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祖父母の想い出が詰まった家に暮らす

私は夫と2人の息子たちと一緒に、数年前から祖父母が暮らしていた家に住んでいます。

家具の配置はなるべくそのままに、祖父母の暮らしを受け継ぐ気持ちで過ごしています。

この家に越してきてまず台所で見つけたのが、ぽてっとして丸いフォルムの使い込まれた土鍋。
以前から土鍋でご飯を炊いてみたいな、と思いつつも一歩が出なかった私は、見つけた瞬間嬉しい気持ちでいっぱいになりました。
その日から今もずっと、毎日朝夕の2回せっせと土鍋でご飯を炊いています。
うっかり何度か蓋を割ってしまったこともありますが、その度に良いのか悪いのか、瞬間接着剤で繋ぎ合わせてまた使っています。

そもそも祖父母の家に住むきっかけとなったのは、もう10年ほど前の母との会話。
祖父が亡くなり、1人で暮らす祖母を心配して私の母が「おばあちゃんと一緒に住もうかな」と呟いたのが始まりでした。
当時、私の父は既に他界していて、兄は家を出ていたので、母と私の2人暮らし。
「それなら私も一緒に行って3人で住もうよ!」と私も乗り気でしたが、結局その話は叶うことなく、数年後祖母も亡くなり空き家となりました。

そのうち私は結婚し、母は1人暮らしをしていましたが、母が長年付き合ってきた病気がだんだんと進行し、思うように動けなくなっていく母を見て、今度は私が母との同居を考え始めました。
でも母の住む実家はマンションの一室で狭いし..そう思った時に思い出したのが祖父母の家でした。
幸い夫も同居に賛成してくれており、母にも何度も提案しましたが、「そうできたら嬉しいけど..」と、病院までの距離や訪問看護などの関係で祖父母宅での同居は実現しませんでした。

その後母も他界し、その次の春、夫は入社後初めての異動で偶然にも祖父母宅の近くのオフィスで働くことになりました。
これはもしかしたら、母や祖父母が「この家に住んだら良いよ」と言ってくれているのかも..と思い、住み始めたのでした。

元々は祖母と母と私の3人で暮らそうと話していたこの家に、
祖母と母と私ではなく、
母と私と夫でもなく、
私と夫と息子の3人で暮らし始めたこと。
不思議な巡り合わせだなと思っています。 

朝目が覚めて台所に行くと、
祖母と母が楽しそうに並んで朝食の準備をしている後ろ姿を思い出し、
ソファーに目をやると、和やかに談笑する祖父や親戚を思い出す。

この家には沢山の記憶が詰まっていて、もう会えない人たちの想い出が溢れていて、だからこそ祖父母が使っていたままに、いつでも優しい記憶を思い出せるように、そのまま使っていきたいと思っています。
いつかこの家を出るその日まで。


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