死神ってなんで神なんだろう。
『黒グルミのからのなかに』
ある日少年が起き台所に行くと、
あれ、いつもより家が静かです。
「そうだお母さんがいない。」
寝室に行くと、ベットに横になっているお母さんがいました。
「私はもう死んでしまう。死神がやってきて、天国に連れて行くんだ。」
少年は突然の言葉に信じることができません。
漁師村に薬を買いに行くことにします。
道すがら真っ黒のマントに身を包み、黒い鎌を持った人に話しかけられました。
「このあたりにある小さな家を探しているんだ。」
近くには少年の家しかありません。
お母さんの言っていたことは本当でした。
少年はこの人が死神であると気がつきます。
「家に行かせたら、お母さんの命をとってしまう。」
そうとわかると、ポールは死神におそいかかりました。
鎌を奪い取り、柄で何度も死神を叩きます。
死神はそれをよけるたびに、小さく小さくなりました。
ついにゲンコツの中に入る大きさになると、
黒ぐるみのからのなかに押しこみ海になげてしまいました。
死神のいない街になりました。
少年は家に帰ると、お母さんは起き上がり台所で料理をしています。
オムライスを作るのを手伝います。
まずは、卵だ。
だけど割ろうとお椀の縁に打ち付けても、われません。
庭に行ってじゃがいも、ねぎ、ニンジン、かぶを引き抜こうとしても、ぬけません。
「しかたないわね、漁師村に行って、魚を買っていらっしゃい。」
漁師村に行くと、漁師たちがもめています。
どうやら魚が1匹も網にかからなかったようでした。
お母さんに魚も買えなかった話をするとどうしてか尋ねられました。
少年は死神を黒ぐるみのなかに押しこみ、海に投げたことを話します。
「あなたは、私の命の終わりを認めずにこの世をすっかりおかしくしてしまったわ。なんとしても、死神をさがしにいくのよ。」
でも、そんなことをしたらまた母さんを連れにきてしまいます。でも、母さんのためならなんでもしたい。黒ぐるみを一生懸命見つけ出します。
くるみを開け、死神に鎌を返します。
胸が張り裂けそうでした。
「私を自由にしてくれたお返しに、かあさんを連れて行くのは今は、やめよう。漁師町で待っている者がいるんだ。」
そう言って死神は立ち去りました。
その日から、お母さんは100才を超えるおばあさんになるまで長生きしました。
私は今年、愛犬を無くしました。
ガンを患い、肺に体液が溜まる病気でした。
二ヶ月の必死の看病の中でだんだん弱っていく彼に、ただただ寿命を細く長くさせる方法をとっていました。家族もいろんな感覚が鈍くなっていました。
無理をさせてしまっているのではないか、死を無理やり遠ざけて、苦しませているだけではないのか。
彼を抱きしめてもう無理しなくていいよ、と囁いたそのよるになくなりました。
でも、死があるから、時間を意識して、今日を意識して生きられる、
死があるから、生きる喜びがあり、色づくのかもしれません。
だから死の神様で、死神なんでしょうか。