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自分自身に、生徒に、真摯に向き合う 木藤麻衣子

こんにちは!note更新担当のたぬ子です。

以前、たぬ子はフルートを鳴らせないとお話しましたが、インタビューをとおして、「もしかしたら鳴らせるかもしれない!」と、希望の光が見えてきました!

今回は、幅広く音楽活動を行うとともに、音楽教室を主宰し後進の指導にあたられている、フルート演奏家の木藤麻衣子きどうまいこさんに、フルートの魅力や演奏活動とレッスンの違いなど、お伺いしました。

[プロフィール]
■氏名
 木藤 麻衣子(きどう まいこ) 
■ジャンル
 音楽(フルート)
■経歴
 松山市出身。
 武蔵野音楽大学附属武蔵野高等学校を経て、武蔵野音楽大学音楽学部卒業。
 パリ・エコール・ノルマル音楽院をフルート科・室内楽科ともに審査員満場一致のプリミエ・プリで修了。(公財)よんでん文化振興財団より国内大学在学生、海外留学生として奨学金を受ける。
 パリUFAM国際コンクール第1位、ピカルディヨーロピアン音楽コンクール第1位をはじめ、国内外のコンクール多数入賞。
 2009年サイトウ・キネン・フェスティバル松本「子どものための音楽会」に、小澤征爾音楽塾オーケストラメンバーとして出演。2011年、2014年に松山市においてソロリサイタルを開催。
 これまでにフルートを橋本道子、佐野悦郎、工藤重典、V.リュカの各氏に、室内楽をN.パタルチェック氏に師事。
 現在、愛媛県を拠点に幅広く演奏活動を行うとともに、音楽教室を主宰し後進の指導にあたる。日本フルート協会代議員。

小さなころから音楽一筋

ーいつ頃からフルートを始められたんですか。

 母の友達に楽器を譲っていただいたことがきっかけで、小学校6年生ぐらいの時から習い始めました。
 母も音楽をやっていたので、小さい頃から母にピアノを教えてもらっていて、その延長線でフルートもという感じです。

ーそこから、どういう経緯で「プロを目指そう」と思われたのですか。

 自分から「プロになりたい」と思ったというよりは、母や周りが音楽家の道に進むように促してくれました。

ー進む道として、フルート以外に興味をもたれるものはありましたか。

 ピアノで音楽の道に進む、という選択肢もありました。
 ですが、音楽以外に何か打ち込んでたものというのは、特にはなかったですね。

ー”音楽”の中で、ピアノかフルートかという選択だったんですね。

 母の影響があるんだと思うんですけど、小さい頃からずっと音楽が身近にあったので、興味は自然と”音楽”に向かっていました。

異国で感じた”日本人”の自分

写真提供:木藤麻衣子

ーフランス留学中の出来事で、思い出に残っていることを教えていただけますか。

 私は、パリの音楽院に留学したんですけど、そこで出会ったクラスメイトの子たちと、教会やいろいろなところでコンサートをしたり、切磋琢磨した日々が1番心に残っています。

ー海外では、教会で演奏することって多いんですか。

 すごく多いですね。
 街のいたるところに、誰でも気軽に入れる、ちっちゃな教会がたくさんあって、そこで毎週いろんな人がコンサートをしているんですよ。
 海外では、そういう文化が根付いてるんだなって感じました。

ー他にも、日本との文化の違いを感じることはありましたか。

 それは、もうたくさん!(笑)
 文化というよりは、国民性かなという感じですけど、パリに行って「自分は、日本人なんだな」って、すごく実感しました。
 パリは、いい意味で大雑把だったり、物事が予定どおりに進まないのが当たり前みたいなところがあるので、合う人にはすごく合うと思うんですけど、私は「日本のほうが向いてるな」って(笑) 

ー演奏されていて、お客さんの反応に違いはありますか。

 海外では、ダイレクトな反応をされますね。素直というか。
 音楽に限らずですけど、いいものはすごくいい!っていう表現をするし、反対にあまり好みじゃないものは、好きじゃないって、はっきりと自分の意見を言われます。 

苦しみも悩みも、今までの時間を糧にする

ー留学から戻られたあとは、どのような活動をされていましたか。

 松山に戻って、演奏活動とレッスンを始めました。
 最初は、「東京でお仕事を」って思っていたんですけど、せっかくなら地元の人に演奏を聴いてもらったり、レッスンでフルートに親しんでもらいたいと思って、愛媛で活動していこうと決めました。

ー演奏とレッスンで、気をつけていることは異なりますか。

 別ものです。
 演奏は、ポジティブな状態でステージに立てるよう、本番までに準備を重ねて不安要素を取り除く、自分自身と向き合う仕事で。
 レッスンは、吹き方や身体、感覚が生徒さんによって違うので、その人に合った言葉がけや、アドバイスなど、相手と向き合う仕事だと思っています。

 ただ、自分のクセを直すことや、理想の音を出すことに対して、悩んで苦しんできた時間は、レッスンをする時にすごく糧になっています。
 今まで、楽しく演奏や練習をしてきたというよりは、悩んできた時間の方が長いので、生徒さんが悩んでいることは、ほとんど自分が経験してきたことなんですよ。
 悩んでいた時は苦しかったし、しんどかったけど、生徒さんにアドバイスをする上では、すごく役に立っているなと毎日実感しています。

ー先生の実体験で、アドバイスをしてもらえるのはいいですね。

 そう思ってくれてると嬉しいんですけど(笑)
 自分が感覚的にしている身体の使い方を、生徒さんに言葉でアドバイスするのは難しいですね。
 伝えたいことを、同じ意味で受け取ってもらえてるだろうかとか。
 感覚を言葉にした時に、ぴったりの言葉を見つけられなかったりとか。

 動かしてほしい身体の部位に、生徒さんの意識がいってなかったら、動かすところが分からなくて、「どこを…?」ってなったりしますしね。
 「開く」「力をいれる」という言葉も、人によって感じ方が違うので、生徒さんに合わせた言葉を選ぶようにしていて。
 特に大人の生徒さんは、言葉で細かく伝えすぎると、頭で考えてから身体を動かす方が多いので、”どこまで伝えるか”を慎重に見極めています。

考えを変えてくれた”1本の楽器”

ー今使われているのは、何本目のフルートですか。

 私の場合は、現時点で3本手元にあって、最初にもらった楽器は中学生の時まで、次の楽器は大学生まで使っていて、大学生の時に買い替えた楽器をずっと使っています。
 そして、最近4本目を注文しました!

ーどういったきっかけで、買い替えるんですか。

 今までは、先生からのアドバイスがあったタイミングで、変えていたんですけど、今回は「もっと、思い描いたとおりの音を出したい!」って欲が出てきたので、その音を求めて新しい楽器を探しました。

 数ヵ月使って、すぐに買い替える人もいるし、1本を長く使う人もいるので、買い替えのタイミングは人それぞれですね。
 ただ、私は自分が吹けないことや、できないことを楽器のせいにすることに抵抗があって、「楽器に合わせて、自分が変わらないといけない」と思っていた部分が、すごく大きかったんです。
 だけど、たまたま楽器を修理に出した時に、貸してもらったスペアの楽器が、すごく吹きやすくて(笑)
 楽器によって個性があるんだってことを、そこで初めて実感しました。

 これまで、楽器に合わせて自分が変わることに、すごく時間を費やしてきたんだけれども、意外と楽器や頭部管を変えるだけでも、何割かの問題は解決されるのかもしれないなと。
 それなら、自分の求めているものや、足りない部分を補ってくれる楽器と巡り合いたいなって、その時に思ったんです。

ー何本ぐらい試奏されたんですか。

 たぶん、20本ぐらいかな。
 ほんとだったら、東京や大阪の楽器店に出向いて、試奏させてもらうんですけど、コロナでできなくて。
 それを楽器店に相談したら、「楽器を全部送ってくれる」って言ってくださったんですよ。ほんと親切に対応していただいて。

 最初はぼんやりとしていた要望も、試奏を重ねるうちに、自分が求めてるものが分かってきて、理想の1本を選ぶことができました。

ー最終的に、どういうものを選ばれたんですか。

 単純に言うと、鳴らしやすい楽器です。
 今の楽器は、息を吹いてから音が響くのに、ちょっと時間がかかるんですよ。息と音に時差があるというか。
 それによって、変なクセがついていた部分もあったので、そこが改善できる楽器がいいなと。

 最後、低音から高音までバランスよくすごく鳴る楽器と、今回選んだ楽器とで、悩んだんですけど。
 自分の演奏する曲や演奏の編成を考えると、音色の大きさよりは、自分の求めている吹き心地を重視しようと思って、吹いた瞬間に「吹いた息が、そのまますぐ音になる!」と、衝撃を受けた楽器にしました。

一喜一憂する、お客さまの反応

ー演奏中に、ドキッとしたことはありますか。

 何回もあります!(笑)

ー1番思い出に残っていることを、教えてください(笑)

 くしゃみが出そうになったことです(笑)
 もちろん暗譜がとびそうになるとか、運指を間違えるとか、息がうまく吸えなかったとかってちょこちょこしたことも、たまにあるんですけど。
 生理現象を止めるのは、ほんとに難しくて…。
 「今、くしゃみするわけにはいかん!」と、その時は堪えれたんですけど、すっごい苦しかったです。
 我慢しすぎて涙が出てきちゃって、泣きながら演奏するみたいな(笑)

ー感動とか、いい意味で演奏中に泣かれたことはありますか。

 泣きそうになることは、よくあります。
 お客さまの反応で、こちらもグッとくることがあるんですよ。
 でも、泣くと演奏に支障が出てしまうので、泣かないようにしています。
 あと、お葬式で演奏することが何回かあったんですけど、その場の雰囲気を受け取ってしまうと、絶対泣いてしまうので、なるべくフラットな気持ちで演奏するようにしていました。

ー演奏中に、お客さんの反応って見れるんですね。

 照明にもよるんですけど、結構見えてます。
 知り合いが、どこに座っているのかも探せますね(笑)

ーコンサートだと体を動かして聴いてしまうので、見られてると思うと恥ずかしいです(笑)

 そんな風に聴いてもらえてると、嬉しいですよ。
 すごく近い距離で聴いてくださってるんだなと思いますし、そうやって音楽を体で感じている方がいらっしゃると、リラックスして演奏できます。
 私は、お客さまの反応に一喜一憂しちゃうので、無反応で微動だにせず聴かれると、「あぁ、どうしよう」ってなりますね。
 なので、リズムとって聴いてくれる方、大歓迎です!

 学校での演奏だと、子どもの反応って素直なんで「この曲は良かったんやね」とか、「おもしろくないんだね」ってのは、すぐ分かります(笑)

ー子どもたちって、ほんとに素直な反応してくれますよね。

 知ってる曲だと、曲のジャンルに関わらず反応がいいですね。
 でも、感想文を読ませてもらうと、ウケないと思いつつ演奏した曲に、意外といい反応があったりして、おもしろいです。
 だから、事前に子どもが好きな曲・ウケない曲って仕分けて、好きな曲ばかりのプログラムを持って行くんじゃなくて、いろんな曲が詰まった幅広いプログラムにしています。

新しいレパートリーへの挑戦

写真提供:木藤麻衣子

ー今後、愛媛でやりたいことを教えていただけますか。

 とりたてて”これ”をということはないんですけど、ここ2年ぐらいコロナの影響で、小さな場所での演奏会ができていないので、それをまたできるようにしたいです。
 ホールでの演奏は、徐々にできるようになってきているんですけど、サロンコンサートのような、お客さまがほんとに近いコンサートって、全然できてないんですよね。

 あとは、いろんな楽器の人と共演したいです。
 ピアノやハープと共演して、自分のレパートリーになっているものもあるんですけど、そこからもう一歩踏み出したい。
 いつも違うアンサンブルや、選んでこなかった曲に挑戦して、演奏の幅を広げた先に、思ってもいなかった新しい表現があるのかなと思っています。 

 また、愛媛は吹奏楽が盛んで、楽器に親しむきっかけは多いのに、部活動卒業と一緒に楽器も辞めちゃう子が多いんです。
 せっかく楽器を始めたなら長く続けてほしいので、長く続けられる環境を整えていけたらいいですね。

絵しりとり ロールケーキ ⇒ き○

ー絵しりとりお願いします。

 前回の方、漫画家さんじゃないですか!!
 こんな可愛い絵のあとに、何を描けば…。

ー「き」から始まるものであれば、何を描いていただいても大丈夫です!

 恥ずかしいので、描いてる間は隠しててもいいですか(笑)

ーかまいませんよ!


インタビューをとおして、音楽家としてご自身と、音楽教室の先生として生徒さんと、真摯に向き合っている方なんだなと、とても感じました。


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