クラップス!(ライアーダイス!のプロトタイプ)
カジノバー「リンボー」店内。
アヤコ、騒がしいフロアを見渡しながら歩いてくる。
チズコ、後から追いついてくる。
チズコ「シゲちゃんいないわねえ。あとスドウちゃんたちも店長も見当たらないし… あ、店長はもしかしたらVIPフロアかも。アヤコちゃん、ちょっとここで待っててくれる? もし誰かに何か言われたら、コンパニオン見習いでこれから店長と研修だとか言って適当にごまかしてねえ」
アヤコ「大丈夫よ。自分でなんとかするから」
チズコ、フロア奥へ去る。
アヤコ、誰もいないクラップステーブルに寄りかかる。
ヨコサワ、瓶コロナを飲みながらやってきて、少し離れた位置に同じように寄りかかる。
ヨコサワ「あれ? JKがいる」
アヤコ「……」
ヨコサワ「え? 何で? どうやって入った?」
アヤコ「……」
パニコパニエがそこに通りかかる。
パニエ「あ、ヨコサワさんだ」
パニコ「あー、こんなとこで何サボってんですか?」
ヨコサワ「ちょっと休憩です。それより見てくださいホラ、JK」
パニコ「え? ホントだ何で?」
アヤコ「これコスプレだから!」
三人「…ああ」
三人、強引な言い訳にツッコむ気を削がれる。
三人、ひそひそと疑問を口にする。
パニコ「え? コスプレって何? アキバのカジノと間違えてんじゃない?」
パニエ「いや、あそこでコスプレしてんの店員でしょ? お客さんは普通だって」
ヨコサワ「アレだ、JK好きのパトロンがいるんですよ。合法デートクラブ!」
アヤコ「聴こえてるんですけど!」
三人「…すいません」
アヤコ「……」
ヨコサワ、アヤコに近づいて話しかける。
ヨコサワ「ヒマそうですね。軽く遊んでみますか?」
アヤコ「何? 誰なのあんた? 店の人間じゃないよね?」
ヨコサワ「いや、客… ですよね一応?」
パニコ「まあ、そういうことになってますけど」
アヤコ「あーあ、常連気取りで店とベッタリ… どうせ親の金で遊んでるボンボンでしょ? でなきゃオーナーの息子とかね」
三人「おお〜…」
ヨコサワ「彼女、なかなか言いますねえ」
パニエ「言われてるのヨコサワさんですよ」
ヨコサワ「あ、そうか… じゃあそのボンボンから巻き上げてみませんか?」
アヤコ「あとでね。今コイン1枚しか持ってないから。これじゃあんたを確実に殺せない…」
ヨコサワ「……」
パニコ「うわ〜、ヨコサワさん、殺されるって」
パニエ「物騒ね〜」
アヤコ「あんたたちはコンパニオン?」
パニコ「そうでーす。この店のアイドル兼マスコット兼コンパニオンのパニコと!」
パニエ「パニエでーす。最近ディーラーも始めました〜!」
パニコ「あ、言っとくけど車の販売じゃないからね」
パニエ「あんた以外誰も間違わないって」
アヤコ「ディーラーできるんだ、ちょうどよかった。これ、やりたいんだけど」
パニエ「クラップス? あ〜… だったらあっちのテーブルが盛り上がってるから行ってみたら?」
アヤコ「別に盛り上がりたくない。それに目立ちたくないし」
パニコ「JKコスプレしといて何言ってんだか」
アヤコ「うるさいなあ。いいから早くしてよ」
パニエ「はーい。そんじゃ準備しまーす。えっと、ルールはわかってる?」
アヤコ「必要な部分だけしか覚えてないけど。それで十分だし」
パニエ「そう、なら大丈夫かな」
パニエ、サイコロの入ったカップをアヤコに渡す。
パニエ「じゃ、その中から好きなダイス2つ選んでくださーい」
アヤコ、ダイスを出して入念に試し振りをする。
ヨコサワ「それじゃ僕も混ざりましょう」
アヤコ「はぁ?」
ヨコサワ「ああ、シューターはあなたからでいいですよ」
パニエ「ヨコサワさん、あの、あんまり難しいベットされると私、まだ細かい計算とか自信ないんですけど…」
ヨコサワ「いいですよ。わからなければ聞いてください」
パニコ「はーい!」
パニエ「お前かーい!」
パニコ「それじゃさっそくヨコサワさん、クラップスについて簡単に説明してくれます?」
ヨコサワ「OK。クラップスはざっくり言うと、ダイスを2つ振って出る目を競うゲームです」
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