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『ぼくは川のように話す』の魅力

2021年に出会った絵本でベスト1はどれかと問われたら、まちがいなく私はこちら↓

ジョーダン・スコット文 /シドニー・スミス絵『ぼくは川のように話す』原田勝訳(偕成社、2021年)

朝、目をさますといつも、ぼくのまわりは ことばの音だらけ。

『ぼくは川のように話す』本文より

ふだん何気なく使っていることばが、話すことに困難を抱える人にとって、どれほどの苦痛をもたらすものか、私たちの多くは気づかずにいると思う。周囲のみんなと同じようにスラスラと話せないやるせなさ、淋しさ。そんな心象を絵で表現するとしたら、どんな色と筆づかいがふさわしいだろうか。

学校では、毎朝ひとりずつ、世界でいちばん すきな場所について 話すことに なっていた。
きょうはぼくのばん。でも口が どうしてもうごかない。もううちにかえりたい。

『ぼくは川のように話す』本文より

そんな日の放課後、ぼくをお父さんが川へ連れて行ってくれる。黙って歩く二人。そうしていても、学校でうまく話せなくてみんなに笑われたことを思い出すぼく。

おとうさんは、ぼくの顔を見て、かたをだきよせ、川をゆびさした。
「ほら、川の水を見てみろ。あれが、お前の話し方だ」

『ぼくは川のように話す』本文より

ボコボコと泡立ち、波打ち、渦巻き、砕ける大自然に身を寄せながら、ぼくの中で何かが変わっていく。川の力強さ。堂々たる姿。

これは自身が吃音をもつカナダの詩人ジョーダン・スコットのことばに、同じくカナダの画家シドニー・スミスが絵を添えた合作絵本でありながら、文と絵がこれ以上ないと思えるほどに見事に融合している。ぜひ手に取っていただきたい1冊。


📘追記📘
伝吉さまが当記事を素敵なマガジンに追加してくださいました。どうもありがとうございます。拙い紹介文で恐縮ですが、この絵本は超絶オススメです。必要な方に届くことを願っています。