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第17回 絵本まるごと研究会

2020年12月5日、17回目となる絵本まるごと研究会を開催しました。12月は、昨年に引き続き「新刊絵本を振り返る会」です。参加メンバーが、2020年に刊行された絵本作品から、お薦めの一冊を紹介しました!

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『おくりもの』(BL出版 2020年)
作:豊福まきこ
定価:本体1,300円+税

 大好きな豊福さんの三作目となる作品です。主人公のハリネズミが自分が周囲の仲間の役に立とうと、皆にマフラーを編んであげるお話し。仲間たちがお礼にハリネズミに送ったものとは…?
近年、ハリネズミが登場する作品がブームのように刊行されています。ハリネズミの「ハリ」がキーとなる作品が多い中、本書は登場する動物たちがみんなで「ハリ」を包んで主人公を癒すストーリーに惹かれました。(学校司書 増田さん)

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『こどもたちはまっている』(亜紀書房 2020年)
作:荒井良二
定価:本体1,600円+税

新型ウイルス感染症の影響を受け、久々に訪れた書店で、真っ先に目に入った作品でした。一番惹かれたのがタイトルです。制作時には、子ども時代を思い出しながら描いていると荒井良二さんご本人がコメントしており、本当に子どもの心を代弁していると感じました。今年は、特に「待っている」子どもも多くいることでしょう。私たち大人がその期待に応えていくことが大事ではないかとしみじみ考えさせられました。(幼稚園教諭 福羅さん)

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『カールはなにをしているの?』(BL出版 2020年)
作:デボラ・フリードマン 訳:よしいかずみ
定価:1,500円+税

「小さなミミズの大きな仕事。なんのために?だれのために?どうしてそんなことをしているの?」という帯の見出しが気になって、手に取りました。
ミミズのカールは、自分の役割を探す旅に出ます。出会う動物たちから教えてもらえず途方に暮れている間に、カールが掘らなかった土は退廃してしまい……。
絵もストーリーも暖かく、さらに科学の要素がストーリーに織り込まれているところが面白い作品です。小さな生き物にでも地球上では、皆、大切な役割があるというメッセージが伝わってきます。何かに立ち止まって悩んでいる時に、きっかけをくれる絵本ではないかと思いました。(司会 中河原さん)

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『ぼくといっしょに』(ブロンズ新社 2020年)
作:シャルロット・デマトーン 訳:野坂 悦子
定価:1,400円+税

最初から最後まで、作品そのものを楽しめた絵本です。オランダでの刊行は2000年。20年を経て愛され続けた作品が、今年、日本で刊行となりました。
絵本の特長を活かした臨場感の演出、主人公の目線で進むストーリーと俯瞰的に見える絵の組み合わせなど、読者を物語に引き込む工夫が随所にみられる作品。細かに描き込まれた絵は、主人公の家を探させたり、経過した時間での変化に気付けるなど、何度でも楽しめます。(図書館司書 石坂さん)

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『うさぎになったゆめがみたいの』(BL出版 2020年)
作:おくはらゆめ
定価:本体1,400円+税

季刊誌「この本読んで!」の新刊紹介コーナーに掲載されていて、本書を知りました。一緒に絵本を読んでいる子どもたちが、内容と同じような動物のしぐさをするなど、コミュニケーションを楽しめる作品です。お話し会でとても喜ばれました。(保育者養成校教員 相沢さん)

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『どこちゃん』(PHP研究所 2020年)
作・絵:鈴木のりたけ
定価:1,200円+税

疲れている時でも、子どもから大人まで膝をつき合わせて楽しめる絵本です。最初は、主人公のどこちゃんの変化した部分を探すシンプルな内容ですが、次第に大勢の中からどこちゃんを探す内容へと難易度が上がっていきます。巻末には、答え合わせと共にどこちゃんではなかったキャラクターの名前も紹介されるなど、最後まで発見のある作品です。(保育者養成校教員 小屋さん)

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『山はしっている』(鈴木出版 2020年)
作: リビー・ウォルデン 絵: リチャード・ジョーンズ 訳: 横山 和江
定価:本体1,500円+税

新型コロナウイルス感染症で外出に制限がある中、山に行ったような気分になれる作品と、ネットで話題を呼びました。本書は、山の夜明けから一日の流れを追い、動物や景色の変化を紹介する内容です。その中で、変わらないのは、「生きている」と伝えています。絵のリチャード・ジョーンズは『きつねのはじめてのふゆ』(鈴木出版 2018)も描いています。(出版社 波賀さん)

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『パンフルートになった木』(少年写真新聞社 2020年)
文:巣山ひろみ 絵:こがしわかおり
定価:本体1,400円+税

被ばく樹木が樹齢を全うし、楽器という新しい役割を得た、広島の実話です。平和への願いだけでなく、希望を感じさせるストーリーに魅力を感じました。文は、パンフルートの音色を聞いたことが無くても、頭に音楽が流れてくるよう。絵は、子どもたち一人一人が音楽を心から楽しんでいる豊かな表情が印象的で、柔らかいタッチの中に力強さも感じさせてくれます。(印刷会社勤務 矢阪)

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『もりのきでんしゃ ゆうきをもって』(みらいパブリッシング 2020年)
作: ナカオマサトシ 絵: はやしともみ
定価:本体1,300円+税

著者のナカオマサトシさんが勤務する大学の卒業生で、寄贈されたことで、本書と出会いました。忘れてはならない東日本大震災の体験を、あまり教訓的にならないように分かりやすく伝えた作品です。もりのきでんしゃ「りん」が、地震と津波が起きた海沿いの町に、生き物たちを救いに行きます。出版社のWebサイトでは、著者ご本人が本書を読んだ音声を聞くこともできます。(大学教員 德永さん)

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『ふゆごもりのまえに』(福音館書店 2020年)
作:ジャン・ブレット 訳:こうのすゆきこ
定価:本体1,400円+税

アメリカの作家ジャン・ブレットさんが、デンマークでの体験を元に描いた作品。農場に暮ら動物たちや、冬景色が細部まで丁寧に描かれています。全てのページに描かれた額は、それぞれデザインが異なり、まさに力作!作者の愛情を感じます。冬景色の素晴らしさを聞いたハリネズミが、冬ごもりを思い留まり、眠たさをこらえるのですが……。ページをめくる度にハリネズミが出会う動物たちが登場するので、ワクワクするストーリーです。繰り返し読むたびに発見のある作品です。(保育士養成教員 野見山さん)

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『とうさんのてじな』(鈴木出版 2020年)
作:ねじめ正一 絵:いぬんこ
定価:1,300円+税

鳥取県に住むイタリア人の映像作家のお父さんとヨガ講師のお母さんの一家が絵のモデルとなっている作品です。どのページにもお父さんが描かれていて、かくれんぼのような楽しさがあります。一番好きなのが、キーとなる「いないいない…」という探している様子の描写。頭の中に言葉が巡る時によくある、円を描くような感じの表現が見事で、さらにその円を絵の枠になるように使っているのが素晴らしいです。(声優 冨田さん)

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2020年最後の講座を終えて

今年も素敵な絵本がたくさん刊行され、もっともっと語りたい作品があったのになぁ、という想いがヒシヒシと伝わってくる講座となりました。読んだことのある作品も、作品の魅力を聞いていると新しい気づきがあるものですね。
有意義な研究会になるよう、著作物の利用をお許しくださった関係の皆様に感謝します。

今年は、オンラインを活用した活動へと切り替わり、全国のお仲間と意見交換ができるようになりました。まだまだ手探りですが、来年もいろいろなことにチャレンジする研究会を目指したいと思います。(文責 矢阪亜希子)

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