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Uber要らずの『うどんのうーやん』
こんにちは、トマトです。子育て・知育・日本語/英語絵本の読み聞かせ経験を活かして、絵本にかかわることを少しずつ発信しています。
今日の記事は、絵本『うどんのうーやん』について。食べ物なんにでも命をふきこんでしまう絵本作家の岡田よしたかさん。私が岡田さんの作品にハマった最初の絵本がこれです。
概要
絵本の概要です。
題名:『うどんのうーやん』
作:岡田よしたか さん
出版社: ブロンズ新社
発行年:2012年
漢字表記:なし
ページ数:32ページ
2012年の発行ですから、今と違ってUberも出前館も存在しなかった時代。近所の中華屋さんとかお蕎麦屋さんは、自ら出前を届けてくれていた時代ですね。
あらすじ
出版社さんの作品紹介によると、あらすじは以下のとおり
人手がたりないうどん屋さん。うどんのうーやんは、自分で出前にでかけます。
道を走っていると、からからのメザシやふにゃふにゃの絹ごしどうふと出会います。
やさしくてふとっぱらなうーやんは、どんどん自分のどんぶりに乗っけて、川をわたり山をこえ......
さて、無事に出前を届けることはできるのでしょうか!?。
急いでいるのに、いろんな困った人(というか食べ物か動物)に出会ってしまって、そのたびに助けてしまうという展開。でも出前を頼んだお客様への気持ちも忘れないという親切なうどんの話。何より、そもそも人手不足のお店を手伝って料理自身が自分を自分でデリバリーするというめちゃくちゃさ、なんという発想力!!!
関西弁なんか知らなくたって大丈夫
登場人物(ほとんどが人でなく食べ物か動物)が話す言葉は関西弁。日本語が母語ではなく、第二言語として学んでいる途中のお子さんには少しハードルが高いのですが、読み聞かせするとみんなゲラゲラ笑います。言葉以上にイラストのインパクトが強いので、話の展開は十分伝わります。
でも、一番ウケがいいのは、日本語を母語とするお子さんの小学校低学年から中学年くらいまで。
関西弁ができる人もできない人も、関西人(または関西うどん?)になりきって読んでみましょう。
常識は捨ててください
ナンセンス絵本の巨匠といえば、長新太さんですが、長さんの作品は話の展開に必然性がなく(ないからナンセンスなんですけどね)、私個人的にはぶっとび過ぎているなぁと思うことも多いのですが、岡田よしたかさんの作品のぶっとび方は、私にはちょうどほど良くてツボにはまってしまうのです。好みの問題ですね。
小ネタも満載
岡田さんのすごさは、話の合い間にちょこちょこ入ってくる小ネタのバリエーション。
公園で木綿豆腐にいじめられて落ち込んでる絹豆腐に遭遇します。木綿豆腐と絹豆腐、同じ豆腐ですが二つ並べてみると確かに木綿のが強そう。 子どもたちにしたら、同じ豆腐だと思っていたけど、何が違うんだろうと疑問に思う。実は作り方とか栄養素が違うんだよーと話すとすごく興味を持ってくれる。
落ち込んでる絹豆腐を前に「うすあげくん きみ しんせきやろ。なぐさめたり」と。え、なになに?油揚げと豆腐って、親戚なの?と疑問に思う。実は、油揚げは豆腐から作るんだよ、だからスーパーでも近くに並んでるでしょ。と話すと子どもたちは「へぇ~」となる。
難所の山を越えてホッとしたところに、トンビが飛んできて油揚げを盗もうとする場面が出てきます。子どもたちだけだとサラッと読み進んでしまうところですが、「鳶に油揚げをさらわれる」という諺を紹介してみると、うーやんのストーリーのおかげで二度と忘れない諺となる。
うーやんのおかげで、伝えたいけど伝える機会がなかなか無い日本文化について、ずいぶんと学べてしまうのです。あー、なんてお得かしら。
うどんは日本の代表的な食べ物
日本の主食といえば米ですが、うどんも全国各地にいろんなご当地うどんがあります。讃岐うどんや稲庭うどんなど。また食べ方も、きつねうどんやたぬきうどんなど、バリエーションに富んでいます。
私が生徒さんとこの絵本を読む時には、日本地図といっしょにご当地うどんを紹介しながら日本地図を学んだり、そこから発展して地図パズルを楽しんだり、時間と環境が許せば小麦粉と塩と水をポリ袋に入れてもみもみと、うどん作りを体験してみたりするのも楽しいアクティビティですね。うどんの体をなさなくても、小麦粘土遊び※になるので子どもたちは大喜び。学びのキーワードは、五感と楽しい体験だと私は考えていて、見て触って匂いを嗅いで(可能なら食べて)、という体験を伴うことで、遊びが学びになり、次の好奇心へとつながっていくのではないでしょうか。
※小麦アレルギーのお子さんも多いので、アレルギーのご確認は、お忘れなく
キツネはうーやんを食べたのか問題
絵本のレビューを読むと「最後がひっかかった」というレビューが散見されます。
実はこの時うどんの出前を注文したお客さんはキツネだったのですが、そのキツネは果たしてうーやんを食べたのか、食べきらなかったのか。最後のページを見て、疑問に思う方も多いはず。その疑問を解決すべく、自分なりのストーリーを作ってみるのも楽しいかもしれません。小学校高学年の課題として続編を考えさせたら、岡田先生顔負けの作品が飛び出してくるかもしれませんね。今度やってみようかな。
全部読みたい他の作品
食べ物に命を吹き込むのが得意な岡田よしたかさんですが、50作品以上の絵本をすでにこの世に送り出しています。(ブクロブより)最近では、食べ物ばかりでなく、『おにのふろめぐり』(小学館)や『ハブラシくん』(ひかりのくに)という作品もあったりして、新しい展開も期待できそうです。
まだ読んでいない新刊『フルーツパフェをちゅうもんしました』(PHP研究所)もイラスト見るだけで読みたくなります。またいつかご紹介できたらと思います。
その他にも『おにぎりにはいりたいやつよっといで』(佼成出版社)や、そのサンドイッチ版もあるんですね。いかん、今すぐ読みたくなってきた。
まとめ
岡田よしたかさんは、保育園でのお仕事を経験されてから本格的に絵本製作に携わった作家さんとのことです。子どもの笑いのツボ(私のも)を熟知している作家さんです。
どこまでも発想力が尽きることのない岡田さんの作品は、関西弁が多いのにダイナミックなイラストのおかげでストーリー展開が明確で面白い、かつ日本文化の紹介という面で、教材としても重宝する絵本だと私は思っています。今後の新作もとても楽しみです。
最後までお読み頂きありがとうございました。
やっぱり絵本が大好き!