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忘却の味

台風襲来前にせっせと収穫しながら今年はやけにゴーヤが小さいと嘆いていたら、なんのことはない、「ミニゴーヤ」という品種だった。手のひらサイズで観賞用。

観賞用だけにシルエットも風情があるような…

いつもはゴーヤを種から育てていたのに、今年はホームセンターで苗を見かけて買った。どおりで様子が違ったわけだ。忘れっぽいにも程がある。

あれは高校野球の地区大会のことだった。息子のクラスメイトが勝ち進んでいるというので、久しぶりに大きな野球場で観戦することになった。ところが大音量のブラスバンドと大歓声で末っ子がどうにも落ち着かない。遥か向こうの芝生席まで移動し、ようやく腰を下ろしたところで気がついた。お財布、免許証、携帯、鍵など全てが入ったショルダーバッグがない。再び応援席に戻ってみると、置き去りになったそれは、誰からも気づかれることなく座席の下で熱くなっていた。

「こんな大事なものを置き忘れるなんてやばいよ」と家族に心配されたが、これが初めてではなかった。

職場で両手に大荷物を持って移動することが多かった私は、その日も持ちきれないほどの荷物を抱えて席に戻ったところで電話が鳴った。「ハンドバッグをお預かりしてます」と同僚の声。

思うに、ぼーっとしている人の周囲には、神様の采配で親切な人が配置されるものなのかもしれない。しかし、その親切な人がいなかったら…と思うと背筋が凍る。さらに気がかりなのは、これが日常茶飯事だと認知症の兆しに気づけないことだ。

ミニゴーヤは観賞用でも普通に食べられるらしい。種とワタを取って塩と粗糖で苦味を抜き、さっと茹でてかじってみた。ゴーヤってこんなに苦かったっけ?  この苦さももう忘れていたのだった。

わが家の定番 ゴーヤのナムル
来年は忘れずに大きいゴーヤを育てよう😆


段落の修正に伴い写真を追加しました🙇‍♀️