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コロナ禍での休業をきっかけに。「ミルクボランティア」のある暮らし #いい部屋ペット

私たちの暮らしを、たった数ヶ月で大きく変えてしまった新型コロナウイルスの感染拡大。その影響が出始めた春は、外で暮らす飼い主のいない猫の出産数がピークに達する時期に重なりました。

そこで今回は、コロナ禍という過去にない状況の中で、新たに生まれた命を、猫を迎えたい方のもとへとつなげる活動を始めた方を取り上げます。

2020年4月から、生まれて間もない子猫たちをお世話する「ミルクボランティア」を自宅で始め、InstagramやYouTubeでその様子を発信。約半年(〜10/27時点)で34匹を譲渡へつないでいった、グラフィックデザイナーの二宮さやかさん(@fugsaya)にミルクボランティアの流れや醍醐味をお聞きしました。

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猫たちが活躍する「ダメ、3密」ポスターが話題に

ミルクボランティアを始める少し前、二宮さんは新型コロナウイルスの影響が出始めた3月に、感染拡大予防のためのポスターを自作して話題を集めました。猫好きデザイナーらしいセンスが溢れる「ダメ、3密」ポスター。誰でも自由にダウンロードできるようにし、全国のショップで広く活用されました。

「当時、日本が軽くパニックになっていたと感じます。そこで自分には何ができるのか?と考えて、作ってみよう!となりました。何気なくSNSにアップしたところ、各ネットニュースにも紹介されたりと反響があり、かなり驚きました。全国で少しでも活躍できたのかな? ……うれしいです」

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ポスターのダウンロードは、二宮さんのWebサイト「nekodea」から。
https://nekodea.com/download/

猫ホテルの休業→自治体のミルクボランティアの登録

そしてその翌月の4月、いよいよ本格的な乳飲み子シーズンが到来。二宮さんがミルクボランティアを志願したきっかけにもまた、新型コロナウイルスの大きな影響があったそうです。

「私は、グラフィックデザイン業の傍ら、旅行や出張で家をあける飼い主さんから一時的に愛猫を預かりする猫ホテル『宿と猫』を自宅で経営しています。しかし、県外へ行かれる飼い主さんが多く、感染拡大予防の意味でも、緊急事態宣言の段階ですぐさま宿は休業しました。そこで、空き部屋があるし、子猫を育てるには充分なスペースも時間もありましたので、『福井県動物愛護センター』(以下センター)のミルクボランティアをお手伝いさせてもらうことにしました」

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自治体や保護猫ボランティアの努力で、全国の猫の殺処分数自体は減少を続けていますが、その数は、環境省による直近の統計(平成30年度)で3万757匹。うち2万234匹は幼齢個体です。現在でも、頻繁なお世話が必要になる子猫が大きな割合を占めていることがわかります。

ですが、二宮さんの住む福井県では、同年度は引き取り後に亡くなった数匹を除くと、猫の殺処分はありませんでした。

「その継続の力になりたいと考えました。猫の保護を行うNPO団体に数年間所属していた経験もありますが、中立な立場である行政をまず手伝うことが県民として1番ではないかと。職員さんたちも動物好きな方たちばかりで、センターの雰囲気もよいです。以前から譲渡会を手伝ったり、Webサイトを作ったり、ボランティアの付き合いもあり、そうした流れもミルクボランティアに登録するきっかけになりました。」

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ミルクボランティア、どんなことをするの?

ミルクボランティアの役割は、「センターに収容された離乳前の犬猫を、離乳するまで自宅等の飼養施設で飼養管理する」こと。平たくいうと、猫が無事に離乳を完了し、センターが新たな飼い主さんに譲渡できるようになるまでのお世話を代わる係です。名の通り、乳飲み子にミルクを与えますが、それ以外のお世話も行います。

二宮さんは、どのように行っているのでしょうか? 「ミルク期」「離乳期」「子猫用フードへの移行期」の3段階に分けて、説明してくれました。

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●ミルク期

「うちの場合、夫に猫アレルギーの兆候があるので、まず外から来た猫に付着したアレルゲンを落とすため、猫の健康状態がよければすぐにシャンプーします。子猫は低体温になったり、体調がころころ変わりやすいので、細心の注意を払いながら、しっかり乾かしてほかほかのベッドに寝かせます。

寝床も部屋も暖かくし、ミルクも人肌に温めて与えます。でも、哺乳瓶を受け付けてくれない子も。ついさっきまで母猫のお乳を吸っていたんだから、当然ですよね。その場合はシリンジでゆっくりと飲ませ、気管に入らないよう気を付けます。ここで『飲まない』『吐く』が続くようであれば、なるべく早く動物病院へ向かいます。

排泄も自力でできないので、ティッシュなどでおしりをトントンしながら授乳の度に促します。勝手におもらしをして、兄妹でくっついていると全員がべちゃべちゃになっていることも多々……。この食事と排泄のセットを、1日数時間おきに繰り返しています」

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●離乳期

「歩ける状態になったら、トイレを早めに覚えてもらいます。自力で猫用の離乳食を食べられるように、まずは食事の匂いから覚えさせます。少量をスプーンで口や鼻に近づけて、なめられるようになればOK。興味がある子はぐいぐい食いついてきます。

……と、同時に高確率で下痢になり、ペットシーツとタオルを大量消費します(泣)。腸内環境が変わるし、仕方ありませんね。整腸剤を与えたり、フードの種類を替えたりすることで落ち着くこともありますし、獣医さんの指示のもと抗生物質を飲ませることもあります。

この時期に、便検査を受けてもらっています。兄妹でじゃれ合い出すので、通称“ウンチクラスター”で全身ウンチまみれになって、またシャンプーが必要になったり……。下痢が続いたり、水下痢の場合は、また動物病院へ。個人的には1番しんどい時期です(笑)」

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●子猫用フードへの移行期

「歯がしっかり生え揃ってドライフードを食べられるようになったら、ウンチも安定しだします。食べにくそうな場合、お湯でふやかしたり、ウェットフードを加えたり、工夫します。ここからは兄妹で遊び回ったり、自己主張もすごいです!

この時期、母猫から受け継いだ抗体が切れるので、猫カゼなどの症状が現れる子もいます。室内温度が下がらないようにして、症状が出たらすぐさま目薬などで対処。対応が遅くなると、悪化したり、子猫同士で蔓延させてしまうので、早い発見が必要です。

体重が600gになる頃(生後2カ月頃)に動物病院で健康診断を受け、センターで1回目のワクチンとマイクロチップを接種。無事に完了すれば、センターから新しい飼い主さんへ譲渡となります」

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無事に離乳を完了して晴れて“卒業”となった子猫には、門出のお祝いとして二宮さんオリジナルの「卒業証書」と、猫用おやつが進呈されます。

全国から支援が集まった!

子猫たちが食べるフードはセンターから供給されていますが、足りなくなるときも、取りに行く余裕がないときもあり、実費で購入することがあるそうです。

「それでもあっという間に無くなってしまうため、思い切ってAmazonのほしい物リストで支援を募ってみました。単なる個人ですし、インスタとYouTubeを見てくださっている方が少しでもご協力してくだされば……と軽い気持ちでしたが、同じ個人で活動している人気Instagramアカウントの方も呼びかけてくれて、瞬く間にすごい量の物資が毎日のように届き出して…(大泣)。本当にありがたかったです。顔も見たこともない他人に、こんなにも優しくあたたかい方たちが全国にいることを知りました。そして、みなさん猫愛がすごい!」

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全国から届いた支援。猫用のミルク、離乳食、子猫用フード

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「この子達はこんなにかわいく成長できるんだよ! 猫って楽しいよ!を伝えたいんです。過去を言うよりも未来を考えよう!と、声を大にして言いたいです」と二宮さん

ミルクボランティアの1匹を迎えることに

二宮さんの家には、飼い猫のだいずちゃん・あずきちゃん(ともに6才)もいます。2匹の愛猫と、代わる代わるやって来る子猫たちとは、猫同士の感染症予防のために接触はさせていませんが、遠くから気にしている様子はあるそうです。

「だいずは子猫をじ〜〜っと見てますが、あずきは気にくわないようで子猫と目が合うとすぐに『シャー』といいます。そして今回のミルクボランティアで預かっていたうち、1匹の黒猫さんをわが家で迎えることにしました。男の子のくろまめくんです」

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二宮さんの愛猫、あずきちゃん(左)&だいずちゃん(右)

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“愛猫”として迎えられることになった、くろまめくん(写真左)

ミルクボランティア=寝不足でしんどい、ではなく。

一般的には、生まれたばかりの体調が不安定な乳飲み子の健康管理を行うミルクボランティアは、離乳した子猫の一時預かりボランティアと比べて「大変」とされていますが……

「しんどい、寝不足になる、という印象があると思いますが、そうしたイメージをできるだけ取り払って、『猫が好きで助けたい人であればできることなんだ』と伝えたいんです。保護したい猫を外で見つけた人が、ボランティアや保護団体にすべてを頼むというよりも、アドバイスをもらおうという感覚になればいいなと。私の実感としては、最初の数日は猫たちの睡眠やミルクを欲しがる間隔をしっかりと把握するのに多少の寝不足はありますが、リズムがわかれば軌道にのってきます。『かわいそう』『つらい』よりも、『かわいい!』『楽しい!』。そんな気持ちの方が勝ること、間違いなしです」

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ミルクボランティアのやりがいを尋ねると、「とにかく無事に元気に飼い主さんに引き渡しできたときが嬉しく喜ばしい瞬間です!」

「withコロナ」の生活が浸透してきた現在、二宮さんはデザイン業も猫ホテルも徐々に再開。外猫の出産のピークを過ぎて乳飲み子が減少してきたこともあり、ミルクボランティア中心の生活から、負担がかからない範囲でボランティアを続ける生活へとシフトしているそうです。在籍している乳飲み子は、現在2匹です。

「生きているうちに、またコロナのような世界的な問題は起こるかもしれませんね。今回のポスター制作・ミルクボランティアを通して、『そうなったときに自分には、今、何ができるんだろう』と考えて行動する癖をつけようと考えるきっかけになりました。ありがたい経験です」

構成・文/本木文恵
写真は全て二宮さん提供
Instagram:@fugsaya
YouTube:nekodea
Webサイト:「nekodea
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猫を迎えるための心得をまとめた「猫手帳」も配布中


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