人はなぜ、モノを集めてしまうのだろう
どうしても捨てられないもの、なぜか集めてしまうもの–––。
誰にとっても、何か一つはあるのではないでしょうか。
持ち主が心惹かれて集めたモノを展示した「シェアアトリエなるたの標本展」。愛媛県内子町五十崎の「シェアアトリエなるた」で開催されています。企画したのは、ゆるやか文庫の主宰であり、graftメンバーである青山優歩さん。改修前の構造が現しとなった空間を会場に、今後、この建物をシェアしていく仲間たちのモノへの愛が詰まった展示でした。
この展示を眺めていて、先日見たイベントの記憶がふと蘇りました。プロダクトデザイナーの安次富隆さんと鈴木啓太さん、ブランディングデザイナーの西澤明洋さんのトークイベントだったのですが、安次富さんと鈴木さんが集めているモノが紹介されていて、それがお二人のものづくりにもつながっているところが心に残っていたのです。
安次富さんが収集してしまうモノは、拾ってきた石とか流木、人工物など。多くの人は目にも留めないけれど、なぜか惹かれたモノたちを拾い、作為的にならないように磨いているそうです(それも何ヶ月もかけて!)。時には舐めることもあり、そうまでして、なぜ惹かれるのかということに向き合って、素材感や自然が生み出す造形を、五感を使って自分の体に落とし込んでいるところがすごい! 地場産業のつくり手が自然の中からヒントを得てデザイナーになれる仕組みを着想したのも頷けます。トークでは、「物は多様な物語を生むメディア」と語っていましたが、だからこそ、集めたモノを深堀りするって面白いなあと思いました。
Ancient Futures
https://www.deska.jp/past/6766.html
※安次富さんが拾い集めたモノの展示。見てみたかった。
一方、鈴木さんが集めているのは、土器や民具など、歴史が刻まれていたり、手仕事のモノ。すべてのモノには、技や知恵が詰まっていて、人が手で使う道具は誤魔化しが効かない。だから、集めてしまうそうなのですが、デザイナーとして過去と未来をつなぐ人間でありたいと思うからこそ、過去を学ぶ姿勢を持ち続けているそうです。
ものをつくる人は、集めてインプットして、新たなものを生み出す、そんな習性の持ち主なのかもしれません。「シェアアトリエなるた」で活動していくメンバーたちが持ち寄ったモノからも、その人が滲み出ていて、持ち主と話をしてみたくなりました。
改修前のシェアアトリエの空間は、下地の竹小舞が剥き出しの荒々しい土壁が見えたり、梁が見えたり、空間にいるだけでも良いインプットが得られそうな気がします。
展示は残すところあと1日、10月31日のみ。お見逃しなく!
また、今回の展示のメンバーの中から3名で11月8日(日)のRide-On市(松山市城山公園ふれあい広場)に「Champa & ぽたり珈琲 with neki」として出店するそうです。好好食堂Champaさんのエスニックフードとぽたり珈琲さんの珈琲が松山でいただけるチャンス!
オリジナルの和紙づくりに取り組んでいるnekiの酒井真弓さんは、テーマの自転車に合わせて、サイクリストが思わずニヤリとしそうな、和紙アイテムを試作中でした。私は、ついつい紙モノを集めてしまうのですが、また新たな紙モノと出会ってしまいそうです。
シェアアトリエなるたの標本展
会期:2020年10月23, 24, 25, 27, 31日
会場:シェアアトリエなるた2階(愛媛県内子町五十崎甲912−9)
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