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労働基準法では、労働時間について「1日につき8時間を超えて働かせてはならない」(第32条)と規定されていますが、実際の労働現場では、勤務が翌日まで及ぶケースが少なくありません。このような場合、労働時間や残業時間、深夜労働時間をどのように計算するかが重要です。


✅通常労働日に2暦日にわたって残業した場合

通常労働日で労働が翌日にまたがる場合、午前0時で労働時間を分断するのではなく、前日の労働時間として通算計算されます。例えば、所定労働時間が午前9時から午後6時(休憩1時間)の会社で、午前9時から翌日の午前6時まで勤務し、休憩を2時間取った場合、時間外労働時間は次のように計算されます。

  • 労働時間の総計:30時(翌日午前6時)- 始業時刻(午前9時) - 休憩2時間 = 19時間

  • 所定労働時間8時間を差し引くと、時間外労働時間は11時間となります。

  • 深夜労働時間は午後10時から翌午前5時の7時間です。

この計算方法により、残業代や深夜割増賃金が正確に算出されます。

✅残業が翌日の始業時刻まで続いた場合

さらに、残業が翌日の通常業務時間に影響する場合は、時間の切り分けが必要です。所定労働時間が同じく午前9時から午後6時(休憩1時間)の会社で、午前9時から翌日の正午まで勤務し、休憩を3時間取った場合の時間外労働時間は以下のように計算されます。

1日目の労働時間は翌日午前9時までとし、午前9時を「33時」と考えて計算します。

  • 総労働時間:33時(翌日午前9時)- 始業時刻(午前9時) - 休憩3時間 = 21時間

  • 所定労働時間8時間を引き、時間外労働は13時間となります。

翌日午前9時以降は通常勤務となり、正午までの3時間は時間外労働ではなく通常の労働時間に含まれます。また、1日目の深夜労働時間は午後10時から翌午前5時までの7時間となります。

✅翌日が法定休日の場合の労働

翌日が法定休日である場合は、午前0時をもって労働時間が法定休日の扱いになります。例えば、午前9時から翌日午前6時まで勤務し、休憩を2時間取った場合、労働時間は次のように分けられます。

  • 1日目の時間外労働時間:午前9時から午後6時(所定労働時間8時間)の後、午後6時から午前0時までの5時間(休憩2時間を含む)が時間外労働となります。

  • 深夜労働時間:午後10時から午後12時の2時間。

  • 午前0時以降の労働時間は法定休日労働とみなされ、午前0時から午前6時までの6時間が法定休日労働時間となります。

さらに、午前0時から午前5時までの5時間は深夜労働時間に該当します。

✅勤務間インターバル制度の重要性

近年注目されている「勤務間インターバル制度」は、退勤から次の出勤までに一定の休息時間を確保する仕組みです。欧州連合(EU)では1993年からインターバル制度が法制化され、11時間以上の休息時間が義務付けられています。日本でも、厚生労働省が「職場意識改善助成金(勤務間インターバル導入コース)」を提供し、中小企業による制度導入を支援しています。

法制化の可能性が高まる中、早めに導入を検討することで、社員の働きやすい環境を整えるとともに、助成金の活用による経済的支援を受けることができます。

✅複雑な勤怠管理を効率化する方法

翌日をまたぐ勤務では、勤怠管理が複雑化することがあります。エクセルでの計算はIF関数などで対応可能ですが、勤怠管理システムを活用することで、より簡単に管理を行えます。

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岩本浩一@採用に強い社労士🌈社会保険労務士法人あいパートナーズ💓フォロバ100%、相互フォロー
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