大人になって忘れてしまったもの
乗り物好きの息子たちが喜ぶと思って、
先日初めて出初式を見に行ってきた。
河川敷に消防車が並び、制服をビシッと着た消防隊の方々が凛々しく並ぶ姿を、土手に腰を下ろして息子たちと一緒に楽しんだ。
パンフレットの表紙に載っていた名物の放水ショーを無事に見終わり、「寒いし帰ろうか..」と夫と話していたら長男が「あそんでいこうよー!」というので、ちょっとだけ、を条件に渋々河川敷を歩き出した。
河川敷を嬉しそうに走り回る長男と、夫がリュックに忍ばせていたボールを子犬のごとくきゃっきゃと追いかける次男を眺めながら、
そういえば家族で河川敷で遊ぶのって初めてかもな〜とぼんやり思った。
そうしているうちに、いつの間にか厚い雲が割れ、陽が差し始めどんどん暖かくなってきた。
夫と息子たちは河川敷に落ちていた枝だか穂だかでちゃんばらごっこをしていたかと思うと、ごろんと寝っ転がって突然の休憩タイム。
その姿がなんだかとっても心地よさそうで、
普段なら、30過ぎの女が外で寝っ転がってるのってどうなんだろう...レジャーシートもないし服に草つきそうだし…とかとか思ってやらないところだけど、なんだか無性に寝っ転がりたい!
思いのままに勢いよく河川敷の草の上に大の字になった。
気持ち良い..!!
視界いっぱいに広がる空の青と、暖かい太陽の光が最高に心地よかった。
こんなに開けた空をいつぶりに見ただろう。
忘れていた感覚だった。
小学生の頃、仲の良い友達とよくお互いの家の屋上に上がって寝転んでは空の雲の流れをのんびり眺めていた。
遊んだ帰り道、空を見上げて夕陽が綺麗そうだと思ったらマンションの屋上まで駆け上がってオレンジの夕焼けを見に行った。
今日は流星群のピークだとニュースで聞けば、夜に1人庭に出て小さな空をただひたすら見上げていた。
いつの間にか、大人になった私はそのどれもしなくなっていた。
雲のかたちも、流れるスピードも気にしなくなった。
夕焼けが見えたとしても、急いで帰ってお風呂とご飯の準備をせねばと、時間ばかりを気にした。
流星群のニュースを見ても、寒いしいいやと諦めるようになった。
いつの間にか、美しいものに慣れすぎちゃっていたのかな。
眉間に皺を寄せてスマホを見て、時間を気にして、人の目を気にして、どれだけ美しい世界を見逃してきたんだろう。
息子たちが移動するというので、もっと寝転んでいたい気持ちを抑えて起き上がると、
寝転んでいたときは空の青しか見えなかったけど、思いのほか歩いてる人がいた。
やっぱりちょっと、恥ずかしくなった。
うーん、難しい。
でも草の上に寝転んだ時の、あの感覚はもう忘れないでいたい。