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自由な発想で音を楽しむ、ヴァイオリニスト 原瀬万梨子

こんにちは!
”食欲の秋”&”読書の秋”を満喫している、note更新担当のたぬ子です。

しかし、今回は”音楽の秋”!!
松山市出身で、2019年に『Ensemble Mareアンサンブル マーレ』を立ち上げたヴァイオリニストの原瀬万梨子(はらせ まりこ)さんに、お話を伺いました。

[プロフィール]
■氏名
 原瀬 万梨子(はらせ まりこ) 
■ジャンル
 ヴァイオリン
■連絡先
 Mail:mariko.q11@gmail.com
■経歴
松山市出身。国立音楽大学音楽学部演奏学科ヴァイオリン専攻卒業ならびに室内楽コース修了。(公財)よんでん文化振興財団奨学生。これまでにヴァイオリンを景山誠治、徳永ニ男各氏に、室内楽を徳永ニ男、漆原啓子、木村徹各氏に師事。
第11回大阪国際音楽コンクールデュオ部門入選。プロジェクトQ第6章、第7章に出演。2013年、2015年N響チェロ奏者三戸正秀氏、宮坂拡志氏と共演。2014年松山市民会館にてソロリサイタルを開催。2015年第20回よんでん文化振興財団奨学生によるふるさとコンサートに出演。松前町総合文化会館にて、2018年松前町総合文化会館開館30周年記念事業原瀬万梨子ヴァイオリンリサイタルを、2019年三上亮・原瀬万梨子ヴァイオリンデュオリサイタルを開催。2019年より広く愛媛の音楽文化や音楽教育に携わる事を目的とする「Ensemble Mare」を立ち上げ、積極的に演奏会を企画、開催する。現在、倉敷ジュニア・フィルハーモニーオーケストラ、アンサンブル早島講師。(公)瀬戸フィルハーモニー交響楽団団員。

今しかできない聴き方をしてほしい

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楽器専門講座(令和3年度 別子小中学校)撮影

―昨年度から、原瀬さんに担当していただいている楽器専門講座は、いつも自由で楽しそうですね。

 私が小学生の時にも、学校で音楽家の演奏を聴きましょうって時間があったんですけど、ひたすら聴くだけで何をしていたのか内容を覚えてないんですよ(笑)
 なので楽器専門講座では、子どもたちの記憶に残るようなおもしろいことをできたらいいなあと思っています。

 例えば、寝ころんで聴いてもらうとか、音楽を聴いたあとに物語を作ってもらうとか、その物語を友だちと繋げていくとか…。
 聴くだけじゃなく音楽を元にいろんなことを発想してもらって、それを他のことにも活かせてもらえたらいいなと思っています。

―私が小中学生の時も、「三角座りして、じっと静かに聴きましょう」と聴くだけだった気がします。

 先生方は、「静かに聴きましょう」って言ってくださるんですけど、静かに聴くコンサートは大きくなってからでも行けると思うので、私の講座では「思ったことをその場で言っていいよー」って言ってから始めています。
 と言っても騒がしすぎると、困っちゃうんですけどね(笑)

 音楽活動をしていると、自分の言葉で演奏曲を説明することがあるんです。
 その時に曲への想いも、今伝えたいことも自分の中にはちゃんとあるのに、それを説明として言語化するのがいつも難しいんですよ。
 なので、音楽には”自分の想いを言語化する能力”が必要なんじゃないかと思っています。
 音楽に限らずですかね。思ったことを自分の言葉で表現できるっていうのは、きっとどの分野でも大事だと思います。

泳げるヴァイオリニスト

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―ヴァイオリンと、どうやって出会ったんですか。

 5歳の誕生日に、母がプレゼントしてくれたんです。
 私が「ヴァイオリンほしい!」って、言ったわけじゃないんですけど(笑)
 母も音楽をしていて、ヴァイオリンの音が家の中で聴きたかったから、子どもにヴァイオリンをさせようって思ってたらしいです。

―そこからヴァイオリン一筋ですか。

 いや、一筋ってわけではないんです。
 2歳ぐらいからスイミングを習っていて、ヴァイオリンを始めたころはスイミングの方が好きだったんですよ。実は、高校まで水泳部なんです (笑)

無限に広がるヴァイオリンの世界

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―ヴァイオリンの魅力を教えていただけますか。

 ソロやデュオ、トリオ、他にもオーケストラや室内楽、いろんな編成で弾けることと、ヴァイオリンは曲数が多いので勉強してもしても終わりがないことが楽しいですね。
 ヴァイオリンって、他の楽器に比べると圧倒的に使われている曲が多いし、ヴァイオリンのために書かれた曲も多いんですよ。
 だから、いろんな人と演奏ができるんですよね。それがおもしろくて、ここまでヴァイオリンを続けていられるんだと思います。

 それにヴァイオリンは、いろんな弾き方があったり、楽器1個1個で音色が全然違うんです。
 だから、友人の楽器と私の楽器の音色はもちろん違うし、巨匠たちの楽器とも全然違っていて、その違いが魅力だなって思います。
 いろんな人の音色を聴いたり、楽器を触らせてもらったりして、「この人の音色や楽器、素敵だなあ」って思えるのが、すごい嬉しいですね。

言霊って信じます?

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―演奏中に気を付けていることはありますか。

 演奏中に弦が切れるのが一番怖いので、スペアの弦はいつも置くようにしていますね。
 あと、張ってすぐの新しい弦は伸びきるまで、しばらく音程が落ち着かないので、本番の前に1度新しい弦を練習で使って、伸びきった状態にしてからスペアとして保管しています。

―実際、演奏中に弦が切れたことはあるんですか。

 意外と、私はないんです(笑)

 ただ、演奏中にヒヤッとしたことはあります。
 瀬戸フィルに入りたての頃、公演前にコンサートマスターが「E線(ヴァイオリンの1番細い弦)が切れたらどうしよう」って言っていたら、本番中ほんとに切れたんですよ!
 オーケストラって一応弦が切れた時のために、席の一番後ろにスペアの楽器を置いてあるので、弦が切れた楽器を後ろに回しながら、他のヴァイオリニストたちが自分の楽器を1個ずつ前に出して、最後に1番後ろの席の人が切れた弦を演奏中に替えに行くんですけど、

 その時、私が1番後ろの席だったんです!

 弦が切れたのが、第九の第1楽章の途中だったので、第2楽章に入る前までに替えなきゃいけなくて、そんな経験初めてで必死でした(笑)

―間に合ったんですか。

 ぎりぎり、間に合いました(笑)
 私はあんまり霊感とか信じないんですけど、あの公演から言霊ってあるんかもしれんと思って、本番前にマイナスの言葉は発しないようにしてます。
 「失敗したらどうしよう」とか「暗譜飛んだらどうしよう」とか思うけど、口に出したら現実になりそうな気がしてグッと堪えて、良いことしか言わないようにしていますね。

指先と楽器のケア

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―その他にも、普段から気を付けていることはありますか。

 指先の感覚はすぐ鈍ってしまうから、楽器を毎日触るようにしています。
 弾き続けていると指先の皮がどんどん硬くなっていくんですけど、皮の硬さが変わると、弦を押さえる感覚が変わってしまうんですよ。

 あとは、爪を伸ばさないようにしていますね。
 ちょっとでも伸びると「切らなきゃ切らなきゃ」と思っちゃいます。

ー弾いてる途中に、爪が弦に引っかかるんですか。

 爪が伸びとると、弦をしっかり押さえられないんですよ。
 あと、意外と弓を持つときに邪魔になってしまうんです。

―そっちなんですか⁉

 そうなんですよ。指をしっかり弓に乗せないといけないんですけど、小指の爪が長いと弓の木の部分が傷ついてしまったり、巻いている革がすり減っていってしまうんです。

 長いまま弾ける方もいるみたいなんですけど、私は全部の爪を切っとかないと落ち着かないですね。
 だから生徒さんにも、「爪切ってね」ってめっちゃうるさく言ってます。爪を綺麗にされたい方もいるので、あまり言うのは心苦しいんですけどね。

 爪を気にしているのは演奏へ影響だけじゃなくて、楽器を大事に使ってほしいって気持ちもあるんです。
 爪が伸びてると弦を押さえる指板しばんっていう、黒い板がちょっとずつ傷ついてえぐれてしまうんですよ。
 メンテナンスも大事やけど、メンテナンス行く前に自分で対処できることは最大限できたらいいなあと思っています。

2日間全4回 全て違うプログラムでの公演

第31回定期演奏会2

瀬戸フィル定期演奏会 原瀬万梨子氏より提供

―1番心に残っているのは、どのコンサートですか。

 2014年に行った瀬戸フィルのオペラ公演に、ゲストのコンサートマスターとして、東フィル(東京フィルハーモニー交響楽団)の現コンサートマスター依田真宣よだ まさのぶさんが来てくださって、「愛媛で一緒に室内楽の音楽祭をしませんか」って、声をかけてくれたんです(笑)

 「そんな無茶な!」って思ったんですけど、せっかく誘ってくださったので参加させていただくことにしました。
 そうしたら、依田さんが今一流の素晴らしいプレーヤーのお友だちを連れてきてくださったうえに、白水台のSOLIANIソリアーニで2日間全4回、全て違うプログラムでの公演だったんですよ!

 でも、お客様がすごく喜んでくださって、4回全ての公演に来てくださる方もいらっしゃいましたし、私たちにとっても、東京の第一線で活躍されている方たちの音を聴けて勉強になる時間でした。

 また会場選びも、室内楽ができた当時と同じスタイルで、音楽を身近に感じてもらいたいという想いから、”室内楽はとにかく小っちゃいところで”という依田さんのこだわりがあったんです。

 そんなふうに、演奏だけではなく空間も含め随所にこだわりのある音楽会を、お客様に体感していただけたのがすごく嬉しくて、「ああ、こういうコンサートを愛媛でも続けてできるようにしなきゃなあ」って思いました。
 この音楽会がきっかけで、今やっていること、この先やっていきたいことに繋がっていくんです。

こだわりのつまった『Ensemble Mare』

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―その公演があって、Ensemble Mareアンサンブル マーレを立ち上げられたんですか。

 そうなんです。
 私が素晴らしいと思っているプレーヤーを、県外から呼んでくるだけじゃ魅力が伝わらないこともあるので、Ensemble Mareでは、まず地元で活躍されてる方を呼んで音楽を楽しんでもらうところから始めたいと思っています。

 また、ちょっと変わった編成や、耳馴染みのないけどおもしろい曲をやっていこうと思っていて、1回目の公演は弦楽器のコンサートにしては珍しくピアノ無しで、ヴァイオリンとチェロの2本で演奏したんですよ。

 他にも、いろいろ企画は浮かんでいるんですけど、コロナでまだ2回しかやれてないんです…。
 というのも、お客様にプレーヤーの息遣いとか、綺麗な音だけじゃなくて弓と弦のこすれる摩擦音とかを感じてもらいたいなって思っていて、50人キャパぐらいの小っちゃい会場にこだわっているからなんです。
 そういう小っちゃいスタジオやホールって、今借りれないんですよね。

次はどこで演奏しようかな

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―今後、愛媛でやりたいことはありますか。

 今まで、Ensemble Mareは松山だけでコンサートをしてきたんですけど、今後は愛媛のいろんなところで活動していきたいと思っています。
 松山以外にも、いい場所はたくさんありますし、意外な場所で弾いてみるもの楽しいだろうなって思います。

 前に、久万高原天体観測館で演奏させていただいたことがあるんですけど、木造りなので意外と木同士が共鳴して、すごく弾きやすかったんですよね。
 天体観測館なので星にちなんだ曲や、宇宙っぽい不思議な曲を演奏しました。こんなふうに、テーマを決めてプログラムを作る演奏会もシリーズ化したいですね。

 あと、子どもたちに興味をもってもらえるのが1番いいなって思ってるので、楽器専門講座みたいな学校公演をできたらいいなって思ってます。

絵しりとり えんぴつ ⇒ つ○○

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ー絵しりとり企画があるんですが大丈夫ですか?

 絵しりとりですか⁉絵に自信ないんですよね。
 しかも「つ」!!「つ」かあ…。何かあります?

ー前々回も「つ」だったんですけど、なかなか無いですよね。

 普通のしりとりだと出てくるのに、絵しりとりだと難しいですね。

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取材の最後に、ヴァイオリンを弾いていただき、大きなホールでは感じることのできない、息遣いや演奏中の雰囲気を感じることができました。
Ensemble Mareの次の公演が、とても楽しみです!

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