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記憶に残った景色、味、場所を振り返る|2022
環境や自分の変化に適応しようと必死な日々。特に2022年はお手上げしたいくらいにゆるやかな地獄と付き合って来たような気もする。
そんななか、なんとか自分を癒そうと好きな食べ物だけは手放さずにいられたのが救いだったように思える。好きなお店の味、新しく出会えた一皿、自分のために作るおやつ、そういったものが光だった。
生活が少し落ち着き、やっと一旦止まることができると思ったらもう年末へのカウントダウンは始まっていた。本当にあっという間だった。
みなさんはこの一年どう過ごしてきましたか?
こう問われると、なにか大層なことをなし遂げなきゃいけないように思えてしまうけれど、そんなことはないはずで。
歳を重ねるごとに体も、特に心も健やかにいられることが何よりも大事で、どれだけ日々を穏やかに過ごせるかが自分にとっては一番重要なのかもしれないと気がついたりもした年でした。
人によって人生の進め方はそれぞれだと思うのですが、自分にとっては日々の食べるもの、心を癒す景色や好きな場所があることが、容易ではない人生を生きていくうえで日々の救いになっています。
なので、一年の振り返りといっても仕事や人生の転機などはそっと置いといて、記憶に残った景色、味、場所を思い出す場を今年は作りたいと思います。
去年までは一年で食べたおやつの記録をまとめていたのですが、今年は少し視点を変えて。ここから先は私の記録ですが、この記事を読んでくださっている方がいればご自身に当てはめて一緒に振り返ってみませんか。
◯
記憶に残った景色
今年はいつもより公園や水辺の自然に触れる機会をたくさん作った一年だった。できるだけ静かで広いところに行きたくて、緑や水を感じられれば尚良し。
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気候のいいときはごはんやおやつを持ってお手軽にピクニック。人を誘うときもあったけれど、一人で行くこともあった。外で食べるごはんってやっぱり格別においしくて、サンドイッチやおにぎりをよく頬張ってたなあ。
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公園を散歩していると、普段は余裕がなくて気がつかない景色もたくさんあった。
季節の進みは一週間違うと葉の色も変わること、木漏れ日が綺麗な時間帯があって、木の甘い匂い、土の匂いに気がつく。深く息をするのが気持ちが良くて、同じように水辺に行く時も潮の匂いを肺いっぱいに吸い込む。
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水辺に行くとベンチに腰を掛けてひたすらに水面を見て時間を過ごす。だんだんと頭がぼーっとしてきて、景色と自分の境界線が溶けて何時間でも見ていられるのだ。何かを考えたり、考えなかったり、きらきらと水面に反射する光を見ると思考も柔らかいものになる。気がする…。
記憶に残った味
食が大好きなので、食べたもののことは基本的によく覚えている方だと思う。その中でも記憶に残る食たちを思い返したい。
◯レストランオオタニのパフェ(東京都 大山)
老舗洋食レストランのオオタニは、食事メニューもおいしくてボリューミーで大好きなのだけれども、季節のパフェがこれまたおいしいのだ。
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今までメロン、いちじく、いちごのパフェを食べたけれど、どれも本当においしい。今流行りの様々なスパイスや変化球を取り入れた料理的なパフェではなく、季節の果物、季節の果物のグラニテ、生クリーム、バニラアイスのみで構成されている。
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カラフルなパフェグラスとお皿の合わせ技も悶絶級に可愛いのも知っていてほしい。
果物もおいしく、グラニテも果物そのまんま食べているようなフレッシュさと濃厚さ。パフェの生クリームは得意じゃないという人もいるだろうが、オオタニの生クリームは一味違う。余計なことは言わないからまず食べてみてほしい。
シンプルな構成だし、果物以外の組み合わせは季節によってほとんど変わることもない。けれど、パフェってこれでいいんだ(これがいい!)と思わせてくれるおいしさがオオタニのパフェにはある。この時代にこのパフェが残っていてくれて本当によかった。奇跡的なバランスのパフェ。
◯Mockingbirdのおやつ(東京都 練馬高野台)
食べたのはひとつやふたつそこらなのに、このお店の作るものはきっと全部好きだと確信してしまうお店がたまにある。赤い屋根の小さなお菓子屋さんMockingbirdがまさにそうだった。
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青くささの残るレモンカスタードに、言い当てられないけど懐かしい風味がするパイ生地のレモンチェスパイ。燻したようなアダルティな風味のローズマリークッキー。鼻から抜ける淹れたてのようなコーヒーの香りと生地のじゅんわり具合が最高なコーヒーパウンド。すべてが好みだった。
◯Im donut?(東京都 表参道)
自分のドーナツブームをさらに加速させ、食べた後もしばらくこのお店のドーナツの余韻が抜けきらなかった。ドーナツが主役に躍り出たドーナツによるドーナツ(の可能性を信じた人)のためのドリームショップ。
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柔らかいながらも反発感のあるもちゅもちゅの生地がすんごくおいしくておいしい。一度食べたら私は忘れられなかった。
こぼれ出てきちゃう自家製のクリームとか、ベーコンメープルや自家製ソーセージを入れたお惣菜系ドーナツもあるところとか、本気でドーナツに夢を乗せている姿勢が大好き。自分のイチオシは「スパイス」です。
◯日常軒のお弁当(東京都 西荻窪)
何をどれだけ丁寧に作ればこんなに手の行き届いたおいしい味になるんだろう。食べてるだけでちょっと泣きそうになるくらい、このお弁当一箱にやさしさとおいしさが詰まっていた。
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お弁当特有の絶対入っているはずのお漬物とか、間を埋めるための何か、とかがなくて全部が主役級のおかずたち。
味を語り始めるととんでもなく長くなってしまうので割愛するけれど、おかずに関していうと、味付けが絶妙で家では作れそうで作れない後引く味で(すっごくおいしい)、ちょっと手をつけただけではなくならない一品の量(うれしい)、ご飯が固くない、味玉が半分と見せかけて一個ぶん入っている…
と思い出すだけで今でもほんのり幸せな気持ちになれる豊かなお弁当。
追加で頼める日替わり豚まんも本当においしいのでぜひ、ぜひ!頼んでください……!!
◯ステファノアンナのクッキー(東京都 吉祥寺)
ひとつ前の日常軒のお弁当同様、ステファノアンナのクッキーも丁寧に、丁寧に作られているのがわかる繊細な味だった。
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吉祥寺の端っこの方でひっそりとやっているお店は、イタリア菓子専門店。
いろんな味が楽しめるアソートクッキー、一袋からでも買いやすいクッキー、生菓子。この日お持ち帰りしたアソートクッキーは10数種類が楽しめる太っ腹セットで、なんとひとりひとり(?)の紹介写真付き。愛がなきゃできないよ〜…。
照らし合わせながら食べる時間も楽しい。不思議なほどきめ細やかでバターたっぷりのしっとりさはリッチな味だったなあ。
これからもこの街で、この場所で、この菓子たちが愛されて続いていってほしいと願ってやまない。
記憶に残る場所
◯櫻井焙茶研究所(東京都表参道)
櫻井焙茶研究所は日本茶が楽しめるお店。
お店があるのは都心の一等地表参道、アート系を取り扱うなんとなく敷居が高いイメージのビルの上の階、訪れた時期が喫茶室人数制限中(且つ予約していった)だからか来店時は自分一人のみ。カチカチに緊張する条件は整っていた。
(実際、静まりかえった喫茶スペースに通された時はちょっと逃げ出したくなった)
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でも座席に座って、窓からの景色を見て、部屋に立ち込めるお茶の匂いを嗅いだら、最初の緊張はどこへやら。空間に心と体が馴染んで落ち着くことができた。
種類にもよるだろうけど、1−3煎まで楽しめるお茶は腰を据えてゆっくりするにはちょうど良い。出汁のように旨味が強いお茶を飲みながら、店員さんから聞くお茶の知識はとても勉強にもなった。
空間に慣れた頃、机上で器に水を流し続ける様子を不思議に思って店員さんに聞いてみたら、邪気払いの意があるそう。水が流れる様を見ていると心がすーっと凪いでいく。
BGMはなし、狭い空間にお客さんは私のみというなんとも稀有な状況だったけれど、慣れたらあまりに静寂が心地よくて、この空間をひとりで味わえることの贅沢さを噛み締めた時間だった。
◯Pasele(東京都 千駄木)
このお店は前回のnoteに綴ったのでここでは簡略的に。
このお店は食事のおいしさはもちろんなんだけど、空間づくりが本当に良かった。席の間隔、落とされた照明の明るさ、白壁に木の家具たち、窓から見える庭の景色。午前中だと窓枠に木漏れ日が落ちるのも綺麗だった。
前述の櫻井焙茶研究所もそうだけど、静寂を心地よく感じることができて、空間に流れる時間ををうつくしく思える場所はなかなか巡り会えるものではないよなあと思う。どちらのお店も、この場所で過ごした時間が記憶に残り忘れられない、本当にすてきな空間だった。
◯
年末になるとこうやって振り返りの時間を取るのですが、案外自分が思っている以上にいろんな体験をしたりしていて、振り返ることでそれに気がついたりもする。自分が何をして心が動いたかを知ることは、自分自身を知ることにも繋がる気がします。自分が心の奥底で何を欲しているかも。
この一年、楽しいことばかりではなかったけれど、こんなにもいろんな景色を見て、食べることで幸せになれて、とっておきのお気に入りの場所を見つけられたことは、きっとこれからの生活の糧になるはず。
今年ももう僅かばかりの時間ですが、自分も、ここまで読んでいただいた方も穏やかな年末年始が過ごせますように。
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