこともある。
だったら友情は成り立たないかというと、必ずしもそうではない。
物言わぬペンギンにはペンギンならではの表現方法があり、
しゃべらないからといって何も感じていないわけではない。
そんなことを考えさせられる、意外と奥の深い1冊。
以前うちで絵本棚一つの文庫活動をしていた時に、ご利用者さんにこの絵本を紹介したところ、早速購入するからと借りずにメモして帰っていかれた。ささやかでも活動できてよかったと思った想い出深い絵本でもある。
邦訳はもとしたいづみ訳で2007年にフレーベル館から出ているが、今は絶版のようだ。