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穴迫信一×阿比留丈智×隠塚詩織―― 『ふくしゅうげき』出演者インタビュー

作演出を手がける穴迫と、今回エゴナク初出演の阿比留さん&隠塚さん3人による対談を実施。初めて関わる2人のエゴナクの印象や特徴について話を掘り下げてみました。

穴迫:エゴナク作品って阿比留さんはどこまで観てるんですか?
阿比留:東京に来た「交互に光る動物」まで全部見てます。北九州にいる時は欠かさず観てました。
穴迫:「ふくしゅうげき」はどうですか?
阿比留:今までのエゴナクとそんなに変わらない印象ですね。僕正直に言うと、実はエゴナクの話をちゃんと理解できたことがないと思うんです。エゴナクの作品は言葉で説明できるストーリーの部分ではなくて、言葉でうまく表現できない作品全体に漂う雰囲気に魅力があるといつも感じます。悪意が渦巻いてるというか。今回の「ふくしゅうげき」にもやっぱりはっきりとは見えないんだけど、そのとげとげした部分を感じますね。
穴迫:隠塚さんはエゴナクは初めてですよね。どんな印象でしたか?
隠塚:穴迫さん演出の作品は観たことがありますが、純粋に作演出の作品は観たことがありませんでした。私が万能グローブガラパゴスダイナモス(以下ガラパ)に入団した頃、「AGAIN」のチラシでエゴナクを知りました。オシャレでセンスのあるチラシで、今でもそのイメージが強いですね。
私自身、福岡の劇団に所属しているから、北九州の芝居にあんまり触れたことがなくて。稽古に行くのにも緊張してたんですけど、今やっと雰囲気が掴めてきました。

穴迫:隠塚さんは「ふくしゅうげき」について、どういう印象でした?
隠塚:最初、台本を見る前に動画を観ました。正直に言うと全然分からなかったですね(笑)。なんか展開がジャカジャカ進んでいくじゃないですか。音と光のイメージが先行して入ってきて、あとから台詞を追っていくような。最終的に自分の中に落とし込めたのはやっぱり稽古場です。本番でお客さんがどのように受け取って、作品が変わっていくのかが楽しみです。
穴迫:稽古が進んでいくなかで、エゴナクはここが特徴的だなと思うことはありますか?
阿比留:色んなことを試すというか、1回「あ、これで決定かな」と思ってもそれをあえてまた壊したりっていうのはエゴナクらしさかなと思います。僕は結構飽きっぽい部分があって、同じことを何度も何度も繰り返すのが得意じゃないから、色んなことをさせてもらうのがすごく楽しい。「あ、こういうやりかたもあるな」って毎回どんどん実験して発見している感覚です。
隠塚:台本の読み方にルールがあるのが不思議で、エゴナクの特徴だなと思います。私は実は客演は今回が初めてで、エゴナクのように台本にルールがあって、それをよく落とし込んで「表現して」って言われることは初めての経験です。穴迫さんの演出は、「間」であったり「音の色」であったり、そういうのを意識しているのかなと思うので、そこを言われた時に音のイメージと自分の中の感情の焦点を合わせる、整理することが追いつかないこともありました。そこが難しかったですね。
穴迫:うちはどうしても劇団員が少なくてプロデュース的な劇団だから、異なる文脈を持ってる人たちと芝居をするってなったとき感情や感覚を完全には共有できないんですよ。例えば「悲しい」感情を表現する時にアウトプットの方法がその人のジャンルによって全く違うんです。想定外のものが出て来る面白さもあるけど、作品を微細に整えていくことも必要になってくる。そういう時に感情ではなく「音」で設定するようにしていると、一旦の正解がそこにあるから、作品全体のバランスが整いやすくなっていく。そこから崩すのもアリですけどね。
それと阿比留さんが言ってたこともその通りで、「ふくしゅうげき京都ver」ではラストシーンの一番最後の台詞を言う日と言わない日があったんです。「今日は言おう」とか「やっぱりやめよう」とかその日の朝判断して。
間違ったらごめんねと俳優に言われながら上演しました(笑)。作品の終わり方を決めるのが苦手っていうか、ぎりぎりまで考えてしまう。
隠塚:なんでですか?
穴迫:え!?終わりかたが決まらない理由?なんでしょうねぇ。僕の人間としての性質も関係あるのかなあ。人間関係とかでも終わり際がとても苦手です。それと、その上演の瞬間に、最後の一言を言うか言わないかは、台本にその台詞があるかないかとは関係ない気がしていて。もちろん事前に全体に共有しますけど、なんとなく今日は言いたくないっていう感覚を大事にしています。

穴迫:稽古場で自分自身について発見したことってありますか?
隠塚:引き出しの少なさにびっくりしました。普段そういうことをあんまり求められる芝居をしてないっていうか、ナチュラルな芝居を求められることが多かったから。例えばなんでも好きなことやっていいよって言われたときにどうするかの引き出しがまだまだ足りないなって。稽古でも他の人がやっているのを見ながら「自分だったらどうするだろう」と思って見てます。個性的な人ばかりなので稽古場は刺激的ですね。
阿比留:僕は静かな空間で声を出すことが緊張するなと思いました。普段は、爆音の中で同時多発的に「わー!!」って声だしたりしてるんですが、ある意味自分にスポットが当たってないから逆にそんなに緊張感しないんですよね。だけど静かな空間で台詞を発するのは自分だけってなると、途端に緊張します。

穴迫:少しずつ稽古に慣れてきて、それぞれ個人的な目標はありますか?
隠塚:全部大事なんですけど、ガラパの隠塚詩織の芝居ではない、新しい芝居でどうお客さんにアピールできるか、どうしたら『自分がどういう人間なのか』を、役柄を通して伝えられるのかなというのは意識しています。というか、エゴナクに出てる私がお客さんにどう映るのかが楽しみですね。
阿比留:僕は、台本があって喋るっていう、いわゆる普通のお芝居が実はすごい久しぶりです。なので異物感みたいな存在に見えるといいなと思ってます。僕が演じる矢野君も半月には直接関わりのないある種「外部の人間」なので、自分自身も役柄でも「異質」な人間だなっていうのが表現できればいいかな。

穴迫:ちなみに阿比留さんは北九州でやるのは久々だと思うけど、いまだにホームっていう感覚はある?
阿比留:あるけど段々遠くなってきたなって印象はありますね。東京の生活にも慣れましたし。
穴迫:お客さんとしては、阿比留をまた観れるんだって思う人もいるだろうし、隠塚さんを福岡からも見に来てくれる人もいるだろうし、それが僕は楽しみです。今までのお二人を観てきたお客さんにとって、エゴナクでの俳優としての振る舞いがどんな風に写るのか。僕は絶対良いって思ってもらえると思う。北九州公演でのお客さんの反応を想像するとわくわくしますね。


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