新感覚の公演を展開するサクソフォン奏者 井上ハルカ
こんにちは!note更新担当のたぬ子です。
今回は、八幡浜市出身でソロ活動以外にも、インペトゥス・サクソフォンアンサンブル(ソプラノサクソフォン)、サクソフォンカルテット・アニマ(バリトンサクソフォン)、現代音楽ユニットDuo Märzで活躍されている、サクソフォン奏者の井上ハルカさんに、現代音楽や電子音響を取り入れた作品のおもしろさなど、お伺いしました。
サックスってかっこいい!
ー サックスを始めたきっかけを教えてください。
中学校の時に入っていた音楽部で、サックス、トランペット、トロンボーン、ドラムでビックバンド編成の演奏をしていたんですよ。
そこで最初は、トロンボーンだったんですけど「サックスって、かっこいい!」と思って、2年生からサックスに移動させてもらいました(笑)
演奏者の位置や姿勢が指示してあるの⁉
ー 送っていただいた写真の中に、寝ころんで演奏されている姿がありましたが、あれはどのような場面なんですか。
あれは、演奏者の位置や姿勢、演奏方法の指示が楽譜に書いてある演劇のような要素が入った現代曲なんですよ。
ー ということは、動きながら演奏をされるんですか。
そんなにたくさん動くわけじゃないんですけどれも、あの作品は元々クラリネットと打楽器、声楽のための曲でして、クラリネットを今回サックスに置き換えて演奏しました。
声楽の方は声を出しながら、打楽器とサックスは演奏をしなが、同時に演技のようなものもする、すごくシュールな曲です。
ー 演奏者は動かないイメージがあったんですが、そのような曲もあるんですね。
現代曲なので、理解するのが難しいところもある曲ではあるんですけど、こういう演劇と合わさったような曲もありますね。
海外では避けては通れない”現代音楽”
ー 現代音楽を演奏される方は多いんですか。
そんなに多くはないと思います。
日本の音大だと、4年間の中で現代音楽に割ける時間は、あまりないでしょうし…。クラシカルな作品をされる方が多いです。
ー では、井上さんはどういったきっかけで現代音楽を演奏され始めたんですか。
私、日本で勉強してた時は、あんまり現代音楽好きじゃなかったんですよ。ギャーとか突然鳴ったりすることもあるし、キレイな音でもなくて、当時は訳分かんないと思っていました。
だから「ちょっと苦手だな」と思っていたんですけど、留学してリヨン地方音楽院から、パリ国立高等音楽院に入るための課題曲の中に、現代曲が何曲か必須であったんです。もう、やらざるを得ない状況で…。
何度か受けていた国際コンクールでも、必ず現代曲を入れないといけなかったので、海外に出たなら避けては通れない曲でした。
でも、やってみると思いの外おもしろくて。
現代曲は、クラシックで出すような普通の音を出さなかったりするので、いろんなテクニックを勉強できましたし、現代曲をたくさん練習したことによって、クラシックの演奏でより繊細な表現ができるようになりました。
パリ国立高等音楽院では、サックスのパイオニア的な先生に付いて、いろいろな曲を勉強して、更に「現代曲っておもしろいな」と思いましたね。
学生期間が長かったので、その分いろんな作品と出会って、現代曲以外にもサックスができる以前の曲など、幅広い時代の曲に取り組ませてもらいました。
だから、日本ではあまりやらないようなレパートリーも、たくさん経験させてもらいましたね。
たぬこさんは現代音楽が、どんな感じか分かりますか?
ー お話を伺っていると、現代美術と似ているのかなとは思ったのですが。
たぶんそういうイメージでいいと思います。
現代音楽にも、いろいろな傾向があるんですけれども、メロディーがあって聴いていて美しいと思う音楽とは、またちょっと違うかなという感じで。
でも、聴いたことのない音の中で「今、宇宙にいるみたい」とか、未知の空間にいるように感じたり、ものすごい感情の爆発だったり、そういったものが表現されていて、とてもおもしろいですよ。
どのサックスが1番なんて選べない
ー 井上さんは、様々な音域のサックスを吹かれていますが、1つの楽器に絞って演奏されなくてもいいのですか。
人によって得意不得意はあるので「この楽器しか吹かない」という方も結構いるんですけど。
私が行っていたパリの学校では、全ての楽器を一通り吹けるようにという教えだったので、そこでとりあえず全部吹けるようにはなりました。
初めは、大きな楽器すごく重いし、しんどくて苦手で、小さな楽器の方が得意だと思っていたんですけど。
最近やっと大きな楽器の吹き方が分かってきて、楽器それぞれの良さを伝えられるようになったので「まんべんなく吹きたい」と思っています。
ー 全部で何本楽器をお持ちなんですか。
4種類持っているんですけど、アルトが2本あるので全部で5本あります。
ー アルト2本は、音などに違いがあるんですか。
音は違いますね。
同じメーカーなんですけれども、1本目のアルトを16年程使っていて「そろそろ買い替え時かな」と思っていたところに、新しいモデルが出たので、1年半前ぐらいに2本目のアルトを購入しました。
だから、同じメーカーでもモデルが違うので、音色の傾向や吹き心地が違いますね。どちらにもいいところはあるんですよ。
ー 新しく楽器を買われたら、そちらばかりを吹かれるんですか。
私は、新しい方に慣れるために古い方はちょっとお休みして、新しい楽器ばかり吹いています。
ー 慣れるというのは…。
指を置くキーの位置が若干違っていたり、指は一緒なんですけど連動するキーが違っていたりメカニズムが違うので、まずはそこに慣れるように。
あと、サックスって結構音程が悪い楽器なんですよ。だから自分で音程を狙って吹かないと、すごく音痴になってしまうんです。
その音程感が、楽器によって違うので、それに慣れるためにも新しい方をずっと使ってます。
高3で知った”音楽を仕事にする方法”
ー いつ頃から、プロになろうと思われたんですか。
最初は、プロというか”音楽を仕事にする”という選択肢が全然なかったんですよ。商業科の高校に行っていたので「卒業したら商業とか、経済の勉強をするのかな」とぼんやり思っていましたし。
そんな高校3年生の春『バンドジャーナル』という雑誌で、”音楽を仕事にする”道があると知って、雑誌に載っていたのは専門学校だったんですけど、オープンキャンパスに行って「ここ行きたい!」となりましたね。
その学校は、公務員の音楽隊などを目指すコースがあったので「公務員だったら、親も反対しないんじゃないのかな」と思って入ったんですけど、習っているうちに留学したくなってしまって。
というのも、専門学校の先生も留学を経験されていて、向こうと日本の違いを先生から聞いたりしているうちに、私負けず嫌いなんで「海外に上手い人がたくさんいるなら、向こうで挑戦したい!上手になりたい!」と思ったんです。
新感覚の電子音響公演
ー 様々なジャンルでコラボレーションをされていますが、どのジャンルがお得意ですか。
「おもしろいな」と思ったのは、電子音響とのコラボレーションですね。
スピーカーを客席の周りにいっぱい置いて、事前に録音した自分の音をぐるぐるとスピーカーから流しながら、自分も吹く曲だったんですけど、すごくおもしろくて。新感覚でした。
他にも、自分が吹いた音をマイクで拾って、パソコンのプログラミングを通して、スピーカーから加工した音を出す曲もあります。
来年度は、打楽器とやっているデュオでも電子音響の公演をやろうと思っていて、1人でもおもしろい電子音響に打楽器が入ることで、よりおもしろさが広がるだろうなとわくわくしています。
「あったらよかったのに…」を活かした活動
ー 今後、愛媛でやりたいことを教えてください。
電子音響の公演をできるならやりたいですし「こんな刺激的な音楽があるんですよ」って、愛媛の人にも聴いていただきたいです。
先日、八幡浜でインペトゥス・サクソフォンアンサンブルの公演をしたんですけど、その時に中学生と共演する機会があったんですよ。
一緒に吹いたのは2曲ほどだったんですけど、こういうことをもっとやっていきたいなと思いました。
私が中高生の時には、こんな機会全然なかったので「私の時にもこういうことあったらよかったのに」とすごく感じて。
地元や田舎の学生さんたちと共演したり、教えに行ったり、何か関わることができたらいいなと考えています。
絵しりとり かに ⇒ に○
今回は、オンラインでインタビューを行ったため、イラストをメールで送っていただきました。
元気をいただけるカラフルな絵ですね!
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