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第45回絵本まるごと研究会

「ブックハウスカフェ」は古書店が立ち並ぶ本の街・神保町に子どもの本の専門店&カフェとして2017年5月5日こどもの日にオープン。絵本の聖地としてTVや本などで紹介されている現在のブックハウスカフェになるまでの軌跡と経営方法、理念について店長の茅野さんよりおはなしいただきました。
そして、A)読書離れ B)大人向け絵本 C)100年読み継がれる本 の3点について参加者と意見交換を行いました。

「ブックハウスカフェとはどんなところ?」

 前身の「ブックハウス神保町」は2005年から出版社が児童書とバーゲンブックを扱う書店としてギャラリーを併設し、絵本原画展や無料イベントを行うなど試験的な取り組みを行っていました。しかし2017年に閉店が決まり、何とか継続できないかと、スポンサー探しや経営計画の策定、作家さんたちとのオープニングセレモニーの準備など奔走された軌跡をおはなしくださいました。

 次に新刊書店の経営についての厳しい諸事情や創意工夫している点について詳細に教えていただきました。本の在庫は約1万2000冊。その売り上げだけでは運営費は賄えない。そこで飲食・イベント・場所貸しも加え4つの機能を持たせ、経営として成り立つように工夫されているそうです。
 「子どもが主役」の書店として、バリアフリーと子どもの目線を意識して店内環境を整え、自由に本を選べる配置にし、カフェ・バー・ギャラリー・貸しスペースを設置、ビジネススーツを着た男性や障害のある人でも気軽に入店できる雰囲気を創造し、「絵本を通じて(性別・年齢・職業・属性・宗教・国籍・障害の有無にかかわらず)すべての人が楽しめる書店にする」をコンセプトに選書、店内環境、ホームページ、イベント運営をおこなっているそうです。今では「子どもが絵本に出会う場所」から「絵本がある、人が人に出会う場所」へと発展しています。
 子どもの本の店が営まれた20年を経過して、神保町の街の景色は変革を遂げています。

 茅野さんが絵本の原画展を開催するまでの奮闘など無我夢中で取り組んでこられた体験談や出版業界・書店経営の実情についても詳しく解説して下さいました。柔らかな物腰の裏にとても熱い理念を抱かれており、「子どもの人権として、子どもが自分の足で行ける範囲で本屋さんがあり、自分の好きな本を選べる環境をながめていたい」という思いが印象的でした。そのモチベーションは「楽しい」「子どもはかわいい」で、私たち絵本専門士と志は同じで、興味津々で聴き入ってしまいました。

「意見交換会」で交わされた内容(抜粋)

A)読書離れ 

・「読書」は心を空っぽにして、本からのメッセージを受け取り、考え、心を満たすこと。癒し。何かと誰かとつながる体験。
・10分間読書タイムや親子の読み聞かせなどを通じで、子どもたちが読書を習慣として身につけるよう大人が関わっていくなかで、図鑑や漫画などをNGにする、選んだ本を否定するなど「読書」の範囲を狭めてしまわずに、楽しめるような取り組みが必要とされている。
・活字を読むことができるようになるまでは、耳からの読書や漫画や絵本の絵が理解を支えてくれる。読む力がついてきた段階で、その後の提案をしていき、寄り添い育てていく。
・大人自身が読書を日常に取り入れ、いつでも本が手に取れる環境を整える。
・本を選ぶとき、子どもが選んだ本・親が選んだ本・専門家が選んだ本を入れたら読書経験が豊かになる。

B)大人向け絵本

・絵本のジャンルは近年拡大している。子ども向けに描かれたものだけでなく、作家がメッセージを発信するため、アートとして、社会問題に対しての問題提起など多岐にわたって出版されている。境界線もあいまい。
・いろいろな体験を積んできた大人だからこそ理解できる内容や、子育て中の親への応援的なもの、売り上げを意識したものなどもあり、子どもと何を読むか選書する力も必要とされる。
・絵に力があれば、大人も子どももそれぞれの楽しみかたができる。

C)100年読み継がれる本

・3世代にわたって楽しむことができる、その思いを共有できる普遍的な内容の本。
・自分が子どものときに読んでもらった幸せな時間を子どもにも体験してもらいたいという思いが込められている。
・本とは「希望」「未来」。経営的観点からするとすぐに絶版になってしまう。残っていく本には子どもを幸せにする力がある。

研究会に参加して感じたこと

 絵本をきっかけに、世界が広がっている。時間・空間・場が共有され、ゆとりを取り戻すことができる。人が集うことで、街づくりになっている。これらのキーワードを受け、「こどもまんなか社会」とは、今のこどもたちのために、かつてこどもだった大人たちがこどもの心を思い出し、一緒に楽しみながらこどもが未来に希望をもてる社会を創ることなのではないかと感じました。絵本はそのきっかけを作るとても重要なツールといえるでしょう。絵本作家、出版社、書店、絵本専門士、子どもに絵本を手渡す大人たちが手を取り合って、子どもたちと喜怒哀楽を共にし、毎日を大切に過ごしていけたらと思います。(ともみ)

絵本専門士による絵本まるごと研究会は、絵本・応援プロジェクトに参加しています。

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