女性にも、そして男性にも、仕事を犠牲にせず親となる権利がある
一昨日から妻と子供が家を不在しています。つい一年前くらいまでひとり暮らしだったのに、急に一人になった家は妙に広く感じます。子供が生まれてから一日の時間の割合で家庭の時間がそれなりにあったのに、ここに来て一人の時間ができたことで時間を持て余しそうになり、「一人ってこんなに自由なのか」と思う日々です。
なぜ不在してるかと言うと、家出とかそういうのではなく、実はアメリカに妻と子供は2週間ほど行っているんです。ワシントンにある大学が主催する数ヶ月のコースを妻が受講することになり、基本はオンラインだけど最初にオリエンや研修など色々あったり、直接会うことで受講生同士で仲良くなったり、色々とオンラインではできない関係性が作れるから「せっかくなら現地に行って色々と研修を受けてきたい」ということで現地に行き、今は色々と刺激を受けているみたいです。
けど、懸念はやはり子供のことでした。まだ生後2ヶ月ちょっとの子供の世話をどうするか。生まれてすぐのときからこの出張のことは話題にのぼっていました。私は、妻にとってもそうそう海外で数週間もいる機会もないだろうし、久しぶりに一人の時間を作るべきだと思ったので「僕が面倒みるから行っておいて」と伝えていました。
子供のミルクや身の回りのことは一通りこなせるし、打ち合わせもどうにか調整しながらやれる。別にずっと続くわけではなく、約2週間という短い期間だし、私自身もそうしたいと考えてた。
ところが、現地にたまたま妻の友人がいて「子供を3人ほど育てるから一緒に世話できるよ。それに、ベイビーに会いたいし」と言ってくれたそうなのと、コースのメンターからも「子供を連れてくるのは大賛成だ。みんなで面倒みれるから大丈夫だよ」と後押ししれくれたこともあり、結果的に、子供を連れて行くことになりました。
人生初のフライトが海外で、生後すぐで海外に行った記憶なんてないだろうけど、記録として写真を撮ってあげれば、後々に良い家族の思い出として話せるんじゃないだろうか。
そんな流れもあって、結果として二人とも海外に。まだ生まれたてなので、フライトの心配とか、パスポート取らなきゃ、とか、旅行バックの半分くらいがおむつとかミルクとか子供服で占めるとか、事前準備もバタバタしながらでどうにか準備も終わり、フライト当日、一緒に成田空港に向かい、お見送りをしてきました。
産休育休をどう捉えるか
当たり前かもしれませんが、女性にとって出産そのものも大変ですが、それまでバリバリ働いていた人にとって、産休、育休明けの復職やその後の仕事のキャリアをどうするかは、人生にとっても考えるべき要素の一つです。
出産や子育てに奔走することで、次第に仕事の感覚や仕事を通じてできた色んなつながりも子育ての間は途切れがちになりがちです。人によっては妊娠前は重要なプロジェクトの責任者として働いていたのに、妊娠がわかったことでその任から外されることもあります。もちろん、会社によってはその人を責任者としつつ、チームやプロジェクトメンバーでバックアップすることもあるでしょうが、そうでない会社もいまだ多く、結果として、男性と女性による昇進スピードに違いがでてきたり、責任を全うできなかったという自責の念にかられる女性がいるという話が周囲からも時折聞こえてきます。
よく言われる男女の賃金格差においては、シングルや結婚してるけど子供のいない男女の差は比較的縮まってきました(とはいえ、女性の幹部昇進など、いまだ「ガラスの天井」は存在する)が、ここに「育児」が入ってきた瞬間、日本でもアメリカではそうですが、男性ではなく女性が育児をするという前提のもと、明らかに男性と女性との賃金格差が広がっています。いわゆる「マミートラック」とも呼ばれているものですね。そこには、いまだ女性が子育てをすることが当たり前だ、という感覚が寝深くあります。
しかし、いつまでたっても女性の問題として矮小化しておくべきではありません。子育ての問題は女性だけの問題ではなく、家族の問題として捉えるべきです。家族を支える生活費は、家族全体で支えていかなくてはいけません。そこにプラスして、個人としての人生をどう歩んでいきたいのか。キャリアステップをしたいと考える女性(もちろん男性も)がいるのであれば、仕事を犠牲にすることなく、仕事も家庭も両立するための仕組みや制度を私達で作っていかなくてはいけません。女性にも、そして男性にも、仕事を犠牲にせず親となる権利があるはずです。
会社にとっても、キャリア志向がある女性を「子育てだから」と枠におさめるべきではありません。産休育休というのは、ある意味でゆっくりと物事を考えるのに最適な時間です。実際、いくつかのセミナーなどに行くと、産休育休で休んでる女性の参加がちらほら見かけます。休んでるときこそ、スキルアップや新たなつながり、プロボノなどの経験を積むことで、結果として会社に利益をもたらしてくれます。事実、産休育休を使ってMBAを取得した方もいらっしゃいます。けれども、そうした事例を美談として個人の問題や能力として捉えるのではなく、すべてのキャリアやスキルアップをしたいと希望する人たちに対して機会を提供すべきです。
いかにスムーズに復職するか、ということに注力することが多いですが、そうではなく、休暇を自分のこれからを考える上でも大切な時間とポジティブに捉えるべきです。同時に、子育てしている人だけに手当を厚くしてしまうと、そのしわ寄せはシングルや子供を持たない人たちにいってしまいます。子育てをしてる、していないにかかわらず、社員に対して一定の長期休暇や研修のための時間を確保し、それぞれにとっての働きがいや生きがいを探求できるような時間の確保や研修手当てをすることこそ、より良い働き方のための取り組みになるのではないでしょうか。